夢ような一夜、そのあとさき

THE YELLOW MONKEY【SUCK OF LIFE】歌詞の意味解説!女狐の涙が示すものとはの画像

長い髪を振り乱し暴れる夜に
AH エゴイストが鼻につけば終わる SILENT TONIGHT
目が覚めて鏡を見れば 口紅で I LOVE YOU
メカニズムも止められて終わる SUCK OF LIFE

出典: SUCK OF LIFE/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉

一曲を通して歌詞を見てみると、一つの夜から朝方にかけての出来事だということがわかります。

念願叶い「君」と一夜を共にできた「僕」。

けれど眠りから覚めると「君」はいなくなっています。

残っているのは「君」が鏡に書いたメッセージだけ。

そして「メカニズム」とは、さながら気持ちの高揚(と、それに伴う体の反応)といった意味でしょうか。

夜には動いていたけれど、「君」の残したメッセージを見て止まってしまいます。

でも「I LOVE ~」と書かれているのに?と疑問に思いませんか。

鏡に口紅でメッセージを書き残すというのは、どこか別れを予見させる行動です。

「モロッコ」や「バターフィールド8」など、有名な洋画でも出てくる描写です。

松任谷由実さんはそこからヒントを得て「ルージュの伝言」を書いたとも言われています)

「僕」はそのイメージが頭に浮かんだのでしょう。

そして何より"愛してる"という言葉が「君」の本心なのかどうか、確かめる術はありません

だからこそ、昨夜から残っていた高揚感が一気に沈んでしまったのでしょう。

出て行く「君」、取り残される「僕」

THE YELLOW MONKEY【SUCK OF LIFE】歌詞の意味解説!女狐の涙が示すものとはの画像

ところでこの"一夜を共にした次の朝に部屋を出ていく"という描写。

実は再集結後のTHE YELLOW MONKEY楽曲にも出てきます。

愛とは何かを知ったその朝に 僕らはこの部屋出て行くのでしょう

出典: 未来はみないで/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉

2020年発表の「未来はみないで」では、二人で朝を迎え、ともに部屋を出ていく様子が描かれています。

向かう先は違うかもしれませんが、再会の約束もして別れるのです。

対してこの「SUCK OF LIFE」では、目覚めた時すでに相手はいなくなっています。

「君」が本当に「僕」を愛しているのかさえわからないままで。

それこそ再会の約束すらしていません。

二人の関係を決める確からしいものが何ひとつ残っていない

その状態で「僕」は取り残されてしまうのです。

高揚感が消えてしまうのも当然でしょう。

それでも「君」と、人生を

「虹」が意味するもの

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虹を集めゴージャスな ドレスを作って
もう一度溶けるような
BE MY SUCKER OF LIFE

出典: SUCK OF LIFE/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉

吉井さんの綴る歌詞の世界において「虹」は、いい意味で人の心を大きく動かすものの象徴のようです。

たとえばTHE YELLOW MONKEYの「RAINBOW MAN」。

そこでは虹を手にして全ての願いを叶える様子が描かれます。

またYOSHII LOVINSONの「RAINBOW」にはこんな一節もあります。

七色で人の心乱すレインボウ
長く続かなかった夢のように
手の平で すぐに消えてしまう レインボウ

出典: RAINBOW/作詞:YOSHII LOVINSON 作曲:YOSHII LOVINSON

実体がなく儚いながらも、色とりどりで人の心を震わせる要因となるもの。

これが比喩だとするならば、音楽なども「虹」の一種でしょうか。

それを豪華にまとわせた「君」と、また昨夜のような時間を過ごしたい。

そして自分の「SUCK OF LIFE」になってほしい。

最後まで「僕」はそう歌い上げます。

それこそがきっと「僕」にとって、この上ない幸せであるからでしょう。

「君」の存在はたった一口分?

さて最後に残ったのは、タイトルでもある「SUCK OF LIFE」についてです。

「SUCK OF〜」とは「ひと吸いの、一口の、一杯の」という意味。

一口といっても大口を開けた時のそれではありません。

ストローでひと吸い、またはスプーンで一回すくって飲む程度の量です。

するとタイトルは直訳で「人生の一口分」となります。

歌詞の中であんなに執着し手に入れたいと望んでいた「君」なのに、人生においてはたったの一口分。

あまりにも少なすぎる、と思うでしょうか。

ひとさじで満ちるもの