人生の悲哀をサラリーマンの日常の日常にのせて描く桑田佳祐の名曲
桑田佳祐さんの楽曲は、歳を重ねるにつれ人生の哀愁を表現したものが多くなってきました。
もちろん、ロックバンドとして活躍した若い頃の勢いも健在。
いわゆる「桑田節」も消えてはいません。
その中になって「金目鯛の煮つけ」は、サラリーマンの哀愁が漂う人生の応援歌といえるでしょう。
小さな家庭の幸せの中に、明日の幸せを信じる勇気と希望が込められています。
この楽曲は、損害保険会社SOMPOのCM「腕まくり編」にも起用されました。
桑田さん自身も出演しています。
テレビで耳にする有名なフレーズは、どこか懐かしく心に沁みますね。
ここでは「金目鯛の煮つけ」の歌詞の意味を深読みしてみました。
厳しい社会の中で懸命に生きていく
現在では、ニュースも暗いものばかりで人々に重くのしかかってくるようです。
この物語の主人公も、会社と家の往復の毎日を重く辛く感じています。
明るい未来はやってくるのでしょうか。
毎日の繰り返しの中で
家路遥かな 帰り道
黄昏色の 雲は流れ
満員電車に ゴトゴト揺られて
駅裏に 掃き出された人ごみ
出典: 金目鯛の煮つけ/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
一日の仕事が終わり、いつものように家路へ向かう主人公。
満員電車という言葉が、毎日仕事に通うサラリーマンの悲哀を象徴しています。
夕暮れが夜を連れてきて、今日もいつもと同じ家路を歩く。
毎日同じことの繰り返しは、心身ともに疲れるばかりです。
仕事に追われる日々は、刺激も少なく気が滅入ることばかりでしょう。
家へ帰る道が遠く感じ、足取りも重い。
今日一日の仕事を思い出して、思い通りにいかなかったことを悔やんでいるようです。
夢や希望はどこかに置いてきた
夢も希望も胸に
生きてたつもりが
何処かで失くした モノばかり
出典: 金目鯛の煮つけ/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
最初は夢を持って会社に入り、仕事に情熱を燃やして生きてきました。
長い会社生活に流されて、夢や希望に燃えた若い頃の思いを失くしたのでしょうか。
本当は、失くしたのではなく忘れているだけかもしれません。
失くしていなければ、いつの日か思い出し、再び希望に燃えるときが来る可能性があります。
「モノ」とカタカナで表現しているのは、失くしたものが希望や夢など目に見えないものだからです。
辛いことも多いけれど前を向こう
胸が切ない 夜もある
俯(ウツム)かないで
家(ウチ)へ帰ろう
出典: 金目鯛の煮つけ/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
仕事で大きな失敗でもしたのでしょうか。人生、良いことばかりではありません。
一度ネガティブな思考にとらわれると、中々抜け出せないのです。
主人公は、人間関係やハラスメントに悩む中堅サラリーマンなのでしょう。
辛い気持ちに支配されそうですが、下を向いてばかりではいられません。
愛する家族がいるからです。
家に帰ることだけを考えて、無理やり前を向こうとする主人公の心情が歌詞に表れています。
偶然見かけた金目鯛の文字
金目鯛
静かに時間(トキ)が 通り過ぎる
出典: 金目鯛の煮つけ/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
SOMPOのテレビCMでは、帰宅途中に偶然金目鯛の文字を見かける姿が映し出されています。
主人公は、いつもと違う夕食でマンネリ化した生活にアクセントをつけようと考えました。
高級魚の金目鯛が食卓に並んでいて、家族が喜んでいる姿を想像します。
普段と違う行動をとることは、気持ちを前向きに切り替える有効手段です。
魚屋で買った金目鯛を手に、昨日までと違う思いで家路に向かいます。
長く感じていた家までの道のりも、誰にも邪魔されない自分だけの大切な時間になりました。