「大丈夫」という声を聴く

RADWIMPS【大丈夫】歌詞の意味を独自考察!君と僕との関係は?「大丈夫」に込められた想いに迫るの画像

2019年11月27日発表、RADWIMPSの「天気の子 complete version – EP」。

この作品に収録された楽曲大丈夫」について歌詞を独自に考察してゆきます。

新海誠監督の「天気の子」の主題歌として多大な支持を集めました。

映画に合わせて発表された「大丈夫 Movie edit」ではなく後に発表された完全版の歌詞をご紹介します。

新海誠監督の言葉のとおりにRADWIMPSの「大丈夫」はストーリーの要の部分を歌っているのです。

そのため解釈の基軸を映画「天気の子」に合わせて考察するのが王道かもしれません。

しかし音楽サイトのOTOKAKEですから楽曲「大丈夫」に宿る普遍的なメッセージを汲み取りたいです。

映画「天気の子」に関しての説明やストーリーとの絡みは必要最小限の説明にとどめます。

「天気の子」のあらすじはすでにリスナーもご存知でしょう。

映画のストーリーを超え出たRADWIMPS楽曲「大丈夫」の本当の真価に迫ります。

大丈夫という日常会話に不可欠なこの言葉の深さを読み解いていきましょう。

僕と君のふたりがともに生きてゆくのに必要な相互理解とは何かが浮き彫りになるはずです。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

思い通りにゆかない日々

足掻くことしかできないけれど

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時の進む力は あまりに強くて
足もつかぬ水底 必死に「今」を掻く

足掻けど未来は空っぽで いつも人生は
費用対効果散々で 採算度外視、毎日

出典: 大丈夫/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

歌い出しの歌詞です。

まず歌が始まって伴奏も同時にスタート。

イントロはありません。

アコースティック・ギターの割と朴訥とした素朴なアルペジオが美しい。

野田洋次郎は流れるように歌詞を口にしているのです。

そのため歌詞を区切って流れを断ち切る真似はしたくないのですが考察のためにやむなく区切りました。

申し訳ございません。

水の中という歌詞の舞台設定は「天気の子」のストーリーに由来します。

ただここであまり映画の内容に踏み込むのは避けましょう。

もっと普遍的な楽曲として「大丈夫」の姿を浮かび上がらせるために考察します。

時間の流れに急き立てられるように毎日が過ぎゆくのです。

語り手の僕はこの流れに合わせることにかなり手こずっています。

日々の生活でアップアップしている様子が見て取れるでしょう。

社会生活の闇の部分はどこまで続いているのか見当も付きません。

暗い水底とは僕が暮らす生活が中々安定せずに安心することもできない状況であることを指します。

しかし生きることを続けてゆかねばなりません。

簡単にギブアップすることは社会の水底に沈むということを意味します。

若い僕はスマートに泳いで水面をゆくような芸当ができないのです。

ですから僕ができることは今この瞬間も足掻くことしかありません

少しでも前へ向かう意志を確かに持って徐々に歩を進めるのです。

一筋縄ではいかない社会の中でもがいている僕の姿は多くのリスナーの共感を獲るでしょう。

未来は土砂降りの雨の中

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過酷な生活の中で語り手の僕は散々足掻いてみせます。

それは必死に生きるということです。

僕の我武者羅さを感じてください。

しかしそこには僕が予め算段した見積もりを超えた現実が待っています。

どう頑張っても現実の方が予想を凌駕した状況を作り出してしまうのです。

これでは生きてゆくこと、生命を繋ぐことぐらいで生活はいっぱいいっぱいでしょう。

いつでも期待したような明るい未来など訪れてはくれないのです。

若いリスナーはこの日本社会が希望に満ちていた時代を知りません。

リスナーだけでなく野田洋次郎自身も明るい未来を予測していた日本社会を知らないのです。

20世紀に描かれた「夢の21世紀の予想図」はいつまで経っても実現しません。

その当時の人々はこの経済的成長や科学の進歩によって明るい未来が来ることを純粋に信じていました。

ただし、どこかで慢心があったのでしょう。

この国は「失われた30年」と呼ばれる停滞と衰退の波に飲まれています。

若いリスナーはこの「失われた30年」の只中でゆっくり衰退してゆく社会が普通と感じるでしょう。

株価が上がったことで経済は好調と勘違いする人も多いはずです。

実際は公的資金注入で株価を維持しています。

まさに採算度外視のような発想で目先の株価を維持するのに中央銀行が汲々としているのです。

重大なモラルハザードが起きているのに若い方にとってはこれこそが日常になっています。

株価が好調でも私たちの賃金は上がりません。

生活はいつもぎりぎりで貯蓄する余裕がないのです。

しかしそれが私たちの暮らしのスタンダードであるので問題視する気さえ失せました。

ただ、当たり前に生活するのが苦しい。

巨視的な視点で社会を見るとこうしたメカニズムにも気付けるかもしれません。

警鐘を鳴らしている人はたくさんいます。

ただ、そうした人こそ現状に抗って足掻いているようでハラハラして見ていられない聞いてられない。

私たちはチャンネルを変え、周波数を変えます。

あるいはブラウザのタブを閉じて好きなYouTuberのために新しいタブを開くのです。

しかし明日というもの、未来というものは土砂降りの雨に沈み込むのでした。

君との出会いの瞬間は

重い責任を負って生きる君

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僕はただ流れる空に横たわり
水の中愚痴と気泡を吐いていた だけど

世界が君の小さな肩に 乗っているのが
僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると

出典: 大丈夫/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

雨がやまない異常気象が続く東京の街。

僕こと16歳の森嶋帆高と君こと天野陽菜とが出会います。

「大丈夫」はこのふたりの生き様のようなものを歌詞の骨にしました。

映画「天気の子」に関しての考察は紙幅の関係などでこの記事では取り扱えません。

映画と楽曲「大丈夫」との相関で必要最小限な情報だけを添えていきます。

僕は未来が見えない生活の中で漫然と日々をやり過ごしていました。

こうした残念な状況では生活のすべてにケチが付きます。

自分の言葉にどの程度の意味があるのだろうなどと考え始めるでしょう。

僕は自分の言葉など水の中の気泡に過ぎないとまで表現します。

実りのない生活の中では自分の存在意義も分からなくなるのです。

僕は身の回りの事象についての愚痴しか口にしませんでした。

しかし君こと天野陽菜との出会いで生活感が一変するのです。

君とともに充実した生活が始められる。

そうした確信をどこかで抱いたはずです。

というのもまず君が背負っているものの重さ。

その人智を超えた非情なくらいに厳しい責任を負って生きる君の姿に目を啓かされたのです。

繰り返しますがこの君が背負っているものの具体的な内容についてこの記事ではあえて触れません。

楽曲「大丈夫」を「天気の子」の作品世界を超越した普遍的なものとして扱いたいのです。

共感力で惹かれ合った

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自分が若かった頃、あるいは今青春時代を生きている人へ尋ねましょう。

自分自身よりも重い責任感を持っている人々に接した際にどのような感慨を抱くでしょうか。

あの頃、もしくは今、若いうちから責任を背負って生きている友人・知人に気圧されたことがあるはず。

彼・彼女は気負いもなく世界を相手に格闘しています。

何か重いものを背負っていることがその人の生き方にまで昇華している。

若い自分と歳がさして変わらない人が宿命のようなものと対峙しているのを見ると心を揺り動かされます。

僕が君を見たときもそうしたセンセーションを感じました。

華奢な体格なのにまるで世界をすべて一身で背負い込んでいるような君の様相に驚愕するのです。

君は世界の重みで壊れてしまわないかと心配になるでしょう。

ここで僕は君のために自分も力を貸せないかと考え始めます。

壊れそうな君の姿に胸が塞がれる想いがしたからです。

しかし誰しもが僕のような選択をするとは限らないでしょう。

自分から世界を背負い込む性格を不憫に思いはすれど自分は付き合いきれないと感じる人もいるはずです。

僕という感受性の持ち主がいないとこの楽曲「大丈夫」の世界は始まらなかったはず。

日々に倦んで愚痴を吐くしか能がないと自嘲した僕にも潜在していた共感力があった証拠です。

悲劇的・宿命的な重みを背負う君の姿に涙を流せるだけの共感する力。

人と人を結ぶための大切な力であり想像力を背景にした能力です。

共感力は地球の裏側の不幸のことを考えて幸せを祈ることさえできる人間に備わった眠れる力でしょう。

ドラマの本編が始まる