どうしようもない心

気配だけで超えられるから
柵や秩序の甘えは 君がいて水になる
色のない輝きを追うばかり
気にしてしまう距離が 僕にだけでありますように

出典: 君がいて水になる/作詞:ACAね 作曲:ACAね

君の存在を感じられる。それだけで、主人公の気持ちは高ぶり歯止めが利かなくなってしまいます。

世間のしがらみや、正しいと望まれる決まり事。

君の前ではそれらは全て消えてなくなり、取るに足らないものとなります。

君の存在を追ったところで、待ち受ける未来は色鮮やかで幸せに満ちたものではない。

それも分かっているのです。

それでも主人公は君へと手を伸ばさずにはいられませんでした。

こんな風に未来や君の本心が気になってしまう。

二人の心の距離を感じているのが自分だけであるように、そう主人公は願っています。

君は何の疑念も抱かずに、ただ純粋に自由な気持ちのままで側にいて欲しい。

自分の存在が君の心を曇らせる要因にならないようにと願ってるのです。

流れる小舟

小さな船流れ出す ただ力の抜けた光る方へ

出典: 君がいて水になる/作詞:ACAね 作曲:ACAね

流れ出す船は二人の関係を表しています。

柵は水の流れをせき止めるための小さな堤防です。

溜まっていた水はせき止めるものが無くなれば勢いよく流れていきます。

その上にあった小舟は当然、流れに乗って動き出すでしょう。

激しい水の勢いのまま、どんどん船は進んで行きます。

進んだ船は、もう元の場所には戻れません。二人の関係、主人公の気持ちも後戻りができないのです。

己を偽る主人公

普通への憧れ

鮮やかなフルーツに毒を吐いて
習ったばかりの嘘を挟んで
食べ尽くすことで どうにか立っている

出典: 君がいて水になる/作詞:ACAね 作曲:ACAね

美しく瑞々しい果物は世の中の恋人達の例えです。

主人公の恋愛はそんな綺麗なものとはかけ離れた後ろめたいもの。

自分たちの関係もそうであればいいのに、そう想うと真っ当な恋人達が憎らしく思えてきます。

二人の関係を誤魔化すために慣れない嘘をつく主人公。

その嘘は周りだけでなく、自分の心に対してでもあります。

美しいもの、真っ当な恋への憧れる気持ち。その気持ちに蓋をして、自分の本心を誤魔化し、現実を飲み込む。

そうすることでどうにか主人公は普通であろうとしているのです。

君の理想であろうとする

変な言葉使う僕でいなきゃ
交わることない 類いにはまって
君を逸らして 傷を抉って
磨り減った心で 歌を歌って
君が笑うなら 僕も笑ってみるよ

出典: 君がいて水になる/作詞:ACAね 作曲:ACAね

主人公は無理を重ねてゆきます。

君の気を引いて近づく為に、本当の恋人になる為に、おかしな言動を繰り返して偽りの姿を演じているのです。

普通であれば関わることもないであろう人達、おそらく君と親しい人達でしょう。

その輪に入り、親しくなっていきます。

すべては君の気を引くための行動でした。ですがうまくはいかなかったのでしょう。

主人公の努力むなしく、君の気持ちは遠ざかり、主人公は自分の立ち位置を痛感するのです。

そうやって心を疲弊させながら、主人公は歌を歌います。それはおそらくこの歌そのものなのでしょう。

それでも主人公は君を想うことを止めはしません。

君の側にいられるなら、心を偽ってでも、無理をしてでも笑っていようとするのです。

主人公の心

君への想い

カシス色の髪が揺れている

出典: 君がいて水になる/作詞:ACAね 作曲:ACAね

恋い焦がれる君の姿を思い浮かべているのでしょうか。鮮やかな色に染まった長い髪が揺れています。

カシスの花言葉は「あなたの不機嫌が私を苦しめる」、「私はあなたを喜ばせる」です。

君の心の動きひとつで大きく揺れ動く主人公の気持ち。そしてなによりその根底にある想いなのでしょう。

主人公はただ、君を喜ばせたいだけなのです。