「アンダー・プレッシャー」の警告

社会的弱者の視点に立つ

クイーン【アンダー・プレッシャー】歌詞を和訳&解説!プレッシャーに負けそう…そんな自分を救うものとはの画像

クイーンとデヴィッド・ボウイの共演によるシングル「アンダー・プレッシャー」。

1981年に発売されて世界中で話題になります。

テーマは人々を襲う「プレッシャー」。

「プレッシャー」が人々を押し潰してゆくと警告するこの歌は日々の暮らしの中で悩む人々を勇気付けます

クイーンは特に社会的な歌詞ばかりを歌っていたバンドではありません。

しかし常に社会的弱者の視点に立った歌詞でたくさんの名作を遺してきました。

伝説のチャンピオン」「ウィ・ウィル・ロック・ユー

これらの作品でも弱者が勝者になることを願って歌いました。

一方でデヴィッド・ボウイもジョン・レノンの「労働者階級の英雄」をカヴァーするなど視点は同じです。

この2組のタッグによる曲が社会的弱者を鼓舞する楽曲になったのは必然であったのでしょう

「アンダー・プレッシャー」はこの世界を生きる私たちに向けられた歌です。

日々の生活で押し潰されるような想いをしている私たちへの処方箋。

こんな重圧から逃れる道筋はどこにあるのか?

クイーンとデヴィッド・ボウイのシビアな視点と理想を共有しましょう。

難解な歌詞和訳し紐解きながら「アンダー・プレッシャー」に打ち克つ術を探ります。

資本主義社会共通のテーマ

ベース・ラインは誰が創ったか?

クイーン【アンダー・プレッシャー】歌詞を和訳&解説!プレッシャーに負けそう…そんな自分を救うものとはの画像

Pressure pushing down on me
Pressing down on you no man ask for
Under pressure - that burns a building down
Splits a family in two
Puts people on streets

出典: アンダー・プレッシャー/作詞: David Bowie, John Deacon, Brian May, Freddie Mercury, Roger Taylor 作曲: David Bowie, John Deacon, Brian May, Freddie Mercury, Roger Taylor

ジョン・ディーコンによる有名なベース・ラインが印象的です。

この著名なベース・ラインについて誰が作曲したのか諸説あります。

ジョン・ディーコンは「ボウイが考えたんだよ」とインタビューで答えるのです

ところがボウイは「関わる前からあったよ」と証言します

一説にはジョン・ディーコンがこのベース・ラインを弾いているときにボウイがこういったそうです。

「ジョン、そのベースはなんだい?」

ジョン・ディーコンが答えます。

「これ、気に入っているんだけれど」

ボウイがいいます。

「オレがやるならこうするね」

そういったボウイはジョン・ディーコンのベースを押さえつけて音が出なくさせたとか。

それでも温厚なジョン・ディーコンは怒らずにいたのですが、それを見たブライアン・メイが激怒した。

ブライアン・メイとデヴィッド・ボウイの不仲説は確実なのでこのエピソードもあり得たでしょう

ジョン・ディーコンはダメ出ししたボウイをこのベース・ラインの作者と偽って意趣返しをした。

関係者が死亡、もしくは引退しているので今になっては真相が分からなくなっています。

しかしこの音楽史に遺るベース・ラインの由来についてはもっと識りたいです。

日本の労働者も他人事ではない

歌詞を和訳しました。

ご覧ください。

「プレッシャーが僕を押し下げ

君までも押し潰す、誰も望んでいないのにね

プレッシャーがビルディングを全焼させる

ひとつの家族をふたつに引き裂いて

人々を路頭に迷わせるんだ」

「プレッシャー」はカタカナ英語のまま残して訳しました。

「重圧」と言い換えることもできます。

社会の健全な発展を阻害する「プレッシャー」。

しかし資本主義社会は人々に「プレッシャー」を強います。

「アンダー・プレッシャー」はイギリスで生まれた歌ですがMVの冒頭に登場するのは日本です

日本のラッシュ・アワーで列車に詰め込まれて通勤する労働者の映像をMVの冒頭に使用します。

資本主義社会では世界共通のテーマであるのが「プレッシャー」です。

家族が崩壊して路頭に迷うような出来事もニュースにはなりませんが日々起きていることでしょう

科学者や哲学者でもある5人

セッションの中で育んだ曲

クイーン【アンダー・プレッシャー】歌詞を和訳&解説!プレッシャーに負けそう…そんな自分を救うものとはの画像

It's the terror of knowing
What this world is about
Watching some good friends
Screaming let me out
Pray tomorrow - gets me higher
Pressure on people - people on streets

出典: アンダー・プレッシャー/作詞: David Bowie, John Deacon, Brian May, Freddie Mercury, Roger Taylor 作曲: David Bowie, John Deacon, Brian May, Freddie Mercury, Roger Taylor

「アンダー・プレッシャー」はセッションの中で仕上げてゆきました。

クイーンの方が先に準備をしていたようですがデヴィッド・ボウイの個性も光ります

歌詞をどのように練っていったのかはブラック・ボックスです。

クイーンは全員が歌詞も曲も書けますしデヴィッド・ボウイも当然独りで何でもできます。

クリエイターが5人も集まって共作でひとつの歌詞を練るというのは大変なことでしょう。

歌詞のイメージとしてはデヴィッド・ボウイの貢献が大きそうですがボウイはライブでこの曲をやりません

クイーンは早くからフレディー・マーキュリーとロジャー・テイラーのふたりの歌唱でライブ演奏しています

やはりクイーン側である程度進行させていた状態でデヴィッド・ボウイをセッションに招いたのでしょう。

ただしデヴィッド・ボウイもフレディー・マーキュリー追悼ライブでこの曲を披露します

以来、ライブでこの曲を採り入れるようになりました。

しかしご存知のようにデヴィッド・ボウイも2016年にこの世を去ります。

世界の仕組みは怖ろしい

歌詞を和訳して解説します。

「世界の有り様を識ることは恐怖だよ

心優しき親友たちが『ここから出たい』と叫んでいるのを見ることも恐怖だ

僕を押し上げるように明日を祈ろう

プレッシャーの下には人々がいる 路頭に迷う人々がいる」

この社会の仕組みをクイーンのメンバーやデヴィッド・ボウイは社会科学や現代思想を通じて学んでいます

日頃、只生きているだけでは分からない事柄についても相当考えていたはずです。

享楽的なサウンドや歌詞でパーティー・ソングを演奏することもありますが普段は科学者・哲学者でした。

世界がどのようにして回転するかを識るとおぞましい想いがする。

貧困や搾取の有り様に目を向けることは鬱々とした気分になるものです

こんな現実はもう嫌だと叫ぶ友人を見るのも辛いこと。

しかし人には明日は良き日にしようと祈る道しかないようです

もっと根本的な解決策はないものでしょうか。

薬物は逃げ道にはならない

経験者としての言葉