「私のエンジンは暴発しそうな勢いなの

さあ私を走らせて 突っ走るのを見ていて」

私のクルマのエンジンのお話ではありません。

私のエンジンについて語っているのです。

私のクルマを発進させてというお話ではありません。

私を発車させてと歌っています。

もう私はあなたと恋する気持ちがいっぱいです。

もちろん微笑ましいようなプラトニック・ラブではありません。

これから私はあなたと「Drive My Car」に興じるつもりです。

もちろん隠語の方の意味である「Drive My Car」。

クルマと愛の行為を重ねるのはロック、それも割と激しいロック・ミュージックの伝統でしょう。

クイーンには「I'm love in with my car」という名曲があります。

ハードロックが大好きだった頃のロジャー・テイラーによる名曲です。

ドライヴすることと女性を乗りこなすことに重ね合わせるモチーフ。

いかにも男性性にあふれた少々下品な発想でしょう。

リアーナの「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」は女性の方が積極的な点が新しい要素です。

彼女の楽曲には肉食系女子の要素がいっぱいあふれています。

それは女性も積極的に大人の愛について歌っていいという新しい風潮に則ったものでしょう。

リアーナはこうした風潮をさらに浸透させてゆくような作品を発表し続けます。

女性の解放という議題の中にはこうして女性が愛を先導することの大切さも含まれるのです。

時代は風のように変わりゆくのでしょう。

一晩中ドライヴ

最高の乗り心地を約束

リアーナ【シャット・アップ・アンド・ドライヴ】歌詞を和訳&解説!車好きな彼女と付き合うのは大変!?の画像

Get you where you wanna go, if you know what I mean
Got a ride that's smoother than a limousine
Can you handle the curves? Can you run all the lights?
If you can, baby boy, then we can go all night

出典: シャット・アップ・アンド・ドライヴ/作詞:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner 作曲:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner

「あなたの生きたい場所へ連れ去るわ 私の狙いが分かっているならね

リムジンよりもスムーズな乗り心地を感じて

あなたはたくさんのカーブを乗りこなせるの? すべてのライトを照らすことができるの?

あなたにそれができるというならば 私たちふたりで一晩中突っ走るわよ」

サビの歌詞です。

ドライバーはあくまでもあなたという設定になっています。

あなたに私という女を乗りこなせるかしらと挑発するのです。

リアーナのような女性を乗りこなすなんてどんな自信のある男性でしょうか。

「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」のあなたはどんな人物なのか明示されません

いわゆるリッチマンであることだけが推察できる程度の描写がされているに過ぎないのです。

私はこのあなたに自分は癖のある女であることを示唆します。

しかし乗りこなせるのならばリムジンよりも乗り心地がいいはずと請け負うのです。

草食系男子ならば裸足で逃げ出しそうなくらいの私のグイグイゆく感じを楽しんでください。

夜を徹しての愛の営み、それも私のモデルはリアーナ自身です。

腕に自信がある男性にとっては素晴らしくゴージャスな夜になるでしょう。

しかし多くの男性は怖じ気付くだけかもしれません。

それほど私はあなたのことを試したり煽ったりしてくるのです。

煽り運転は絶対にしないようにお願いしたくなります。

タイトル回収とその意味は

リアーナ【シャット・アップ・アンド・ドライヴ】歌詞を和訳&解説!車好きな彼女と付き合うのは大変!?の画像

‘Cause I'm 0 to 60 in three point five
Baby, you got the keys
Now shut up and drive (Drive, drive, drive)
Shut up and drive (Drive, drive, drive)

出典: シャット・アップ・アンド・ドライヴ/作詞:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner 作曲:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner

「私はわずか3.5秒で0の状態から60マイルへ加速するから

ねえ、キーを手にしているのはあなたなのよ

いまこそおしゃべりはやめてドライヴするのよ

おしゃべりはなしでドライヴしましょう」

タイトルを回収します。

普通のドライヴならば助手席の女性との会話を楽しむのも大切なことでしょう。

しかしリアーナは黙って運転しなさいよと歌います。

私はスーパーカー並の性能があるという自信があるようです。

これはクルマ自慢ではなく、いい女自慢のお話になります。

そしてこうして私から誘っているけれども本当の主導権はあなたにあると暗示するのです。

おしゃべりはやめてというのは、つべこべ文句を並べないでというニュアンスでしょう。

やるときはやるのよみたいなイメージを思い浮かべてください。

一晩中続く夜のドライヴです。

若いうちだからこそできることですので頑張ってと願うしかありません。

「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」はもう初老の男性たちが制作チームです。

ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーといえば音楽界のレジェンド。

その割に若さがほとばしる歌詞で、あくまでもロックにキメています。

ニューウェイヴというよりはオールドスクール・ロックの雰囲気が満載の歌詞です。

何とも興味深い化学反応が起きているのを嬉しく思います。

ギターの大きな音のように

オーヴァードライヴで興奮

リアーナ【シャット・アップ・アンド・ドライヴ】歌詞を和訳&解説!車好きな彼女と付き合うのは大変!?の画像

I've got class like a '57 Cadillac
Got overdrive with a whole lot of boom in the back

出典: シャット・アップ・アンド・ドライヴ/作詞:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner 作曲:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner

「私は1957年製キャデラッククラスの性能があるの

オーヴァードライヴすれば必ずバックで大きな音を出すわ」

私は実際のクルマに関しての知識も相当なものです。

キャデラックはドライバーの憧れでしょうが1957年製のものは最良なのでしょう。

制作チームは音楽界のレジェンドであると同時に相当なお金持ちです。

彼らは音楽性の高さというよりも時代を画したユニークなサウンドでブレイクしました。

ニュー・オーダーは離散と再結集を繰り返すので有名なバンドでもあります。

仲良く作業できたのかなど心配になるくらい人間関係も複雑でしょう。

しかしリアーナのためにこの曲を提供しました。

ギター・ロックでもありシンセサイザーを導入した先駆的なバンドで活躍した人々です。

「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」の大まかな方向性にこの性格が反映しています。

リアーナの楽曲これほどにギターが主張している楽曲は珍しいです。

オーヴァードライヴとはエレキ・ギターの音を歪ませるエフェクターという機材の一種のことでもあります。

歪んだ大きな音を出すことは愛の営みうんぬんよりも曲調とのシンクロを狙ったものでしょう。

音楽というものは絶えず新しいものが台頭してきます。

かつて新しい波、つまりニューウェイヴと呼ばれた音楽も懐かしい響きに変わってしまいました。

リスナーの感覚も刷新されてきています。

それでもニューウェイヴに感じたときめきを覚えている人にとってこの曲は至福です。

やはりギターの音が大きくないと嫌だなと思う人は多くいるはずでしょう。

一方でリアーナに先進性を求める人にとっては時代をさかのぼるスタイルに違和感を覚えたようです。

しかしリアーナという人は常に賛否両論のものを提出するアーティストであります。

いつでも意外性の中で様々な音楽を鳴らしてくれるのです。

クルマ社会じゃないと分からない

リアーナ【シャット・アップ・アンド・ドライヴ】歌詞を和訳&解説!車好きな彼女と付き合うのは大変!?の画像

You look like you can handle what's under my hood
You keep saying that you will, boy, I wish you would

出典: シャット・アップ・アンド・ドライヴ/作詞:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner 作曲:Evan A. Rogers,Carl Allen Sturken,Gillian Lesley Gilbert,Peter Hook,Stephen Paul David Morris,Bernard Sumner

「私のフードの中にあるものをあなたは巧みにハンドル捌きできそうに見えるわ

自分ならできそうだってあなたはいい続けるのね そうあることを私も願っているわ」

もう普通のドライヴの話題じゃないことを隠そうともしていません。

辛うじてクルマの運転と重ねていますが、それよりも艶めかしい言葉の印象の方が勝ってきます

あなたも私の挑発に乗る逞しい男性なのでしょう。

自分なりの自信を私に示しているようです。

リスナーはあなたの気持ちについては私の語りの中から推察するしかできません。

あれだけ私に挑発されて煽られても自信が揺るがないというのは立派なことでしょう。

日本社会に生きる草食系男子にこれだけの自信があれば少子化問題は解決するかもしれません。

しかし日本の若い男性はいまや恋愛どころかクルマを所有することにも興味を示さないです。

そこには深刻な若者の貧困化の問題が横たわっているのでしょう。

私たちは洋楽の歌詞の中でしかリッチな夢を見られません。

1957年製のキャデラックがどんな乗り心地なのか実感はまるでないのが正直なところです。

日本社会にもお金持ちはいます。

要は格差社会が過酷になってしまい、極端な貧富の差が生まれているのです。

それはアメリカ合衆国でもイギリスでも同様のことでしょう。

しかし日本社会は先進国の中でも絶対的に賃金が低いという特徴があります。

アメリカ合衆国で「私たちは99パーセントだ」という運動が起こりました。

1パーセントの富めるものによって99パーセントが搾取されて貧困化しているという主張です。

それでも賃金収入の絶対値を較べるとアメリカ合衆国は日本よりもよほど豊かでしょう。

まだクルマを所有することにも意欲的です。

「シャット・アップ・アンド・ドライヴ」は相対的に豊かな国でこそ実感を伴って消費されます。

マイバッハもお呼びじゃない