登場人物は主人公である“僕”と“君”の2人。
主人公は「言って。」の私のいくつか先の来世ということになります。
つまり君も「言って。」で死んだ君と同一人物です。
主人公は自らを“負け犬”と称し、前世での君の記憶を引きずっています。
君を失った悲しみは、何度生まれ変わっても消えることはなく、半ば自暴自棄になっているようです。
いくつもの人生を経験してきた
大人になりたくないのに何だか
どんどん擦れてしまってって
出典: 負け犬にアンコールはいらない/作詞:n-buna 作曲:n-buna
生まれ変わるにつれて、いくつもの人生を経験してきた主人公。
大人になることで変化していく価値観や増えていく責任に、嫌気が差しているようです。
子供のままでいたいのに、時間の流れは止まらなくて。
過去ばかりが増えて、未来はすり減っていくことに窮屈な思いを抱いています。
君と過ごした時間以上の幸せはなかった
青春なんて余るほどないけど
もったいないから持っていたいのです
出典: 負け犬にアンコールはいらない/作詞:n-buna 作曲:n-buna
裏を返せば、少なからず主人公にも青春と呼べる時間があったということです。
それは前世での君と過ごした思い出でしょう。
あれからどれだけ生まれ変わっても、君と過ごした時間以上の幸せはありませんでした。
色褪せてしまわないようにと、記憶のポケットに大切にしまっています。
周囲への苛立ち
人を愛することの重み
「死ぬほどあなたを愛してます」
とかそう言う奴ほど死ねません
出典: 負け犬にアンコールはいらない/作詞:n-buna 作曲:n-buna
こういったセリフを軽々しく口にする人たちに対して、憤りを感じています。
主人公は前世において、君という大切な存在を亡くしました。
これまで生まれ変わってきた中で、悲しみに耐え切れずに自ら命を絶った人生もあったのかもしれません。
身をもって人を愛すること、そして死を体感してきたからこそ、そのセリフの重みを理解しているのです。
会いたい人はいるのに会うことができない
会いたい好きです堪りません
とか誰でも良いのに言っちゃってんのがさ、わかんないね
出典: 負け犬にアンコールはいらない/作詞:n-buna 作曲:n-buna
出会い厨という言葉まで生まれた昨今。
「淋しい」「構って欲しい」「連絡ください」、そんな言葉がSNSには溢れかえっています。
犯罪の危険性が孕むものは別として、その人たちの抱える孤独は当人にしか分からないものがあるのでしょう。
主人公には君という明確に会いたい人がいます。
しかしもう会うことはできません。
主人公が何度も生まれ変わったように、君も生まれ変わってきたことでしょう。
記憶の中で生き続ける君にはもう会うことができないのです。
その苦しさのあまり、誰彼構わず出会いを求める人たちに対し、苛立ちを覚えているのかもしれません。
何度も負け続けてきた
もう一回、もう一歩だって
歩いたら負けだ
つまらないって口癖が、僕の言い訳みたいじゃないか
出典: 負け犬にアンコールはいらない/作詞:n-buna 作曲:n-buna
何度生まれ変わっても、君がいない人生に楽しさを見出すことはできませんでした。
大人になるにつれて悲しみだけが募り、その度に自ら命を絶ってきたのかもしれません。
歌詞に綴られているような口癖を吐き捨てながら。
そんな自分を“負け”だと表現しているのです。
この場から動いて、誰彼構わず愛や出会いを求める人たちをまた目にしてしまったら。
苦しみが増えるだけで、また負けそうになるかもしれないと、危機感を抱いています。