後戻りはもうできない
イジワルをされる度に
近くなって行った二人
そんな突然マジメな顔しないで
そんなあなたの巧みなワナに迷い込んだ
無駄な抵抗
love trap
出典: 甘いワナ~Paint It, Black/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
街角でちょっかいを出してくる危ないやつ。
しかし、それも男性の計算のうちだったようです。
まだ他人よりも目立つことが大切なことだった若い頃にありがちなことかもしれません。
もう後戻りできない恋愛に溺れてしまいます。
今さら男性が弱気になってシリアスになるのは、少女にとって裏切りのように感じられたのでしょう。
男性が仕組んだ愛の罠を巧妙であったのだから、ずっと完璧に騙し続けて欲しいという想いもあるのかも。
少女にとっては少しくらい危なっかしい要素がある恋愛に惹かれるものなのでしょうか。
大人に向かう階段を一歩一歩と上がっている最中には、こうした傾向が顕著なのかもしれません。
チャーミングな男性はモテる
警戒心を解いた少女を狙った
幼い笑顔に油断してたのか
無防備狙われ
またたく間にあなたの瞳の
底へ突き落とされた
出典: 甘いワナ~Paint It, Black/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
ただ危ない感じの男性でしたら彼女も恋には落ちません。
やはり笑顔はチャーミングな男性だったのでしょう。
「やばい」さが際立つだけではなく、それが魅力になるような男性はやはりモテる。
また「やばい」とは思っていても、笑顔に見られるあどけなさが武器になったのでしょう。
笑顔は人の警戒心を解くには一番のポイントです。
こうして警戒心を解いたところを少女は口説き落とされたのでしょう。
先ほどとやかくいってくる大人たちへの反抗心を見ました。
それはこの「やばい」男性が持つピュアな側面を私は知っているという自信からくるものでしょう。
恋愛というものは関係者がするものではなく、当事者がするものです。
当事者同士でしか分からない事情に立ち入るのはタブーでしょう。
瞳に映るあどけなさに真実を見て彼女は恋の罠に落ちます。
そのことを責め立てることなど親御さんも含めて誰にもできません。
罠を仕掛けた男性にしても彼女に恋したこと自体は責められないでしょう。
本当に悪意だけの罠ではなかったはずです。
愛が動機ならばどんなことも許されるという考え方もあります。
冒頭では危なっかしいと思うリスナーですが、そのうちに若いふたりに任せたくなります
忘れがたい詩的なライン
宇多田ヒカルの文才に脱帽
あなたの鎖が心地良くなってた
あなたの両手に包まれた
蛍のように光っていたい
出典: 甘いワナ~Paint It, Black/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
15歳で書いたとは思えないほどに美しく詩的なラインです。
こうした詩的なラインにあれこれ解説するのは野暮かもしれません。
男性には束縛する傾向があったのかもしれないと思わせます。
一方で少女の方はそうした束縛にこそ、愛されているという自覚をするのです。
初恋に近いような恋愛経験なのかもしれません。
男性の手の中に包まれるホタル。
肉感的な愛の雰囲気も読み解けますが、その点を詩的な描写に昇華しているのが見事です。
宇多田ヒカル、15歳。
この早熟な才能には脱帽するしかありません。
この曲の歌詞のハイライトともいえるラインです。
理性では抑えられない恋心
罠にハマって成長する少女
甘いワナにはまってしまった私
かなりヤバイ状態になってる
甘いワナのとりこになるばかり
甘い・あわい 優しい光
出典: 甘いワナ~Paint It, Black/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
終盤に至っても「やばい」とは何のことかが明示されない歌詞です。
歳頃の少女にとっては大人の恋愛そのものが「やばい」ように感じるという点は先に指摘しました。
猛烈な自分の恋心に冷静な自己自身が追いついていない状況でもあるのでしょう。
意識下の情欲が意識の中で「やばい」感じに沸騰しているのかもしれません。
自分の理性では手に負えないほどの恋心、そして肉感的な愛への没入。
まだまだこれから色々な恋愛を経験してゆく少女ですが、すでにこの愛のことしか目に入りません。
これだけ真剣に誰かを愛せるというのは歳頃の少女に固有のことでしょう。
二度とない青春を生きているのですから、むしろ思う存分に愛を知り尽くして欲しい。
「やばい」と怖じ気付かずに罠にハマって大人の女性に成長できればよい。
そしてこの恋の書き換えようのない美しさは先のラインでも見たばかりです。
このラインでもこの恋愛が淡く優しいものであることが歌われています。
「やばい」とはやはり理性の抑えが効かない状態のこと。
しかし、その罠の正体はクライマックスに至って暴露されます。
いよいよクライマックスのラインを見ていきましょう。