ポールによる「キャント・バイ・ミー・ラヴ」
「Money」のアンサーソング
1964年3月発表、ビートルズの通算6作目のシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」。
ジョン・レノンが好んでカヴァーした「マネー」に対する、ポールによるアンサーソングです。
「マネー」はお金が欲しいと直截的に表現する曲でした。
一方でポールは「Can’t Buy Me Love」、つまり「愛はお金では買えない」と歌います。
イギリス・アメリカをはじめ各国でNo.1に輝いた曲です。
ビートルズの初期の代表曲でもあります。
ポール・マッカートニーは最近のソロライブでもこの曲を熱唱してくれるのです。
まずは実際の歌詞を見ていきます。
「お金で愛を買うことはできない」
ポール・マッカートニーの多面性
Can't buy me love, Oh
Love, Oh
Can't buy me love, Oh
出典: キャント・バイ・ミー・ラヴ/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
プロデューサーのジョージ・マーティンの意向でサビを冒頭に持ってきました。
「キャント・バイ・ミー・ラヴ」という曲の挨拶になるシーンです。
「お金では愛は買えないよ、Oh
愛さ、Oh
お金では愛は買えないんだよ、Oh」
訳出は色々悩みましたが「me」を表に出さない形にして普遍性を持たせました。
歴史上では愛を経済に変えてしまった哀しい事例がいっぱいあります。
過去のことではなく、現代の一部の疑似恋愛にもいえることです。
それでもポール・マッカートニーは愛とはお金では何ともならないものと歌います。
ポール・マッカートニーという人は本当に不思議な人です。
ジョン・レノンと較べると常識人ですが、大麻が違法な日本にマリファナを持ち込んだりしました。
諸外国と日本では大麻に関する意識が大分違います。
イギリスでも大麻は違法ですが音楽家全般の意識は緩いです。
日本では逮捕されても車窓から笑顔で手を振るポールの映像が残されています。
日本の拘置所で反社会の人と一緒になった際に「イエスタディ」を歌ってくれたそうです。
ポールを一面的に悪者に仕立てて面白おかしく報道する日本のテレビ・メディア。
しかし、ポール・マッカートニーという人は多面的に評価しないと分からない人です。
時代は変わりました。
「キャント・バイ・ミー・ラヴ」での常識人ぶりとロックンロール・ミュージックの破壊的な側面の同居。
ポール・マッカートニーの多面性は人格研究の題材としては本当に面白いです。
気前よくお金を振り撒く?
人間にとって大切な愛
I'll buy you a diamond ring, My friend
If it makes you feel all right
I'll get you anything my friend
If it makes you feel all right
'Cause I don't care too much for money
For money can't buy me love
出典: キャント・バイ・ミー・ラヴ/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
主人公は随分気前のいいことを歌い出しますが真意は何処にあるのでしょうか。
歌詞を和訳して解説いたします。
「君にダイヤモンド・リングを買ってあげよう
それで君の気分が良くなるならさ
僕は君のために何でも手に入れるよ
それで君の気分が良くなるならさ
なぜって僕はお金のことはまるで執着しないから
だってお金では愛は買えないからね」
ダイヤモンドの指輪をプレゼントされて悪い気になる人はいないでしょう。
ただし、だからといって心まで売り渡せるという人も少ないはずです。
ポールは人間の心のいちばん価値があるものは愛だと信じ切っています。
さらに人間生活のすべての局面においていちばん大切なものも愛だと歌いました。
後のビートルズで「All you need is love」と歌うのはジョン・レノンです。
しかしポールもビートルズの初期の頃から愛の大切さを歌にしました。
この見解にはきっとビートルズの他のメンバーも同意しています。
ジョージ・ハリスンは「Something」で「I love you」を用いない素晴らしいラブソングを書きます。
リンゴ・スターは大勢の友だちに恵まれて幸せに活動できました。
ビートルズ自体が「愛と平和の時代」の象徴でもあります。
「Money」と何が違うか
成功者になったビートルズ
I'll give you all I've got to give
If you say you love me too
I may not have a lot to give
But what I've got I'll give to you
I don't care too much for money
For money can't buy me love
出典: キャント・バイ・ミー・ラヴ/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
主人公は相変わらず気前がいいです。
歌詞を和訳して解説いたします。
「僕が持っているものは全部君に上げるよ
君も僕のことを愛しているといってくれるならね
あげられるものは多くはないけれど
でも持っているものは君にあげるつもりだよ
僕はお金のことには執着していないから
だってお金では愛は買えないからね」
この時期のビートルズはイギリスでは不動の地位。
さらに前作「抱きしめたい」で初の全米No.1を獲得します。
イギリスの音楽シーンではこれまでのシングルの最高売上記録を塗り替えました。
ビートルズが下町の不良少年から成功者へとステップ・アップした時期です。
それまで頻繁にカヴァーしていた「Money」をこのまま歌い継ぐと嫌味になりだす頃でしょう。
ポールはアンサーソングを書く必要に迫られました。
ちょっと横道にそれますが「Money」の歌詞を一部引用し和訳いたします。