ドラマ主題歌!テーマは太宰治?
Official髭男dism(以下ヒゲダン)には「Pretender」や「宿命」以外にもたくさん名曲がありますね。
そんな1曲が「バッドフォーミー」。
2枚目のEP「Stand By You EP」に収録されていてデジタルシングルとして先行配信されました。
さらに「Pretender」も入っている2枚目のアルバム「Traveler」にも収録されています。
また、ドラマ「グッド・バイ」の主題歌としても起用されました。
これは太宰治さんの遺作となった未完の小説を原案とした、羽生生純さんによる同名漫画の実写ドラマ化でした。
こうした点を踏まえたのでしょう。
ショートバージョンのリリックビデオは、進化した小説でも読むようなスタイルになっています。
突然、始まる恋愛モノ
曲の構成
そもそも太宰治さんという作家ご自身こそ恋多きモテ男だったのでしょう。
そして実体験を彷彿とさせるドラマティックな恋愛小説を残されています。
さらに「バッドフォーミー」は「小説→漫画→ドラマ」という経緯をたどった果ての主題歌です。
そのため「モテ男ゆえの愛人たちとの葛藤」というお題がベースにあることになります。
ところがこの曲では、モテモテなのは女性です。主人公の男性が、モテモテの女性にヤキモキします。
ヒゲダン流のひねり…なのでしょう。
そんな男性の揺れる恋心が、キャッチーなサウンドとともに、刻々と描かれていきます。
繰り返される言葉のなかに、ちょっとした変化が盛り込まれているのです。
こうしたドラマティックな歌詞の展開は、曲の構成にも反映されています。
- 1番:Aメロ→Bメロ→Cメロ
- 2番:Aメロ→Cメロ
- 3番:Dメロ→Cメロ×2→Aメロ
とくにAメロで始まり、Aメロで終わるという流れがおもしろいでしょう。
このサウンドと歌詞が密接にリンクしているところもこの曲の醍醐味です。
こうした点を踏まえて、1番の歌詞から見ていきましょう。
泣き笑い
笑っちまうほど
夢見がちなのさ
君に会ってから
余計にひどくなったな
とどめを刺された
群青色の涙
指でぬぐったら
引っ付いて離れなくなった
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
男性は泣きながら笑っています。
「どうしてこんなに夢見がちになってしまったんだろう?君と出会ったせいだ!」といったところでしょう。
悲恋の物語が唐突に始まりました。
ドラマと出会い、主題歌なので、ラブファンタジーでいきます!というヒゲダン流の照れ隠しかもしれません。
少し触れましたが「グッド・バイ」は太宰治さんの未完の絶筆が原案となった漫画を原作にしています。
太宰治さんの「グッド・バイ」は新聞に掲載するために描き始められた連載小説です。
この連載小説の依頼を受けたとき、太宰治さんは「人間失格」を執筆中でした。
「人間失格」を脱稿した後、自殺するまでの約1か月で連載13回分の原稿を仕上げています。
大まかな構想では、主人公が愛人たちと別れて妻との生活を目指しますが、結局はその妻に別れを告げられるというものです。
もし気になったら、漫画と合わせて太宰治という大作家の作品にも触れてみてはいかがでしょうか。
きっとヒゲダンの「バッドフォーミー」の解釈にも幅が出ると思います。
違和感
季節外れの装いに
悲しみがフィットした微笑み
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
歌物語としては「冬に夏みたいな服を着ている」イメージでしょうか。
肌の露出が少々多めの服を、夏以外の季節に着る彼女が想像されます。
男性は、ドキドキしながらも悲しい気分になるという複雑な心境でしょう。
なぜなら女性は、他の男性からも注目を集めてしまうからです。
ただ、これはほんの一例です。
実際のコーデを特定できるワードはありません。男性自身のファッションに関する話かもしれません。
とにかく服装と季節にズレがあるところがポイントです。
ヒゲダンとしては「今このタイミングでラブファンタジー。悲喜こもごも…」といった気分なのかもしれません。
冬なのに夏みたいに露出の多い服を着た素敵な女性といえば、映画「ティファニーで朝食を」を思い出します。
オードリー・ヘプバーンが演じたホリーは豊かな生活を追い求めますが、本当は真実の愛を知らないだけの女性です。
オードリーの憂いを含んだ微笑みと、歌詞の「悲しみがフィットした微笑み」は同じようなイメージではないでしょうか。
好みじゃない?
あっと あっと いう間に
引きずり込まれるファンタジー
通り雨みたいな恋心 Oh Oh
あっと あっと いう間に
全然タイプじゃないのに
ときめきが浪費されていく No No
Bad for Bad for Bad for me
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
好きになったらその人がタイプ…という考え方もあります。
ただ、男性はもともと好みではないはずの女性に心を奪われたようですね。
たとえば「キレイ系よりかわいい系が好きだったはずなのに、キレイな君に夢中」なのかもしれません。
「ラブソングは得意ではないはずなのにこうして作っている」といったヒゲダンの裏テーマも見え隠れします。
ヒゲダンのラブソングといえば、本作も入っている「Traveler」から「ビンテージ」もそうですね。
「ビンテージ」は恋愛バラエティ番組である「あいのり」のアフリカ編の主題歌として有名です。
他にも映画「コンフィデンスマンJPロマンス編」の主題歌となった「Pretender」もあります。
それぞれ素敵な歌詞でとても魅力のある作品ですが、バッドフォーミーのような内容ではありません。