カバーで12年ぶりに蘇ったケツメイシ最大のヒット曲
毎年、春先になると数多く発表される「桜ソング」。そのなかでも屈指の名曲と言われるのが、2005年2月に発売されたケツメイシの「さくら」です。この曲は2005年のオリコン年間チャートで2位に輝き、ケツメイシ最大のヒット曲になりました。
それから12年後の2017年4月。若手俳優・中川大志と平祐奈のダブル主演映画『ReLIFE』のエンディングテーマとして、蘇りました。実験によって17歳に若返った27歳の男性が、高校生活を‟やり直す‟話。
やがては仲間の前から消える運命にある主人公と、ヒロインをはじめとする仲間たちとの出会いと別れの物語に、「さくら」はピッタリですね。
歌っているのは、19歳のシンガーソングライター井上苑子。サムスンのスマートフォン「Galaxy S7 edge」のCMで流れる「どんなときも。」を歌っているアーティストといえば、ピンと来る人も多いはずです。
名曲「さくら」の歌詞をチェック
メロディーとラップの掛け合いで、今と過去を行き来する想いを表現
この歌はメロディー部分とラップ部分がほぼ交互に入り、掛け合うかたちになっています。
メロディー部分がストーリーを引っ張る「狂言回し」的な役割をし、ラップ部分でこの歌の主人公の思い出が語られます。
メロディー部分は基本的にこの歌詞のみ。
さくら舞い散る中に忘れた記憶と 君の声が戻ってくる
吹き止まない春の風 あの頃のままで
君が風に舞う髪かき分けた時の 淡い香り戻ってくる
二人約束した あの頃のままで
ヒュルリーラ ヒュルリーラ…
出典: さくら/作詞:ケツメイシ 作曲:ケツメイシ
ラップ部分では「俺」がかつて出会い、別れた人との思い出が語られます。
桜の木の下にたたずみながら、あの人の面影や手、声を思い出そうとする「俺」。
春が来れば、桜は変わらず咲いては散っていくのに、あの人の姿は少しずつおぼろげになっていくのです。
2回目の「さくら舞い散る中に~」のあとに入るラップ部分が切ないです。
暖かい陽の光がこぼれる
目を閉じればあの日に戻れる
いつしか君の面影は
消えてしまうよ
何処かへ
あの日以来
景色変わらない
散りゆく花びらは語らない
さくらの下に響いた
君の声
今はもう
出典: さくら/作詞:ケツメイシ 作曲:ケツメイシ
だんだんと思い出がおぼろげになっていくことを受け入れつつも、その思い出を大切にしようとする気持ち。
交錯する想いが、交互に入るメロディーとラップで見事に表現されています。
メロディー部分は「桜の木」目線?
この歌には、もうひとつ短いメロディーが出てきます。
花びら舞い散る 記憶舞い戻る
出典: さくら/作詞:ケツメイシ 作曲:ケツメイシ
歌の中ほどと最後に出てくるこのメロディー。最後の部分は、風に乗って舞い散る桜の花びらが人々に魔法をかけ、記憶を呼び起こさせるような感覚になります。
先ほど、メロディー部分はストーリーを引っ張る狂言回しのような役目と述べましたが、想像をたくましくすると、メロディー部分の歌詞は「俺」を見下ろす桜の木ではないかとも考えられます。
桜の木と「俺」の掛け合いというと、深読みしすぎでしょうか。
アラサーが歌った歌を、10代が歌うと…
ケツメイシがこの曲を出した当時、30歳前後。「思い出がぼやけていく」という感覚にリアリティが感じられる年代です。
今回、「さくら」が起用された映画『ReLIFE』もアラサーの男性が1年間だけ高校生に戻り、またもとに戻る話。
「さくら」の世界観と重なり合うところがありますね。
槇原敬之の「どんなときも。」のカバーでも見せた、胸の奥をわしづかみにされるような切ない声で歌い上げています。
そして、ラップ部分を担当するのは主演の中川大志。
しかしクレジットは役名である「海崎新太」となっていて、27歳の男性の想いという設定です。
「さくら」の世界観やメロディーとラップの関係性が、カバーではより鮮明になっているように感じます。