BUMP OF CHICKEN・10thシングル「プラネタリウム」収録
「銀河鉄道」は、BUMP OF CHICKENの通算10枚目のシングルとして発売された「プラネタリウム」にカップリングとして収録されています。
作詞作曲を手掛けた藤原基央は、宇宙好きとして有名。
「プラネタリウム」はもちろんのこと、今回ご紹介する「銀河鉄道」もどこか宇宙を感じさせる不思議な音楽体験を得ることができます。
現実の出来事と主人公の記憶や思考が絶妙に交錯する本作。
まるで宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせるような幻想的な世界観です。
人生を鉄道の旅になぞらえたその歌詞を徹底解説していきます。
「生きた街」からの旅立ち
見送る人のいない孤独な旅の始まり
電車の窓はガタガタ鳴く 生きた街を遠ざける
見送る人も居なかった僕の 生きた街を遠ざける
知っている景色と知らない景色が
僕を騙すようにいつのまにか 入れ替わる
出典: 銀河鉄道/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ガタガタと鳴る電車の窓。見えるのは主人公の「僕」が今日まで生きていた街です。
「僕」は電車に乗ってどこに向かうのでしょうか?
旅立ちの日に、「僕」を見送る人の姿はなかったようです。
この街で「僕」は孤独に生きていたのかもしれません。
街が遠ざかると同時に、孤独に生きた過去も徐々に遠ざかってゆきます。
素早く移り変わる電車の窓の景色には現実味がなく、「僕を騙すように」入れ替わります。
「知らない景色」というフレーズから、「僕」は知らない街へと向かっているという事が分かります。
実感する「ひとり」だということ
僕の体は止まったままで 時速200㎞を超えている
考える程に可笑しな話だ 僕は止まったままなのに
こんなに可笑しなこと黙っちゃいられない
そう思って間もなくひとりだったって思い出す
出典: 銀河鉄道/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
「僕」の乗る電車は時速200㎞を超え、「僕」を知らない街へと運びます。
座っているだけなのに猛スピードで移動する「僕」の体。
内面は「止まったまま」なのに、どんどん加速し進んで行く電車。
違和感を覚え、可笑しさを感じる「僕」。
誰かに今の気持ちを聞いてもらおうとして、ひとりだという事を思い出しました。
こんなとき話を聞いてくれた家族や友人のいる街を離れ、ひとりで知らない街へいくのだという現実が押し寄せてきました。
人々の人生を乗せ走る電車
誰もがそれぞれの 切符を買ってきたのだろう
今までの物語を 鞄に詰めてきたのだろう
出典: 銀河鉄道/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
電車に乗る人々には、それぞれの過去と未来があります。
「僕」がこれまで生きた街から、これから生きる知らない街へ向かう切符を買いました。
同じ切符でも、そこに込める思いや物語は人それぞれ。
今までの思い出を鞄に詰めて未来へと向かう人を乗せ走る電車。
移動するのは距離だけではなく、電車に乗る人々の人生の変化そのものでもあります。
身に染みる現実の厳しさ
リボン付きのクマが転がってくる 迷ったけど拾ってやる
同時に女の子が駆け寄ってくる 僕を見て怖気付く
後悔した僕からクマを奪うと 礼も言わず逃げていく
もういいや寝ようかな シートを倒す
後ろから舌打ちが聴こえる
出典: 銀河鉄道/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
どこかの席から、リボンが付いたクマのぬいぐるみが転がってきました。
そのままにしておこうか迷った「僕」は迷いながらもそのクマを拾い上げます。
クマのぬいぐるみの持ち主の女の子が駆け寄ってきたものの、「僕」をみて怖くなってしまった様子。
拾わなければよかったと後悔する「僕」を尻目に、女の子はクマを「僕」から奪うようにして走り去っていきました。
何気ない出来事がショックだった「僕」はもう寝て忘れようと思い、座席のシートを倒しました。
そうしたら今度は後ろの席から聴こえてきた舌打ち。
世間の冷たさや厳しさが身に染みます。
これから先ひとりで知らない街で暮らす日々に更に不安を覚えたことでしょう。