身を寄せたのは
同じ行動でも状況によって意味が変わってくるものがあります。
温かかったはずの行動も冷たい行動になってしまうこともあるのです。
変化した暮らし
「いつから側に居たの?抱いてほしいの?」
答える術も無いから ただ 身を寄せたよ
少しはあったかいかな
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
「」の中は彼女の言葉です。
夢に気づいた彼女が自分のもとへと引き入れます。
もともと夢は彼女の中にあったのですから引き入れるというのもおかしな表現ですが。
そうして引き入れて彼女の暮らしにも変化は訪れます。
目標を持つと日々の生活に張り合いが出るのもよくあること。
張り合いが出れば心の中もどこか温かくなります。
何も持っていない空虚な状態ほど冷たいものはないですから。
それだけをすることはできない
「少しも 離れないの よく懐いているの」
忘れられたくないから ひたすら身を寄せるよ
それで 覚えていてくれるなら
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
こちらでも身を寄せていますがなんだか状況が違います。
最初の時は理由もなく側に居たいから身を寄せたように思えました。
しかし、こちらでは忘れられたくないからと消極的な理由で身を寄せています。
あらゆるところに連れて行ってたくさんの人に見せびらかして。
そこまで夢中になっているはずなのに忘れられてしまうことを恐れるのは。
もうすでにその兆候が出ていたからかもしれません。
人はひたすらに夢を追うことだけにかまけていることはできないのです。
名は体を表す
名前はそのものを表す大切な宝物。
そして、誰かに呼んでもらうためのものです。
誰にも認識されず呼ぶこともされなくなったら。
それはいったい何になるのでしょうか。
片隅に置かれて
寂しくはないよ 君と居られるから
ただ 名前を呼んでくれる事が
少しずつ 減ってきた
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
名前を呼ぶことが少なくなってきたということは思い返すことが少なくなってきたということ。
人には日常があります。
その日常の中では人は好きなことだけができるわけではありません。
したくないこと、嫌なこともやる必要があります。
そんな中で夢とだけ向き合うわけにはいきません。
そうして他のことに気を取られ忙しさに振り回され。
あんなに心を寄せていた夢にさえ心を砕く時間が無くなっていきます。
そうして夢は埃をかぶっていきます。
何ものでもなくなっていく
生まれた時は 覚えてないが 呼吸はしていた
既に 名前とは 懸け離れた 姿にされていた
自分の色と動き方を忘れてしまった
彼女もいつか 付けた名前を忘れてしまった
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
彼女が大切に付けた名前。
その名前からは連想できない姿になってしまった夢。
「されていた」なのだからその姿は「夢」自身の産物ではなく。
彼女の行動の結果に他なりません。
夢というのは輝かしいものですがそれに付与する感情は輝かしいものだけでなく。
他の人と比べた時の嫉妬や劣等感、上手くできない自分への嫌悪、よりよく見せたい見栄。
そういった負の感情もついて回ります。
加えて生みの親である彼女にも忘れられてしまった夢。
名前のない物は何物でもなくなってしまうのです。