絶望の淵に咲いた愛
薬物と手を切る決意
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
出典: ウィー・ファウンド・ラヴ/作詞:Calvin Harris 作曲:Calvin Harris
「私たちふたりは絶望の淵で愛を見つけたの
私たちふたりは絶望の地で愛を見出したわ
私たちふたりは絶望の淵で愛を見つけたの
私たちふたりは絶望の地で愛を見出したわ」
ふたりの愛はどうしようもない境遇の中で見つけてしまったものです。
薬物依存症の中で出会って荒涼たる愛を貪って生きてきました。
ふたりで共助しながら薬物と手を切って真っ当な愛を築いてゆくこともできたかもしれません。
しかし実際に薬物との縁を切るのは難しいことです。
欧米ではエクスタシーという薬物では逮捕までには至らないのかもしれません。
利用者があまりにも多すぎるというのがその理由です。
しかし違法薬物は確実に人生を蝕んでゆくでしょう。
また、逮捕されても依存症が改善されるわけではありません。
こうした刑事罰というものは依存症の「治療行為」ではないのですから。
違法薬物に関して売人だけを厳しく処罰して、利用者は罪に問わない国も現れました。
利用者を罪に問わない代わりに徹底的に依存症治療を受けさせることで薬物問題を一掃するのです。
日本社会ではまだまだこうした認識は遅れています。
違法薬物に手を出して逮捕された時点で社会生活や人生が終了してしまう。
そのために依存症がさらに深刻になって再犯を繰り返すのです。
リアーナは薬物が周囲にある暮らしをしていたと推測されます。
しかし逮捕されるようなことはありませんでした。
この「ウィー・ファウンド・ラヴ」のふたりも刑事罰を受けたなどの叙述はないです。
リアーナがモデルと思われる語り手の私は自分自身で過去の愛と決別しようとします。
リアーナのかつての愛へ
絶望の極みで見つけてしまった愛はやはり長続きしないのでしょう。
私たちはどこかで自然との結びつきを心の端に持っています。
ケミカルな錠剤が生む多幸感や悦びに、まがい物であるとの不信感を持つときが必ず来るのでしょう。
また薬物の効用がキレた瞬間の絶望感に耐えられる人はいません。
この絶望感から逃れるためにまた薬に手を出す最悪なサイクルの中で育んだ愛。
こうしたものはやがて破綻する運命があるのです。
リアーナは当時の恋人のクリフ・ブラウンからのDVで顔が腫れ上がった酷い状況に陥りました。
この恋愛を清算するためにリアーナはクリフ・ブラウンとの縁を切ります。
「ウィー・ファウンド・ラヴ」について最初に思い出されるのはこの過酷な恋愛でしょう。
私たちはどのように酷い状況に陥っても明日の幸せを願う生き物です。
絶望の淵で愛を見つけてしまったという言葉自体に過去の愚かさへの後悔が滲んでいます。
リアーナは「ウィー・ファウンド・ラヴ」で完全復帰を目指すのです。
そして世界のリスナーはこの曲をメガヒットに導きました。
善い行いをして信じれば救われるという典型的なエピソードかもしれません。
扉という暗喩
未来から射し込む光
Shine a light through an open door
Love and life, I will divide
出典: ウィー・ファウンド・ラヴ/作詞:Calvin Harris 作曲:Calvin Harris
「開け放たれた扉の向こうから光が輝き出す
愛と人生を私は分けて考えるわ」
扉の向こうというものは旧くから未来に続く道の暗喩でした。
この「ウィー・ファウンド・ラヴ」でも扉の向こうは希望の光が射しこむ世界です。
薬物とは手を切った未来には光射す明日が待っているという描写でしょう。
かつてThe Doorsが知覚の扉を開けと薬物を体験することを暗に推奨した過去がありました。
ジム・モリスン本人はドラッグよりもアルコールの依存症が酷かった人です。
アルコールは合法だから違法薬物に較べて批判されることはあまりありません。
しかし過度の摂取によって死に至るのはドラッグもアルコールも同様でしょう。
彼の人生や愛の有り様も絶望の淵で見つけてしまったものばかりでした。
酩酊するものは不幸な人を囚えて依存症にさせてしまうのです。
扉というモチーフは本当に色々な意味を持ちえます。
明るい未来でなくていいのでしたら違法薬物の経験も扉になりえるでしょう。
そのため訳出や解説には細心の注意をはらいました。
ここでは当初の通り薬物との関係を断った先に扉の向こうから光が射すと解釈いたします。
愛と人生を分けるというラインはさらに難しいです。
あなたへの愛はすぐに捨てされるものではないでしょう。
どうしようもないジャンキーだったり、DV男であっても共依存の関係になると愛は粘り強いです。
それでも私は人生を再生するために薬物やどうしようもない愛を分け隔てることを決意したのでしょう。
「devide」という動詞にはシェアするという意味もあります。
明るい解釈でしたらここは人生と愛をシェアするという意味になりかねません。
しかし全体に漂う不吉なムードを察するとこうした解釈はできない気がします。
ダメ男に背を向けて
Turn away cause I need you more
Feel the heartbeat in my mind
出典: ウィー・ファウンド・ラヴ/作詞:Calvin Harris 作曲:Calvin Harris
「もう背を向けてしまうの なぜって私はもっとあなたを必要としてしまうから
私の心のうちの鼓動を感じてね」
また心を許してしまったなら、すぐ元通りの泥沼に戻ってしまいそうです。
やはりこのふたりはお互いに悪い依存関係にあるのでしょう。
共依存関係にあるのです。
ここは思い立ったままに背を向けてしまわないと関係は断てません。
私はまだあなたに気持ちが揺れている状態です。
しかしあなたは傍から見るとどうしようもないクズなのだと思います。
ドラッグと暴力に明け暮れているようなダメな男。
もう一度、あなたのもとに戻ってしまったならば、また薬漬けの日々が待っています。
私は人生を台無しにしないために心を鬼にしてあなたに背を向けるのです。
これは私が生き残るためにも必要な選択になります。
そんな私の心のうちの鼓動はどのようなものでしょうか。
ハウス・ミュージックでのビートが表す祝祭感とは遠い、胸のうちで悲しく疼く鼓動のことでしょう。
この破裂するような鼓動に触れたならあなたも目を醒ましてくれるかもしれません。
現実に鳴り響く鼓動は私の悲鳴を伝えているのですから。
「ウィー・ファウンド・ラヴ」の生命
Yellow diamonds in the light
And we're standing side by side
As your shadow crosses mine
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
We found love in a hopeless place
出典: ウィー・ファウンド・ラヴ/作詞:Calvin Harris 作曲:Calvin Harris