かつての自分とは変わってしまった己を思います。
純粋に夢を追っていた時とは赤の他人のように変わってしまった自分。
「お前」が指すのはかつての友とも、かつての己とも取れます。
故郷とはまるで違う街並みに紛れて暮らし、都会に慣れた服装に身を包んで。
いつのまにか都会に慣れてしまった自分。
それはかつての自分から見ればまるで赤の他人なのです。
役割は増えるばかり
新たな役割と
また増えたアカウント
でも忘れたパスワード…
ただボンヤリ泣きじゃくる空見上げ 傘もない
出典: Who am I/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
何をするにもコンピュータやSNSが付いて回る時代。
作品ごとに関係者のアカウントを渡されたり、流行に乗るために別のSNSにアカウントを作ったり。
けれど歳を取った頭では、次々増えるアカウントのパスワードは覚えるだけでも必死。
ささいな悩み、けれどどこか物悲しくなる想いを抱えて雨の降る空を見上げます。
不器用に生きていくしかできない姿。
傘も持たずに雨に濡れる姿にはそんなイメージが重なります。
華々しく活躍しているわけでもないけれど、社会の中での役割は日ごとに増えていく。
それは役者のみならず、毎日を仕事に追われて生きていく大人なら感じたことのあるものではないでしょうか。
SNS時代の苦しみ
顔もしらぬフレンド
身を切るようなヘイト
そんな血の通わぬ言葉になど殺されてたまるかよ なぁハニー
出典: Who am I/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
「フレンド」と「ヘイト」で韻を踏む一節。
「フレンド」は言葉通りの「友達」ではなく、SNS上の「フレンド」を指しているのでしょう。
SNSでつながっているだけで顔も知らない「友達」や「フォロワー」。
人とつながっている実感もないまま、調べてみればそこには暗い悪意が気軽に吐き捨てられています。
吐き出す側は憂さ晴らしのように有名人に叩きつける言葉。
けれど、言われた側は身を切られるように傷つく言葉です。
SNSでの誹謗中傷が問題になっている時代を反映した一節。
デジタルな言葉が人の命を奪ってしまうこともある…。
そんな言葉に殺されずに自分らしく生きていこうと、心の中の愛しい人に呼びかけます。
それは仲間たちでもあり、かつての自分なのかもしれません。
前に進めない日が続いても
朝靄に吐いた唾は置いてくぜ華の都に
腹の足しにもなりゃしないけど
立ち止まり続けるのも悪かないよな
出典: Who am I/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
朝靄の中で愚痴ることがあっても、それはこの都会にそっと置いていきます。
「華」は大都会を指す言葉、東京を思わせます。
同時に「役者としての華」も思い起こさせる言葉。
「華のある人ばかりが活躍する場所」ととらえれば、それは「芸能界」のことも指しています。
前にも進めないし、後ろにも戻れない。
一気に売れることもなければ引退することもない身は、まるで立ち止まっているかのよう。
それ自体が売れる足しになるわけではないけれど、そんな生き方も悪くない。
そう自分を笑いながら街に佇む姿が浮かび上がってきます。
仲間たちと過ごす場所
いつのまにか慣れた場所
Who am I?寒空に
白く濁る息とタバコの味
見慣れた街並みと
色褪せたスウェット
出典: Who am I/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
フックのひとつめは歌い出しと同じ為ここでは割愛して、続く2バース目へ。
冬の空の寒さを感じさせるように息は白く、それはタバコの煙も混ざったもの。
身体に悪い、肩身も狭いと知りながら、なかなかやめられないタバコ。
続けてしまうそれと同じように、いつか慣れてしまった街。
その中で過ごす自分のスウェットも着慣れて色褪せたもの。
いつか抱いていた夢が褪せるように、毎日がいつのまにか色褪せて慣れていきます。