「涙のない世界」の世界観
人間誰しも生きていれば、様々な困難にぶつかり、悔しかったり、打ちひしがれたりと色々あります。
そんな毎日の中で、涙を流す日もあることでしょう。
できることなら、涙を流すことなく、笑顔で過ごしていけることが理想であったりしますが、人生、そんなにうまくいきません。
さてさて、このAAAさんの歌う『涙のない世界』とは、一体どのような世界なのでしょうか?
アップテンポの元気なAAAの楽曲もいいですが、しっとり、どこかせつないメロディーのAAAのバラードもなかなか素敵です。
今回は、そんな『涙のない世界』の歌詞の世界に浸ってみたいと思います。
しばしおつきあいください。
ねえ 躊躇いがちな二人
宙を舞う指がそう触れ合う時
始まりの愛しさを知ったよ
ねえ 正解と間違いの
曖昧な境界(さかい)そう踏み越えていても
きっと誰も分からない
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
切ない感じのメロディーで始まる冒頭部分。
ためらいがち=おそるおそる物事を行う。
恋の始まりは決して情熱的なものでもなく、本当にこの人でいいのかな?
悩みながらも、ふとあなたの温もりを感じた時になんとなく始まった様子が感じられます。恋愛には何が正解で何が間違いかなんて明確な答えはなくて、
(あるのなら知りたいぐらいです!!)
その曖昧なさかい=愛する人との心のひずみが生まれる原因を越えてしまったとしても、その時には誰も気づけないという恋の難しさが表現されています。
君の声に耳を澄ましても
君の笑顔 瞳(め)を凝らしてみても
君の心 触れてみようとしても君に届きはしない
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
君が何を考えているのか、君の声に耳を澄ましてみても、目は口ほどに物を言う・・・
という諺があるように、君の目を凝らしてみても君の想いは僕には全くわからない。
君の心が何を見つめているのか、理解しようと歩み寄ってみるけど一度できてしまった溝は埋められず、
僕のこの歩み寄りの努力は報われることもないという君と僕の心の距離が表現されています。
涙のない世界があるのなら今すぐに僕を導いて
君がいない未来で一人きり
もう二度とめぐり逢えない愛を探してる
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
今までの切ないメロディーとうってかわって、開放的な感じのするサビのメロディー、個人的に大好きです。
君との愛が終わることのない世界があるとしたら、今すぐに僕を導いてほしい=悪いところは全部治すからまたやり直したいという強い願望が表現されています。
君以上に深く愛することができる人を探し求めてみるけど、結局君のことが忘れられなくて一人途方に暮れているような様子がうかがえます。
ねえ 雪の上に刻んだ足跡はまるでそう
時と共に消えてゆく愛しさのようで
ねえ 二人で描いてきた想い出の日々がそう
永遠に続くなんて思い上がりだね
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
雪はあたたかくなるとやがて溶けてなくなってしまいます。
溶けてしまうと、二人で歩んでいた愛しい時間もやがて消えてしまうというような恋の儚さが表現されています。
そして、二人で描いてきた想い出=二人で過ごしてきた日々が永遠に続くと思っていたけれど、
それは都合のいい考えで自分のうぬぼれだということに気付いてしまいます。
”ねぇ”という呼びかけより、君に語り掛けているような様子も伝わってきます。
叫び声は風に消えてゆく触れてみても冷めた感触だけ
その名前を何度も呼ぶよ いつか君に届く時まで
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
自分の気持ちを君に伝えたくて叫んでみても君に届くこともなく、君に触れてみてもあの時のようなあたたかい反応はなく、
君の心の中を映し出すかのように、冷めた態度しか感じられない。
どうにかこうにか、もう一度君の心を取り戻したくて届くことはないのかもしれないけれど(あきらめたらそこで試合終了!)
わずかな望みにかけていつの日か君にこの想いが届き、また振り向いてもらえるように君の名前を何度も何度も呼んでいます。
涙のない世界があるのなら今更でも君と行きたい
幻覚(まぼろし)でもただの夢でもいい
もう一度あの日の君に微笑んでほしい
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
君を失ってこんなにつらい世界に生きていかなければならないのなら、君との愛が永遠に終わることのない世界に行きたい。
”今更”には、”今となっては遅すぎる”という意味があり君との心の距離が、修復不可能なまでに離れてしまったことへの後悔が強くあらわれています。
まぼろしでも夢の中でもいいからもう一度だけでも、あの日のようにまた君に微笑んでほしいという願いも表現されています。
当たり前にそこに見えた景色を雪が白く汚しては消えた
何万回も抱きしめた言葉にもあの日の体温はもう無いよ
色も味も匂いも何もかも失ったこの街のように
出典: 涙のない世界/作詞:森月キャス 作曲:日比野裕史
当たり前のようにそこに見えた景色を雪が白く汚しては消えた。
雪はロマンチックで、素敵なものに例えられることが多いイメージですが、ここでは、雪が白く汚して消えたとマイナスの表現で登場しています。
君とうまくいかなくなり始めたのが、雪の降る時期だったのでしょう。
何万回も愛を確かめ合った言葉も体温を持たず=愛は死んでしまった、愛は終わってしまったことを意味しています。
君のいない生活は生きている価値さえもないほど、色も味も匂いも何もかもない空虚なものであると、表現されています。