本当の意味で優しくなりたい、なりかたが解らないと悩む「僕」。
自分の内面に自分の求める「優しさ」を見い出そうとします。
でも、「僕」の求めるものはなかなか見つかりません。
自分で覗いてみた「僕」の心の中には「僕のためのものしかない」のです。
「そうじゃないもの」つまり僕のためではない誰かのためのものを渡したい。
渡したいけどそれが「心の中に無い」。
それでも自分のためではない何かを誰かに渡すことを諦めることができない「僕」がいます。
本当の優しさとはという問いの答えが見つからない葛藤の中にいる「僕」。
「渡したいけど 渡したい僕がいる」という表現にその葛藤が見え隠れします。
「優しさ」とは無意識のもの
知らないうちにもらった「優しさ」
ねぇ 優しさってなんだと思う さっきより解ってきたよ
きっとさ 君の知らないうちに 君から貰ったよ
覚えはないでしょう
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
本当の優しさとはという問いを自問自答してきた「僕」。
自問自答を繰り返すなかでさっきより優しさを理解します。
「僕」が理解した「優しさ」とは「君の知らないうちに 君からもらった」もの。
つまり、「優しさ」は意識して渡そうとするのではないのです。
渡す「君」も、もらう「僕」も無意識のうちのことで「覚えはない」のです。
それが「僕」の導き出した「優しさ」の本質でした。
優しくなりたいとは人に良く思われたいということ
皆 良く思われたいだけ 自分自身を売り込むだけ
優しくなんかない そうなりたい 僕が一番ひどい
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
優しくなりたい人は皆自分が「良く思われたくないだけ」。
優しくしようと思うことで「自分自身を売り込むだけ」。
優しくしたいと思うことの傲慢さを「僕」は嘆きます。
人は「優しくなんかない」。
本来「優しくない」のに優しくなりたいと願う「僕が一番ひどい」と僕は思ったのです。
考え抜いて気付いた「優しさ」の本質
望まないことを望む難しさ
頭ヘンになったかも いやいや至ってまともだよ
望みは望まない事 僕が知らないうちに 君のためになれること
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
頭がヘンになったかもと思う程、「僕」は「優しさ」について突き詰めて考えました。
「望み」は「望まないこと」という一見矛盾した望み。
「僕」の望みは、自分がそう望まないうちに、知らないうちに「君のためになれること」。
君のため、と思った時点でそれは自分の奢りであると「僕」は気付いたのです。
「優しさ」は人と人との間にある
ねぇ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ
きっとさ 人と人との 心の外の中だけに在るんだ
ひとりごと
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
自分との対話の中で「優しさ」について理解を深めてきた「僕」。
「僕」にとっての「優しさとは」という問いに対する答えがここに表現されています。
「優しさ」は「渡せないのに貰えた」もの。
そして「人と人との心の外の中だけに在る」。
それが「僕」が導きだした答えです。
「渡せないのに貰えた」「心の外の中だけに在る」というのは無意識を示します。
「心の外の中」という表現に作詞を手掛け対する藤原基央の独自の表現が生きています。
心の外、つまり無意識。心の外の中、つまり無意識の中。
優しさはあくまで無意識のうちに交わされるものであっても、その無意識は人の中にある。
人と人との中にある無意識に本当の「優しさ」があると「僕」は結論付けます。
しかしそれはあくまで「ひとりごと」。
この意見を誰に押し付けるわけでもないという意思表示がされています。