aiko『透明ドロップ』の歌詞をピックアップ!
2014年リリースの11thアルバム「泡のような愛だった」に収録されています。
aikoといえば恋愛ソング。『透明ドロップ』も例外ではありません。
更にいえば失恋ソング。これもまたaikoの曲では珍しいものではありません。
失恋の切なさを軽快なリズムに合わせてサラリと歌い上げる。
しかしその歌詞の中にはあまりにも現実的な恋の経過と重い結末が描かれています。
悲しみに折り合いをつけて前を向こうとするけれど、そこから軋むような音を感じてしまう『透明ドロップ』。
歌詞の世界を紐解きます。
いつまでも残る飴玉の味
彼のことを早く忘れようと思えば思うほど、様々な記憶が蘇ってしまいます。
少し強がっている女性の姿がリアルです。
忘れるのなんて簡単
いつでも戻れるよあの頃の自分に
だって振り向いてくれた事が奇跡なんだもん
出典: 透明ドロップ/作詞:aiko 作曲:aiko
この恋は、叶うはずがなかった。まさか叶うとは思っていなかったようです。
もしも時間が2層に分かれているのなら、下の層には変わらない日常が流れています。
そして恋が叶ったとき、それまで空っぽだった上の層に彼との時間が付け加えられました。
魔法にかけられたシンデレラのように、特別な時間はいつか終わりを迎えます。
普通なら、その終わりを迎えないように、考えないようにするはずです。
2人の時間は永遠で、このまま死ぬまで一緒にいられたらいい。
2層の時間がいつの間にか混ざり合ってひとつの時間になればいい、と願っていたのではないでしょうか。
しかし時間は混ざり合わず、積み木を取り除くように彼との時間だけが消えてしまいました。
1だったものが2になった、それがまた1に戻っただけ。
前向きな言葉のように思えますが、実際は必死で自分に言い聞かせているのでしょう。
でも、ずっと一緒にいたいと願った事実は消えないはずです。
思うだけの生活に今ならきっと
そんなに苦しまないで戻れるよ
出典: 透明ドロップ/作詞:aiko 作曲:aiko
この歌詞から、彼への恋心を綺麗さっぱり捨てようとは思っていないのだと分かります。
忘れられるはずがない、と感じているのかもしれません。
片思いの積み木に、彼の積み木が重なっただけ。だから上の積み木がなくなれば片思いに戻るだけ。
とても簡単なことのように歌っていますが、簡単に元通りにならないのは分かっているようです。
多少は辛い思いをするだろう、と覚悟していることが読み取れます。
飴は溶けても味は残る
こんなに見えなくなったから
あなただけが頭の中に心の中に舌の後ろに
出典: 透明ドロップ/作詞:aiko 作曲:aiko
それでも時間が経つごとに忘れつつあると彼女は言いますが、実際はどうでしょうか。
今まで彼と過ごした景色の中から消えたのは、彼の姿。
しかし、彼が使っていたマグカップは残っているかもしれません。
彼が借りてきたDVDのレシートが残っているかもしれません。
例え彼の存在を忘れられたとしても、思い出は残ってしまうのではないでしょうか。
これは「舌の後ろに」という歌詞でリアルに表現されています。
飴玉を舐めていると少しずつ溶けて形がなくなりますが、甘さはしばらく残るはずです。
舌には味を感じる細胞があり、舌の奥の方にある細胞は「苦味」を察知します。
舌の先端を「前」、奥を「後ろ」と表現するのであれば、彼女が感じているのは苦味なのかもしれません。