存在を取り戻す
交差点 人ごみの真ん中を急ぐサラリーマンが
すれ違いざま
今 半身で確かに避けたんだ
いまぼくはここに
出典: インビジブル/作詞:kemu 作曲:kemu
自分の思いに気づいた主人公。物語は終わりを迎えようとしています。
多くの人が行き交う道路の中心、すれ違った通行人がぶつかりそうになった主人公を避けたのです。
その瞬間、主人公の姿は確かに通行人に見えていました。
それはまさしく彼がこの世界に存在していることの証拠に他なりません。
主人公は自分の存在を再び取り戻すことができたのです。
僕はここにいる、確かに存在している。
主人公は自分の存在を噛みしめ、再び自分の居場所へと戻っていくのです。
人と関わること
もしも、透明人間になれたら。一度くらいはそんな想像を膨らませたことはあるのではないでしょうか。
夢のような世界を思い描いて、わくわくと心躍るものです。
ですが、透明になった主人公が見てしまったものは、知りたくなかった人の心の醜い部分でした。
自分の知らないところで自分を悪く言われてしまう。それを知るのはひどく辛いことです。
誰かに悪く言われるなら、嫌な思いをさせるならばいっそのこといなくなってしまえたら。
そう思うこともあるでしょう。
透明人間になった主人公は、次第にその存在を皆に忘れ去られてしまいました。
自分が居なくても回る世界、困ることなく楽しそうに生活する隣人の姿。
寂しさとひとりぼっちの孤独に苛まれた主人公は、誰かといるからこそ人生が輝くことに気付きました。
人間関係は楽しいばかりではなく、時に厄介で大変なこともあるでしょう。
ですが、その関係があるからこそ人は自分の在り方を見つけられるのです。
社会的な役割や、他者との関係性を持って人は初めて人になれます。
今こうして誰かと関わっていられる世界はとても貴重なものであり、かけがえのないものなのですね。
物語を通して主人公が得た答えは、当たり前の日々の大切さを私たちに教えてくれているのです。
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