自由であることは恐怖

BUMP OF CHICKEN【(please) forgive】歌詞解説!なぜ自由になるのが怖い?の画像

心はずっと もうずっと
絶え間無く叫んで 私を叫んで
たとえ耳を塞いでも 聴こえてしまうんだ
ただ怖いだけなんだ 不自由じゃなくなるのが
守られていた事を 思い知らされるのが

出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

頭脳で考えるよりも正直なのが人の心です。

これまでは低調であることに諦念を覚えてなすがままに任せる姿が描かれていました。

しかし、このラインで「私」の心の奔流が激しく私たちリスナーのもとにまで押し寄せてきます

平静を装って生活を変える気はないと強がっていたのは頭脳

しかし、心の方は何かしらの変化を激しく欲しています

心が自分自身に叫びを送り続けているのです。

頭脳は「私」が自由になることを怖がっているよう。

自由とはあらゆる決定・選択を自分自身でくだすことです

不自由なうちはこうした勝手な選択は許されません。

しかし、その分不自由であるがゆえに庇護されている状況に自分の身を置けます。

命令や強制のもとでは「私」の選択に関しての責任は問われません。

しかし、自由になって自分の意志で世界を切り拓いていく身には、その都度、様々な厳しい目に曝されます。

自由な社会でこそ、その成員が自らの自由を大きな権威に自ら預けてしまう傾向が生まれるのです。

ナチズムがワイマール憲法という先進的な法制のもとで育ったことを思い起こしてください。

社会心理学のエーリッヒ・フロムが名著「自由からの逃走」で解明したことでもあります。

学校や職場での拘束・強制のもとでは不自由と引き換えに日々の生活の安定を得られました。

自身の主体性を大きな権威に預けて生きることで庇護を得る。

そのことに慣れきった「私」は、しかしその重圧の中で心が悲鳴を上げていることに気付きます。

こうした不自由をよしとせずに心の命ずるままに自由を求めること。

それが「(please) forgive」の大きなテーマです。

盲目で疎外された人生

行方不明の迷子になる

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自分で選んできたのに 選ばされたと思いたい
一歩も動いちゃいないのに ここがどこかさえ怪しい

出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

「私」による主体的な決定・選択であった人生。

それを誰か他人によって誘導されたと思い込めたならば、「私」は人生を背負わないでいられます。

「私」の人生であるのに、「私」が疎外された生活を生きる

これは意外に楽なことなのかもしれません。

しかし人生に対しての真摯な態度を捨てた「私」は自分の居場所までも見失ってしまったのです。

主体的な決定・選択をしていることから目を背けて誰かの意図で今の人生があると思い込んでいた。

その結果、迷子になったような心境に陥る。

主体性を他者に預けることの怖さが歌われています

「あなた」には自由を

「私」はどこにも行けない

BUMP OF CHICKEN【(please) forgive】歌詞解説!なぜ自由になるのが怖い?の画像

あなたを乗せた飛行機が 私の行けない場所まで
せめて空は泣かないで 優しく晴れますように

どこまでごまかすの 誰に許されたいの
頭はきっと嘘をつく

出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

不自由に甘んじてしまっていた「私」は、せめてもの自由な飛行を「あなた」に託します

自由に空をゆく「あなた」の旅路が穏やかであることを祈っているのです。

「私」は自身の限界をすでに決められたものとして考えているので羽ばたけません。

しかし自由な「あなた」ならば行き先を自身で決めることができるのです。

藤原基央は「あなた」に正にリスナーひとりひとりの想いを乗せているのかもしれません。

大切な人であり、自由を享受できる人へのせめてものエールです。

一方で「私」の方は自分の心を誤魔化すことに懸命になっています。

そのことにすでに「私」は気付いているのです。

自分自身に厳しい問いかけをします。

なぜ自分の心の叫びに耳をふさぐのか。

「(please) forgive」、この心模様は誰に向けてのものなのか

心に従えばいいと「私」も分かっています。

しかし、簡単にこれまでの生活習慣を変えることができません。

頭脳で様々な言い訳を用意してしまうのです。

これでは鬱屈した日々から脱却できずに、まだまだ心に負担を掛け続けてしまうでしょう。

それはとても恐ろしいことです。

心だけが自由を求めている

押さえつけられない心の悲鳴

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心はきっと もっとずっと
遠くを見ていて 近くに見ていて
閉じた瞼の裏側に 映してしまうんだ
まだ憧れちゃうんだ 自由と戦う日々を
性懲りもなく何度も 描いてしまうんだ

出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

騙し続けていた心はしかしいつしか制御不可能になってゆきます。

頭脳の方は近視眼的に日常を守ることしか考えないです

しかし、心はもっと自由を欲しています

「私」の行動半径を超えて旅立つことができるのが心というものです。

瞳を閉じると思い描かれるのはもっと自由な生活

自由とは過酷な日々を伴うかもしれません。

何でも自分の心の思うままに生きることは、社会の制約との闘いの日々になります。

頭の方は冷静にそのことを「危険」であると判断してしまうでしょう。

ただし、そうして頭で心を押さえつけていると胸の内は悲鳴であふれてしまいます。

自由とは過酷な責任を背負って生きることでもあります。

そのことに怯えてしまっているのが「私」の頭脳です。

心の方はそうした制約こそが重荷であると叫んでいます。

素直に憧れてしまう大空を自由に行き来する人生。

心が欲するものに忠実である方が健康的なのですが、それは一種の賭けにもなってしまうのでしょう。

「(please) forgive」は紛れもなく私たちの社会そのものを描いています

震えながら未来を拓く