互いの身の上話に始まり
始まりはよく覚えていない
一晩じゃ終わらない

出典: 嫉妬されるべき人生/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada

2人はどうやって仲を深めていったのでしょうか。

しかし彼女はその記憶すらも曖昧です。

特別なことがあったわけではない様子。

ただありきたりな話をした記憶が描かれています。

おそらく刺激的な恋ではなかったのでしょう。

たまたま出会った男性は「良くも悪くも普通」

とりわけ特徴もないからこそ、淡々と付き合えたのでしょう。

そして別れるきっかけもないまま今に至るといったところでしょうか。

彼女が男性を本当に愛しているのか、若干疑わしくなってきました。

女性目線で描く「不安」

将来を見据える

不気味にとめどなき
何かが溢れだし
長いと思ってた人生 急に短い

出典: 嫉妬されるべき人生/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada

タイトルでは幸せを示唆しつつ、どこかつれない主人公。

どこか矛盾しているようにも感じます。

しかしこう考えればつじつまが合うでしょう。

自然な流れで恋愛関係になっていった2人。

しかし付き合っていくと、「結婚」という機会が見えてきます。

初めて結婚を体験する女性にとっては大きなハードルにも思えるでしょう。

主人公はまさにその状態なのではないでしょうか。

いままで自分の目先のことだけ考えれば済んでいた生活。

結婚となるとそれが一変します。

この先の長い人生、彼と添い遂げることを考えなくてはなりません。

結婚を考えたとき、ふと女性は将来に目を向け始めます。

そう考えると、やることも山積みで分からないことだらけ。

長いと思っていた人生もあっという間のような感じがしてきます。

自分で本当に大丈夫なのか。

はたまた本当に彼でよかったのか…。

不安は尽きません。

彼を愛する傍ら、彼女は不安を感じ始めているのでしょう。

幸せなのに不安

今日が人生の最後の日でも
五十年後でも あなたに出会えて
誰よりも幸せだったと
嫉妬されるべき人生だったと

出典: 嫉妬されるべき人生/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada

つまりこの曲で描かれているのは2つ。

1つは彼への率直な愛。

そして不安という矛盾した2つの心情です。

いわばマリッジブルーといったところでしょうか。

幸せなはずなのに、どこか気持ちが沈む。

これに共感できる方も多いと思います。

そのため同曲では幸せをうたいつつも、どこか伴奏は暗い印象です。

ごちゃごちゃとした胸の内。

そして複雑な心境を、遠回しな言葉と暗めのメロディで表しているのでしょう。

【嫉妬されるべき人生】とは

誰もがうらやむ幸せな人生

彼女はこれから彼と幸せな人生を築いていくでしょう。

しかしどうも今の彼女にはそれが確信できていません。

本当に幸せになれるのか、不安なのです。

そこで再び登場するのが同曲のタイトル。

【嫉妬されるべき人生】です。

いまいち心から幸せを感じられず、不安が勝っている主人公。

そんな彼女が自分自身にこのタイトルを言い聞かせているとも取れます。

「嫉妬されて当然だ」「羨ましがられるほどあなたは幸せなのだから」

そうして彼女は幸せを再確認するのです。

そう思いたい

言えるよ
どんなに謙遜したところで
嫉妬されるべき人生だったと

出典: 嫉妬されるべき人生/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada

また、「妬まれるべき」の「べき」という表現

これも主人公の心情を表しているといえます。

「べき」という言葉の意味合いは次のとおりです。

「妬まれて当然」「妬まれなくてはおかしい」

このように、妬まれることが必然であることを強調しているのです。

つまり主人公は今、心からの幸せを感じられていません。

しかしそれをこの「べき」で叱責しているのです。

「自分の状況は人から妬まれて当然。どうしてこんなに幸せなのに喜ばないんだ」

といっているようにも取れます。

喜ばないというより、今は考えることの方が多く喜べない状態に近いかもしれません。

心から幸せだと、幸せになれると信じたい主人公の切な思いが受け取れます。