GLIM SPANKY「こんな夜更けは」
伝統的なロックやブルース等をベースとしつつ、今の時代の空気を反映させた独自のサウンドを作るGLIM SPANKY。
今回ご紹介する彼らの楽曲は2020年6月24日に配信リリースされた「こんな夜更けは」です。
新型コロナウイルス感染症の影響により、メンバー各々の自宅で録音し制作された楽曲です。
ゆったりとした力強いリズムからは彼らの自分らしさを貫く姿勢が感じられます。
また、キャッチーなサビは何度も聴きたくなるような中毒性のあるものです。
この時期にリリースされたということは、楽曲にも彼らなりに当時の世界の状況への気持ちが表れていると考えられるでしょう。
今回はそんな「こんな夜更けは」の歌詞に注目し、その意味の解釈をお届けします。
深夜の出来事
切ない夏の夜
夜が窓から入り 漂った夏の匂い
ちょっと人恋しい コーヒーを甘くしよう
出典: こんな夜更けは/作詞:松尾レミ 作曲:GLIM SPANKY
まず冒頭の歌詞では夜を1人で過ごす主人公の姿が描かれているようです。
また1行目の言葉からこれが夏の出来事であることが分かります。
夜に自室で窓を開けて夏の匂いを感じながら感傷に浸っているのでしょう。
2行目からはそんな孤独な状況によって、寂しさを感じていることが分かります。
突然寂しくなり、誰かに隣にいて欲しいと考えているのでしょう。
しかしながら、主人公にとっては今そんな孤独を埋められる状況にはないということが分かります。
甘い珈琲を飲むという行為は主人公にとってそれが自分を癒すためのものであるのでしょう。
些細なことも伝えたい
陽が長くなって嬉しいことも
背伸びをして買った洋服も
知ってほしいよ いつか伝えよう
そわそわと考えてる
出典: こんな夜更けは/作詞:松尾レミ 作曲:GLIM SPANKY
この歌詞パートでは主人公が誰かに対して伝えたいことをあれこれと考えている様子が描かれています。
特に1、2行目ではその伝えたいことの内容が書かれているのでしょう。
その内容というのもそこまで重要なことではなく、どちらかというと些細なことであることが分かります。
主人公がそんな些細なことを伝えたいと思うことから分かるのは、その相手がどのような人物であるか。
主人公にとってその誰かはそれだけ精神的な距離の近い人、もしくは距離を近づけたい人なのでしょう。
4行目では、主人公の落ち着きのなさが分かります。
恐らく主人公はこの誰かに対して好意を寄せているのでしょう。
1行ずつ読み解いていくことで、このパートでは寂しい夜に好きな人のことを考えている女性を描いているのだと分かります。
音楽と夜更け
夜更けに募る想い
こんな夜更けは君に会いたい
君に会いたいと そっと思った
こんな夜更けは話したくなるのさ
電話じゃ駄目なんだ
出典: こんな夜更けは/作詞:松尾レミ 作曲:GLIM SPANKY
前述までの歌詞パートでの好きな人への主人公の気持ちがこのパートで明確に表現されています。
このパートは楽曲のサビに相当する箇所であり、主人公の胸の高鳴りとキャッチーなメロディがシンクロしているかのようです。
特に1行目では、タイトルでもある「こんな夜更けは」というフレーズが使われています。
このことからこの楽曲においての歌詞の重要性で、このパートが占める割合が大きいことが分かるでしょう。
彼女はどうして深夜に「君」のことを恋しく思っているのでしょうか。
その理由は、冒頭の歌詞にもあったように孤独な夜という状況が「君」への気持ちを更に増幅させているからなのでしょう。
寂しさが募るその時間帯に、まだ外が明るい間は抑え込んでいた気持ちが抑えきれなくなっているのが分かります。
主人公にとっての「君」という存在の大切さが分かる表現となっています。
4行目では、電話ではなく顔を見て話がしたいという彼女の気持ちが間接的に表現されているのでしょう。
音楽に包まれて
音楽を流そうよ
ロウソクに火も点けた
こんな時間もいいな
ベイカーの甘い声
出典: こんな夜更けは/作詞:松尾レミ 作曲:GLIM SPANKY
このパートではそんな孤独を忘れようとするかのように、部屋で音楽を流し始める主人公。
ゆったりと流れる時間の中で感じていた感傷を振り払うかのように、独りの時間を楽しもうとしている様子が窺えます。
3行目では、まるで自分自身にそう言い聞かせるかのように今の状況を肯定してみせています。
4行目の「ベイカー」というのは誰のことを表しているのでしょうか。
「ベイカー」から連想される名前としては、20世紀に活躍したジャズミュージシャンであるチェット・ベイカーがいます。
トランペッターでありながら、ボーカリストとしても活躍した彼の楽曲を流しているのでしょう。