「ワタリドリ」路線?新たな代表曲
「月色ホライズン」は2019年7月にリリースされた[ALEXANDROS](以下ドロス)のデジタルシングルです。
アクエリアスのCMソングとして耳なじみのある方も多いはず。
大ヒット曲「ワタリドリ」の系譜を受け継ぐ名曲といえるでしょう。
ぱっと絵が浮かぶような情景描写の非常に美しい歌詞になっています。
ただ、早口言葉のような日本語もあり、相変わらずの英語混じり…。
美しい表現だからこそ「どういう意味なの?」と謎めく部分もあります。
そんなドロスの新たな代表曲のひとつとなった「月色ホライズン」の歌詞について解説します。
光と闇が表すもの
1番の歌詞には「光と闇を待つ」という印象的な表現が出てきます。
そもそも光と闇は正反対。
この真逆のものを同時に待っている…というところが意味深です。
どのような思いが込められているのか、順を追って見ていきましょう。
東京でぼやく僕
東京はこんなんで
どうもこうもないような日々が
続いているよ
たまの晴れ間に一喜一憂して
過ごしている
熱い言葉はどうも
性に合わないみたいでむず痒いよ
捻り曲がりくねったまま
僕は旅へ出た
出典: 月色ホライズン/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
伸びやかな美声を張り上げるサビが特徴的な「月色ホライズン」。
ところが出だしは早口の独り言のようなぼそぼそとした歌い方です。
さらっと聞き流すと「どこの言葉?何を言っているの?」ととまどうほど。
よくよく耳を傾けると、どうやら主人公の男性はぼやいているわけですね。
東京でのとりとめのない日常。
たまには嬉しいこともあるけれど、悲しいこともあるようです。
「何がどうした」という具体的な事例は挙げられていませんが…。
何気ない日々の暮らしが浮かびます。
そんな毎日を冷めた様子でぼやいているわけですね。
内面の吐露なので、うっかりすると聞き流されそうな歌い方をしていたのでしょう。
ただ、日常のぼやきを歌にするからにはそれなりに意味があるはずです。
ぼそぼそとした冒頭部分で伝えたかった結論は「旅に出た」ということ。
何気ない東京生活から非日常の旅へ。
どこかひねくれた思いを抱えながら、そのまま留まるだけではなく…。
実際に行動を起こしたわけですね。
居場所を探す旅
飛行機の窓から世界を眺めた
昨日が明日と背中合わせて
今でも僕らは
そのどちらかで
迷いながら 居場所はどこ?
って探してる
出典: 月色ホライズン/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
「光と闇」という、この曲のキーワードが出てくるのは続くサビのCメロ。
この相反する言葉につながる表現が、実は先にBメロに登場しています。
それが「昨日と明日」。
主人公の男性は東京を離れ、飛行機に乗って旅に出かけました。
その窓から見えたのは世界。
つまり海外旅行でしょう。
国際線の飛行機に乗って海外へ旅立つと、時差が生じます。
離陸、雲の上、着陸。
飛行する時間帯や渡航先にもよるかもしれませんが…。
窓の外には地球規模の美しい景色が広がったことでしょう。
とくに昨日から明日へとまたぐ瞬間を思わせる、壮大な光景が…。
おそらく地平線が月色に染まっていたのでは?と考えられます。
人は過去の出来事を思い返して悩んだり、未来に希望を抱いたりするもの。
今、現在を生きていても、心の中では「過去と未来」をさまよいがちです。
飛行機から見えた景色に触発され…。
「結局居場所探しをしているなあ…」と実感したわけですね。
矛盾を抱えつつ生きる
僕らには いつまでも
光と闇が待っているの、いるの
Well maybe it's not so bad
(そんなに悪くないんじゃない?)
今をただ生きていく
出典: 月色ホライズン/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
お待ちかねのサビです。
Aメロの「一喜一憂」。
Bメロの「昨日と明日」。
実はこれらが「光と闇」の伏線になっていたわけです。
つまり誰しも喜びと悲しみ、過去と未来といった矛盾を抱えているもの。
光り輝くほど楽しい日もあれば、どんより暗闇に沈み込む日もあります。
「今日から光だけの人生」とか「このままずっと真っ暗な日々」なんてことはありません。
どこまでいっても相反する矛盾、両極端の状態が待ち受けているわけです。
この矛盾を象徴するのが「光と闇」。
おそらく飛行機から見えた、夜と朝が混ざるような景色がトリガーとなって導かれた対比です。
それでも「こんなもんでしょ」と言いながら生きるだけ…ということ。
東京の日常から地球の神秘へ。
一気に突き抜ける爽快感が至妙です。