ヨルシカの『パレード』の歌詞に迫る!
見えていない?塗りつぶされた顔の意味とは
深海にいるような静けさを感じるsuisの澄んだ声が、美しくも切なく聴こえるのはこのMVのせいかもしれません。
アニメーションで描かれた人物と実写の背景を組み合わせたアンバランスさが、とても気になります。
そしてもうひとつ強い印象を残すのが、顔を塗りつぶされた人物です。
実は『パレード』が収録されているアルバム「だから僕は音楽を辞めた」のジャケットにも同様の人物が描かれています。
歌詞の内容と何らかの繋がりがあるのでしょうか?
「君」という存在
身体の奥 喉の真下
心があるとするなら君はそこなんだろうから
出典: パレード/作詞:n-buna 作曲:n-buna
人間の体のどの部分を指しているのでしょうか。
「心」という言葉からすぐに思い浮かぶのが「心臓」です。しかし一般的に心臓は真ん中よりも左に位置しています。
この答えを導き出すためのヒントになるのが、収録アルバムのコンセプトです。
音楽を辞めることになった青年が”エルマ”へ向けて作った楽曲、全14曲を収録した内容となっております。
出典: http://yorushika.com/
『パレード』の歌詞は音楽と密接に関係していると予想できます。
これを加味すると、冒頭の歌詞で歌われている器官は「声帯」ではないでしょうか。
思いを言葉や音にして音楽を作り出す器官が声帯です。
そして「君」は音楽を指しているのだと考えられます。
君は心の中にあるものを、声帯を通して音に変えて表現しているということです。
見えないものこそ真実を抱えている
目に見えないものを「現象」と呼ぶのかは分かりません。
現れもせず象(かたちど)ることもない現象を深く知ろうとするなんて、無謀なことでしょう。
しかし主人公はそれを無謀だとは思っていないのです。
人の体から音が生まれる現象
ずっと前からわかっていたけど
歳取れば君の顔も忘れてしまうからさ
出典: パレード/作詞:n-buna 作曲:n-buna
音を奏でる楽器は世の中に数え切れないほど沢山あります。
オーケストラで使われるもの、おもちゃのピアノ、まだ知られていない少数民族の楽器もあるでしょう。
箱がひとつあれば、それを指で叩くだけで楽器になり得ます。
それらは全て目に見える楽器です。もしも視力が落ちてしまったら、楽器は見えなくなるかも知れません。
目に見えないのに音を奏でることができる楽器、それは声帯や喉です。
しかし「君」が年齢を重ねれば徐々に音域は狭くなり、音が出にくくなります。
人は誰でも、いつか音楽を手放すときがくる。そんな意味を感じます。
身体の奥 喉の中で 言葉が出来る瞬間を僕は知りたいから
出典: パレード/作詞:n-buna 作曲:n-buna
目に見えないのに音を奏でられる唯一の楽器が喉です。
しかし逆に考えると、音を奏でる瞬間を見ることができない楽器だといえます。
高ぶる気持ちを表現するような激しいギターストロークや、体の全ての力を込めるようなピアニストの背中。
これらは目に見えるのに、感情を音や歌に作り変える様子は見えません。
年老いて音が奏でられなくなる前に、音楽を捨てる前に、音楽の創造の時を目に焼き付けたいのではないでしょうか。
主人公自身は、音を生み出すことができないようです。
主人公にはなくて「君」にはある。才能が目に見える瞬間を指しているのかもしれません。