人は皆、何かを求めて生きている
気分の晴れない1日

明日はきっと天気で 悪いことなんてないね
タイムカードを押して僕は朝、目を開いた
僕らは今日も買ってる 足りないものしかなくて
靴を履きながら空想 空は高いのかな
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
平凡な1日を過ごしている主人公ですが、今日は少しだけブルーな出来事が多かったようです。
それもそのはず、今日は朝から太陽の見えないどんよりとした天気。
外の暗さに呼応するように、悪い出来事が次々に降りかかってきたのです。
こんなにブルーな1日ならば、きっと明日はこれより悪くなることはないだろう……。
一種の「望み」のようなものを口に出し、何とか気分を晴らそうとしています。
今日の朝、出勤したと同時に目にしたのは、今までと変わらない平凡な毎日でした。
しかしよく見てみると、大勢の人が「物を買い」、そして「消費」していることに気がつくのです。
それは当たり前のことでありながら、何だか悲しみすら感じさせる出来事。
いくら買っても満ち足りることのない人間を憂いているかのようです。
「誰かの物」であふれたこの世界で、突き抜けるような空は「誰の物でもない」存在。
それに値段をつけるとするのならば、どれだけ高額になってしまうのでしょうか。
形のないものの「消費」
貴方さえ 貴方さえ
これはきっとわからないんだ
はにかむ顔が散らつく
口を開けて風を食む
春が先 花ぐわし
桜の散りぬるを眺む
今、風を食む
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
生活に必要な物を買い求める人がいる一方、さほど必要でない物を買い漁る人もいます。
その結果確かに経済が回り、世界は金銭的に潤っていくことでしょう。
しかし、血の通わない無機質なお金の流れが、主人公にとっては息苦しいものにすら感じてしまい……。
当たり前のように人から人へと渡っていく「物」の大切さを、もう一度考えたくなるのです。
それと同時に、今の時代は形のない「サービス」が売買されることも多々あるもの。
人々は無意識のうちに、物だけでなく人にまで金銭面的な価値を見出し始めているのです。
ふと見渡せば、人間たちのやり取りなど気にしていないかのように花が咲き、風が吹き乱れています。
桜の花びらがひらひらと舞い落ちるのを眺めている間だけは、不毛な考えに悩むこともありません。
口に含んだ風の味を確かめながら、風に値段などつけられないと改めて実感させられます。
自分の価値を下げるように
棚の心は十五円 一つだけ売れ残った
値引きのシールを貼って閉店時間を待った
明日もきっと天気で 此処にも客が並んで
二割引の心は誰かが買うんだろうか
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
今日もまた出勤し、客の手に渡っていく商品を眺めている主人公。
閉店間際には、賞味期限の迫った商品を値引きして売るという仕事が待っています。
ポツンと残った商品を見ているうちに、その物悲しさをつい自分に重ねてしまう主人公。
数ある仕事の中でも、特にこの時間が苦手だと感じてしまうのです。
周りが次々に気の合う友達や恋人を見つけ、「居るべき場所」を見出していく日々。
主人公はまだ、自分の居場所を見つけることができません。
その姿はまるで、元々の値段よりも価値の落ちた「値引き商品」のよう。
明日こそは誰かに買ってほしい……。
まるで自分の行く末を見ているような気持ちで、棚の商品を見つめているのです。
他とは違って見える貴方のこと
貴方だけ 貴方だけ
僕はずっと想ってたんだ
ただ白いあの雲を待つ
風のない春に騒めく
草流れ 天飛ぶや
軽く花の散るを眺む
今、風を食む
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
まだ居場所を見つけることができずにいる主人公にも、恋心を抱いている相手がいました。
見向きもされずに残ってしまった自分の心でも、貴方になら買ってほしい……。
むしろ、貴方だから買ってほしいと思うのです。
貴方と一緒に見る世界では、雲も草も全てが自由を楽しんでいるかのように見えます。
1番では花びらが舞い落ちるのを眺めていた主人公でしたが、今は風すら吹いていません。
それはまるでこの場所だけが時を止めてしまったかのようです。
現世から切り離されたようにも感じるこの空間で、再び風が吹いた時……。
味わった風は、あの時とは違う味がしているはずです。