2020年閏年 椎名林檎率いる東京事変 再生
東京事変ティザー映像
2012年、閏年の閏日に解散した東京事変が、閏年の2020年に再生。
閏日に東京国際フォーラムからツアーをスタートさせ、NHKホールで締めくくるという美しすぎる流れです。
公式サイト「SR猫柳本線」で発表されたニュースに驚き、興奮された方もたくさんいたことでしょう。
そして新曲として1月1日に配信リリースされたのが「選ばれざる国民」。
公式YouTubeチャンネルにアップされたティザー映像でも流れています。
オリンピックの開会式、入場行進する選手団に扮したメンバーたち。
どのプラカードにも東京事変の英語表記「INCIDENTS TOKYO」と書かれてあります。
この映像は歌詞を解釈するうえでもヒントになりますので、心に留めておいてくださいませ。
The Lower Classes
浮雲さんが作曲し、東京事変が編曲したサウンドは軽快かつ技巧的。
椎名林檎さんを中心に、伊澤一葉さんと浮雲さんが寄り添うボーカルも聴きどころです。
ベース亀田誠治さん、ドラム刄田綴色さんのグルーヴィーなリズムも健在。
まるで選手宣誓のように歯切れのいい言葉が並ぶ歌詞も興味深い内容になっています。
英語表記だと「The Lower Classes」となるこの曲。
下層階級とはいわゆる「上級国民」の対義語なのでしょうか。
日本語のタイトルも、何に、誰に選ばれない国民のことを表しているのか、気になるところです。
この曲を通して椎名林檎さんが伝えたいメッセージとは何なのでしょうか。
歌詞の意味を探ります。
「選ばれざる国民」の歌詞をチェック!
モバイル社会への警告
終日片手はオンライン
総べてはワイファイ次第
斯く言う生身はオフライン
@TOKYO
晒す理想像 名前を使い分け
匿う本性 削り合うエナジー
ばれ出した素顔 加工を施せ
何も生じない ファンタジー
電波圏内燃料満タン
出典: 選ばれざる国民/作詞:椎名林檎 作曲:浮雲
世界中の情報をキャッチすることも、逆に世界中へ情報を発信することもできるインターネット社会。
非常に便利な反面、長時間インターネットに接続せずにはいられない依存症が問題になっています。
現実生活に支障が出るほどではなくても、スマートフォンなどのモバイル端末を片時も手放せない方も多いはず。
この曲の歌詞の冒頭は、こうしたモバイル社会へのアンチテーゼとも受け取れる内容になっています。
電波がつながらなければネット上で連絡を取り合うことができず大混乱。
ところが現実社会のリアルな人間関係はしっかり築けていない場合があるという話です。
ネット上ではきれいごとを並べることも別名を使うこともできます。
匿名性に乗じた言葉のやりとりに疲れ、素性が特定されそうになると対策をとる有り様です。
電波さえつながっていれば何でもできそうですが、これはリアルではなくバーチャルな世界。
仮想空間でにぎわっても、現実社会では何も起きていないという意味です。
深読みすると、椎名林檎さんは本名とアーティスト名を使い分けています。
ソロ活動と東京事変というバンド活動の違いもあるかもしれません。
大衆性が求められるソロ活動に対し、より音楽性を追求したいという本音が隠せなくなり東京事変を再生させた。
そう想像するのも楽しいでしょう。
薄れる感動
圏外も炎上中刺し違える群衆
善意ほど一瞬で殺意に変わる
熱心なファン皆辛辣なアンチ
センセーション飽き足らない
縺れる男女 痺れかけた粘膜
解れる情緒 忽せのリビドー
馴れ切った作法 惰性で弄れ
何も生じない エクスタシー
出典: 選ばれざる国民/作詞:椎名林檎 作曲:浮雲
椎名林檎さんは歌詞を書くにあたり、ネット上でファンのコメントをリサーチすることもあるそうです。
日常生活が忙しく、朝と夜でまったく異なる発言をするほど移り気な女性が多いことにも着目されています。
その点を踏まえると理解しやすい歌詞になっているのではないでしょうか。
ネット上では華やいで見える人間関係も、刺激を求めるあまり矛盾する発言が多く、形式的な馴れ合いだらけ。
これでは本当の喜びを感じることはできないという話です。
そんな刺激を求めるネット民に対し、否定的でありながらも、恋愛がらみの言葉を多用するサービスぶり。
さすがです。
また、この歌詞は椎名林檎や東京事変における実体験とも取れます。
今や日本の国民は非常にセンセーショナル。
少しの刺激で簡単に炎上し、一触即発ともいえる状況です。
ネットでは揚げ足取りの合戦が続いており、その波は留まるところを知りません。
そんな世の中では、思ったことを正直に話すことすら難しい。
表現者である音楽家にとって、このことは非常に辛い状況です。
特に熱烈なファン。
こういった人ほど、些細なきっかけで手の平を返すと歌詞にはあります。
しかもこちらがなんの意図も持たなくても、勝手な解釈でアンチへと変貌するのです。
エゴサを欠かさない椎名林檎だからこそ、描けるリアルな現状といえるでしょう。
何が善で何が悪かは、もはや解釈の仕方とそれを先導する影響力にゆだねられています。
群衆がそれに踊らされて右往左往する姿を、皮肉をこめて描いている歌詞といえますね。
何を味わうの?
あわよくばワンクリック
ワンタッチワンチャンス
淫らなエクスペリエンス
もっと 鳴呼味わいたい
出典: 選ばれざる国民/作詞:椎名林檎 作曲:浮雲