噛めば噛むほど味が出る「ずっと真夜中でいいのに。」の歌詞の世界

【ずっと真夜中でいいのに。/正義】歌詞の意味を徹底解説!本当の正義ってなんだろう?距離感って難しい!の画像

抽象的な表現、比喩、言葉遊び。

日本語の良さを余すところなく用いるうちに、歌詞の意味輪郭を帯びてくる不思議な楽曲

「ずっと真夜中でいいのに。」が生み出す曲に共通する魅力といえるでしょう。

今回はその魅力がたっぷり詰まった『正義』歌詞をご紹介します。

可愛らしい歌声で綴られるリアル

人の声はこれほどまで自在に操れるものなのかと驚いてしまいますね。

愛らしく柔らかな声音はまるで絵本の世界を歌っているかのようにも聴こえます。

しかし実際はどうでしょうか。

詩のように美しい言葉の裏には、とてもリアルな人間関係が描かれているようです。

ボーカル・ACAねが描く『正義』の世界を紐解きます!

読み替えが鍵

そのまま読むと解釈が難しい歌詞から始まります。

適宜漢字に変換したり別の漢字を用いることで意味が見えてくるのかもしれません。

忍び寄る「今日」の気配

つま先だって わからないのさ
そっと芽を合わして仕舞えば
仕舞うほど花びら散って
ただ体育座りして 抗ってる君と並んで
手を振る今日は 僕と君に近づきたいから

出典: 正義/作詞:ACAね 作曲:ACAね

冒頭、背伸びをしているのでしょうか。今より高い目線で何かを見ようとします。

少し大人びた考え方をしてみた、とも読み取れますね。

そこで目が合うということは相手は年上の人なのか、もしくは大人びた人なのでしょう。

相手の考えに合わせよう、相手の立場に立って考えてみようと努力をしているようです。

しかしその努力も虚しく、相手を理解しようとするほど相手の気持ちが遠ざかっていきます。

MVを前提にすると「君」は女性のようですね。

彼女は自分の気持ちを押し隠すように膝を抱えています。その横にそっと寄り添ったのでしょう。

視線の向こうから近づいてくるのは「終わり」です。

二人の今日を終わらせようとしているのだと読み取れます。

失いたくない奇跡

赤い瞳が ぼやける音
耳障りな声で 君と歌うけれど
深い昼寝の温度に慣れてくの?
飛び跳ねた笑みだけ 間違いそうもなくて

出典: 正義/作詞:ACAね 作曲:ACAね

目ではなく瞳が赤いということは、アルビノを意味しているのでしょうか。

アルビノとして赤い瞳が発現する確率はとても低いので、ここは「奇跡」と読み替えることができるかもしれません。

奇跡のような出会いが、輪郭を失っていきます。

それを阻止しようと、あえて自分でも聴くに耐えないような声で「今」を感じようとしているのでしょう。

しかし心地よいまどろみのような感覚に支配されてしまいます。

昼寝をしすぎた後の怠さを経験したことはありますか?

眠ってスッキリするはずが、逆に体が重くなり、より一層頭が働かなくなるのです。

それなら眠さでぼーっとしているほうが傷が浅いかもしれませんね。

意識がぼんやりしてきても、それに身を任せて底へと落ちていくのは危険だと歌っているのでしょうか。

ぼんやりしていても気づける笑顔。

これは遠く離れても分かる、という意味なのでしょう。

逆にいえば、笑顔が存在を主張しなければ気づかない距離にいるのです。

近づいていいの?

ただ 思い出して 終わらないで
抱きしめたいように
容易い笑みじゃ 纏めきれぬほどに
ただ はしゃいだって 譲り合って さよならさ
出遅れた言葉 誓って
冷めた皮膚だけ継ぎ足して
生かされてた 浅い声の正義であるように

出典: 正義/作詞:ACAね 作曲:ACAね

二人の関係を続けるためには、相手への想いを忘れてはいけません。

しかし、それだけでは足りないのではないでしょうか。

いくら想っていても、相手に触れることができなければ想いが薄れてしまう可能性があります。

ですから相手に手を伸ばすことに言及します。

相手に触れるのをためらって笑って誤魔化してしまっては、終わりへの一歩を踏み出すことになってしまうのです。

例え触れられる距離にいても、互いに遠慮していればそれもまた終わりに向かうことになります。

触れたいけれど触れられない。ではどうすれば二人の関係が保たれるのか。

ひとつ可能性があるとすれば「言葉」です。

相手を想っているという明確な言葉を口にすることで、良好な関係が維持できるのではないでしょうか。

でも彼はタイミングを外してしまったようですね。

おそらく誓ったのは心の中。次こそは、という誓いなのでしょう。

想いの熱さを覆う皮膚は内側の熱に侵されてぼろぼろになっているのでしょう。

傷んだ部分は新しい皮膚で修復します。

外側から見れば、いつもと何ら変わらない彼の姿です。

彼は彼女に想いを告げない。これもまたいつもどおりの彼の姿なのでしょう。

実際は、触れていいのか触れるべきではないのか、言葉にするべきなのか適切な距離感が掴めないでいるのです。

しかし外見を取り繕った彼はあたかも自分が冷静でいるかのように振る舞いますし、そう見えるでしょう。

触れないこと、言葉にしないことが正しいのだとでもいうように振る舞うのです。

浅い声とは、表面だけ取り繕った言葉を指すのだと解釈しました。