身長が高くて喧嘩が強い 太平はいつも無茶な遊びを思いつ
く
「この鉄橋に一番 長くぶら下がったやつの 言うことは何で
も聞かなきゃダメだぜ」
僕らはびびって出来なかったけど 太平は平気な顔でぶら下
がる
7年後に太平はビルから飛び降りた そんな勇気なら無いほ
うが良かった
出典: 夏を待っていました/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
高いところが平気で、気も力も強い友人「太平」は、少年時代から7年後という大人になっていく多感な時期に自ら命を絶ったのです。
きっと皆をハラハラさせながらも、いろんな遊びで楽しませてくれた友人だったのでしょう。
死をためらうことなくビルから飛び降りる勇気など持っていてほしくなかったと嘆いています。
明るく青い夏の空になっていく時期に起こった過去の悲しい記憶を、時間の流れを無常に感じながらぼんやりと思い出している姿が描かれています。
2:無題
木造アパートの一階で 彼は夢中で絵を描いていた 描きたか
ったのは自分の事 自分を取り巻く世界のこと
小さな頃から絵が好きだった 理由は皆が褒めてくれるから
でも今じゃ褒めてくれるのは 一緒に暮らしている彼女だけ
でも彼はそれで幸せだった すれ違いの毎日だけど 彼女はい
つもの置手紙 桜模様の便箋が愛しい
気づいたら夜が明けていた 気づいたら日が暮れていた 気づ
いたら冬が終わってた その日初めて絵が売れた
出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
なかなか芽を出さない画家が苦しい生活を強いられ、同棲する彼女に支えられながら細々と暮らしています。
しかし、好きなことをしているので大きな不満もなく、それなりに充実した絵描き生活を送っています。
好きな絵を描くことに没頭していたら、気がつかないところで自分の絵が評価されて初めての販売に繋がりました。
彼はますます絵が好きになった もっと素晴らしい絵を描き
たい 描きたいのは自分の事 もっと深い本当の事
最高傑作が出来た 彼女も素敵ねと笑った 誰もが目をそむけ
る様な 人のあさましい本性の絵
誰もが彼の絵に眉をひそめた まるで潮が引くように人々は
去った
変わっていくのは いつも風景
人々は彼を無能だと嘲る 喧嘩が増えた二人もやがて別れた
信じてた事 間違ってたかな
出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
芸術は人間の心の中にあるものを表現する手段です。
彼は絵を通して、自分の奥底にある本性を知りたいと思っていました。
そして身を捧げて描いて出来上がった傑作は、彼女を除いては多くの人に批判されました。
評価を得て順調に行きかけていた生活は、この傑作によって大きく転落します。
きっと、なぜこんな絵を描いたんだ?と疑問を投げかけられたことでしょう。
しかし、彼にとっては自分を表現した一枚の絵であって、人の評価は移ろいやすいものだということをいずれ訪れる彼女との別れが物語っています。
自分の軸は変わらないけれど、自分を取り巻く環境は止めることができずに刻々と変わっていく様子が描かれています。
3:爆弾の作り方
分からないものは分からないし
やりたくないことはやらないし
そう言ってら落伍者扱い 立派な社会不適合者
やり続けることの情熱も 今じゃ余計な不穏分子
純粋でいることの代償は つまり居場所が無いって事だ
出典: 爆弾の作り方/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
自分に正直に生きていくことは簡単に思えても、実際は非常に難しいものです。
適度に周りに合わせて無難にやり過ごすことを無意識のうちに求められ、純粋に好きなものだけを追う姿を冷たい目で見てくる世間に、肩身の狭さを感じてしまうのです。
行き場の無いイノセンス イノセンス 今に見てろって部屋に
こもって
爆弾を一人作る 僕らの薄弱なアイデンティティー
ひび割れたイノセンス イノセンス こんなんじゃないって奮
い立って
僕は戦う つまりそれが 僕等にとって唯一の免罪符
出典: 爆弾の作り方/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
一人でこもって作る爆弾は、好きなものの情熱の塊。
自分にはもっと出来るんだ、と奮い立たせる心が作り上げる「爆弾」は、自己を表現する強みであり、アイデンティティーでもあり、自分を守る盾にも武器にもなるのです。
許されない僕等が 許されるための手段
傷つきやすい僕等が 身を守るための方法
僕は歌で 君はなにで?
僕は歌で 君はなにで?
出典: 爆弾の作り方/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
「僕は歌」、つまりamazarashiにとっては爆弾は歌ですね。
人によってその爆弾の威力も種類も違っているのです。
障害を吹き飛ばすくらい強いエネルギーを蓄えているあなたの「爆弾」とは、一体何でしょうか?
4:夏、消息不明
夏、消息不明。
猛スピードで4号線を走り抜けた僕らの悲しみは、
情熱の揺らぎによく似た陽炎にスリップして横転。廃車置
場の片隅に放置されていた。
夏、消息不明。
ここ数年姿をくらましていた、僕らのいつかの夏が、
廃ビルの非常階段にもたれながら、タバコを吹かして
「夏が近いな」なんて言った。
出典: 夏、消息不明/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
暑い夏の中に、虚ろげに心の中に漂う虚しさを思う姿が思い浮かびます。
1曲目の「夏を待っていました」の続きのようにも考えられますね。