アレキサンダー・セルカーク
生名セルクレイグ (Alexander Selcraig)、1676年 - 1721年12月13日)は、遭難者として無人島で4年間を過ごしたスコットランドの水夫。彼の苦難は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』の素材の1つとなっているのではないかと推測する見解がある。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/アレキサンダー・セルカーク
路頭に迷い取り残された主人公の状況を冒険小説の生還劇に例えつつ、皮肉っているようですね。
どうして自分が嫌われなくてはならないのかと考えて、主人公は頭を抱えます。
考えれば考えるほど、自分を取り巻いていた人間関係のすべてが嫌になっていくようです。
親しい友人であっても、そう思っていたのは自分だけ。
相手は自分のことなどなんとも思っていない、そんな考えに至ります。
それ裏付けるように、出会った友人は主人公の姿に一切気付いてはくれません。
自暴自棄になった主人公は、誰も見えないことをいいことに好き放題暴れ回ったのでしょう。
何をしても誰にも迷惑をかけない。それゆえに思い切り自分勝手に振る舞えます。
その結果が、最後の歌詞に現れているようですね。
卑屈になってゆく
そこに僕がいない事
誰も気づいちゃいないでしょう
そもそもいない方が
当たり前でしたね
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
自分がいなくなったことにも気づかずに、周りの人たちはいつも通りの生活をしています。
辛い現状を前に主人公はある結論に至ります。自分が存在しないことが彼らにとっての当然なのだと。
自分には存在する価値などない、そう思い込んでしまった主人公はどんどん自棄を起こしていきます。
垣間見える心
大嫌い嫌い嫌いな僕を 覚えてますかルンパッパ
知らん 知らん 顔して 楽しく生きるの やめてくんない?
楽観 楽観 達観 楽観 達観 楽観視 僕は透明人間
爪噛む悪いクセ 今更止めても 意味ないじゃん
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
自分のことを覚えているか問いかけても、誰からの反応もありません。
皆知らない顔をして、楽しそうに日常を過ごしています。
自分がいなくても笑顔でいられるその様子に、主人公は腹立たしさを覚えます。
どうせ自分は透明なんだ。
何をしたところで見えないのは当然なのです。深く考えず、主人公は現実を悟ります。
ですが、意味がないと分かっていながらも人に嫌がられる原因となっていた自分の癖を直そうとします。
まだ誰かに好かれていたい、嫌われたくないという本当の気持ちが行動に現れているのです。
誰かが側にいる意味
大往生を前にして
しゃがれた老父は笑ってた
そうかそうか道理で
ひとりじゃ 笑えない
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
主人公は一人の老人を目にしました。
人生を全うした彼は、家族や友人に囲まれて満足げに笑顔を浮かべていたのです。
その姿を見て彼は自分が感じていた孤独に気が付きます。
こんなにも苦しい気持ちを抱えていることも、笑顔になることができないことも。
すべては自分が独りぼっちだったからなのです。
本当の願い
存在していたい
大嫌い 嫌い 嫌いな僕が 張り裂けて ルンパッパ
届かない 戯れ言
内緒の悪口 ありがとう
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
自分の抱える孤独を目の当たりにした主人公。
途端に蓋をしていた感情が溢れ出して、胸がいっぱいになります。
そうして口からこぼれた感情は冗談のような感謝の言葉でした。
大きな孤独に苛まれた主人公には、陰で言われる悪い言葉でさえもありがたいものに感じられたのです。
誰かに自分の話をされること。
たとえ悪いものであっても、それは自分が存在していて誰かに影響を及ぼしていることの証なのです。
大嫌い嫌い嫌いな僕を どうか忘れないで
ごめんね それでも 端っこでいいから 座らせて
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
たとえ嫌いだとしても、自分のことを覚えていてほしい。
そんな正直な気持ちがあふれ出します。
嫌いなままでも、迷惑だと思われても構いません。
誰かの世界の片隅でも良いと、主人公は自分の居場所を求めます。
もう一度、自分の存在を確かなものにしたい。誰かと関わっていたい。
それこそが物語の果てに見つけた主人公の本当の気持ちなのです。