元ネタが気になる?『Orphans』について
2014年12月発売のシングル
東京都で結成された3人組バンド「cero」。東京都ということもあり、そのサウンドからは洗練された都会的な印象を受けます。
それでいて、この世界とよく似た「パラレルワールド」を感じさせる不思議な歌詞はとても親しみやすいもなのです。
ceroというバンドが奏でる音楽は、彼らにしかできない唯一無二のポップサウンドといえるでしょう。
そんなceroの2014年12月に発売されたシングルが『Orphans/夜去』です。
ブラックミュージックのテイストを感じさせるやわらかく甘いサウンドによって、とても気持ちの良い名曲に仕上がっています。
はじめてceroの音楽に触れるという方にもおすすめしたい1曲です。
この曲は、ギターの橋本翼がceroではじめて作曲を担当しました。橋本翼はジオラマシーンとしてソロでも活動していますので、意外な気がします。
ceroの曲の中としては珍しくストレートな印象を与えるのは、彼が作曲をしたことも関係していると思います。
アルバム『Obscure Ride』にも収録
『Orphans』は、2015年5月に発売されたアルバム『Obscure Ride』にも収録されています。
このアルバムはceroの思い描くブラックミュージックが存分に感じられる格好良いアルバムです。
『Orphans』を気に入った方は、ぜひこのアルバムも聴いてみてくださいね。名曲『Yellow Magus』のアルバムバージョンは必聴です。
歌詞の意味を解釈
次に、『Orphans』の元ネタになったと噂される私小説や、気になる歌詞の意味について紹介します。
元ネタはこだまの私小説?
(別の世界では) 2人は姉弟だったのかもね
(別の世界がもし) 砂漠に閉ざされていても大丈夫
出典: Orphans/作詞:高城晶平 作曲:橋本翼
この曲の作詞を手がけたのは髙城晶平です。以前に書いた歌詞を曲に乗せてみたところ、ぴったりとはまったと語っています。
この歌詞は歌にしても面白くて、文章としても面白いという「強度のある歌詞」を目指して、とりあえず書いてみたものなのだそうです。
ある種の世界を構築するような、作家的スタンスで書いた作品だといいます。
また、影響を受けたのはこだまの下記の実話をもとにした私小説なのだそうです。
髙城晶平はこの私小説の「本当は血の繋がった兄弟だから、神様が間違いが起こらないように細工した」というくだりに衝撃を受けたといいます。
そして、髙城晶平はこだまにこの私小説を歌にするというDMを送ったというのですから驚きです。
「2人は姉妹」という歌詞からは、このエッセイの影響が強く感じられますよね。
クラスメイトを弟のように感じる「わたし」
終日 霧雨の薄明かりが包む 白夜の火曜
気が狂いそうなわたしは家出の計画を実行に移してみる
出典: Orphans/作詞:高城晶平 作曲:橋本翼
「白夜の火曜」という歌詞から、私たちの普段の生活している世界とは異なる世界が想像されます。
白夜は夜も太陽が沈まない現象です。グリーンランドやロシアなど北極圏の近くの国や、南極圏の近くでも見られます。
昼も夜も違いがなく、どんよりとした霧雨の天気であれば「気が狂いそう」なこともうなづけます。
そのような気持ちを晴らすために、家出を実行することにしたのです。
冴えないクラスメイトが逃避行のパートナー
彼は無口なうえにオートバイを持っていたから
出典: Orphans/作詞:高城晶平 作曲:橋本翼
家出のことをここでは「逃避行」と呼んでいます。現実から逃げるという意味でしょう。
「冴えない」「無口な」クラスメイトがその逃避行のパートナーです。
物静かで邪魔にならず、「オートバイを持っていた」のでどこかに行くのにちょうど良い存在だったのだと思います。