BUMP OF CHICKEN通算4枚目のアルバム「ユグドラシル」収録の「太陽」
「太陽」はBUMP OF CHICKENのメジャー2枚目、通算4枚目のアルバム「ユグドラシル」に収録されています。
「ユグドラシル」に収録されている曲は雰囲気も様々です。
「オンリー・ロンリー・グローリー」や「saillingday」をはじめとするアップテンポなロックナンバー。
「車輪の唄」「スノースマイル」をはじめとするラブソング。
そんな曲たちの中「太陽」は異彩を放っています。
「太陽」で描かれるのは絶望や閉塞感、恐怖や影といった比較的重いテーマです。
まるで抽象的な絵本を読んでいるかのような世界観。
難解な歌詞は考えても考えても答えにたどり着くことがありません。
分からないのに、聴くことをやめることができない魅力を内包しています。
光と影の物語「太陽」の歌詞を紐解いていきます。
圧倒的閉塞感
ドアノブが表す希望と絶望
二度と朝には出会わない 窓の無い部屋で動物が一匹
ドアノブが壊れかけていて 触れたら最後取れてしまいそうだ
出典: 太陽/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
「二度と朝には出会わない」という絶望感漂う曲の始まりです。
「朝には出会わない」とは太陽が昇ることはないということです。
もう太陽は昇らない、明日は来ないという深い絶望の中に主人公はいます。
ここで、主人公は自分を「動物」と表現します。
「動物」という表現は人間性の欠如と解釈することもできます。
そしてこの「動物」は「窓の無い部屋」にひとりぼっちでいます。
ドアはありますが「ドアノブが壊れかけていて」触れた瞬間壊れてしまいそうな脆さです。
窓のない部屋にある唯一の出口のドア。
唯一の希望であるドアノブが壊れてしまったら、自分は永遠にここからでることはできない。
主人公に残された希望はドアノブの脆さに比例しています。
そしてドアノブに託された希望は絶望的に薄いのです。
果てしない虚無感
このくらい寒い方がいい 本当の震えに気付かないで済む
不愉快も不自由もない その逆も初めから無い
出典: 太陽/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
主人公のいる窓のない部屋は震えるほど寒い空間です。
「本当の震え」とは精神的な恐怖や絶望感がもたらす震えです。
寒さに震えることで、恐怖や絶望を直視せずに済みます。
心の震えを認めることを拒み、寒さからくる震えだと言い聞かせているのでしょう。
「不愉快」と「不自由」の逆はもちろん、「愉快」と「自由」です。
その全てが無いと言い切る主人公に残るのは果てしない虚無感です。
例えば笑ってみろよ こっちもひたすら笑えるさ
空のライトが照らしてくれた 僕には少し眩しすぎた
そして誰もが口を揃えて 「影しか見えない」と言った
出典: 太陽/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ここでいう笑いとは、楽しい笑いではなく、どこか自嘲気味な笑いです。
笑うことなどもうない、笑っても誰も見てはいないという自分に対する皮肉ともとれます。
「空のライト」とはまさに曲のタイトルである「太陽」です。
太陽が自分を照らした時、人の目に映るのは自分の姿ではありませんでした。
太陽の光が作り出した「影しか見えない」のです。
光と影が作り出す世界で、自分は影の人間だと「僕」は考えているのでしょう。
自分が閉じ込められている暗い空間、自分が内に秘める闇。
影に属する主人公の心の闇が表現されています。
「君」という光
漆黒の闇
二度と朝には出会わない 窓の無い部屋で心臓がひとつ
目を閉じていても開いてみても 広がるのは真っ黒な世界
出典: 太陽/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
冒頭で「動物」だった部分が「心臓」に変わっています。
「心臓」は“生”や“命”の比喩と考えることができます。
目を閉じていても開いていても変わらないような漆黒の闇。
ごくわずかな光さえ、主人公には届きません。
そのような絶望的な状況でもなお、心臓の鼓動を感じ、生を実感しているのです。