「今見た笑顔」という歌詞は、メッサーがカナメを助けた後に見せた笑顔のことでしょう。
引退するはずだったのに、命がけで戦場へと戻りカナメを救ったメッサー。
戦場では無用な感情を全てひた隠しにしてきた彼が見せたあまりにも優しい笑顔にカナメは「最後の笑顔かもしれない」と思ってしまったのでした。
その想いには、もっと彼の笑顔が見たかった、もっといろんな話をしてみたかったという後悔の念もあるのでしょう。
他の隊員からはアラド隊長のことが好きだと思われていたカナメ。
メッサーがカナメとアラドが談笑する横顔を見ているシーンが最初の方にありましたね。
そんな自分のことを、死と隣り合わせの戦場で、いつも「最後の笑顔かもしれない」「別の人と会話をする横顔も尊い1秒」とメッサーは思っていたのかと今更に思うのでした。
失って初めて、メッサーがどれだけ自分のことを想い、支えてくれていたのかを思い知ったのです。
しかし、こんな皮肉で悲しすぎる運命でも、自分がメッサーの「生きる意味」になったように、想いを知った今はメッサーもこれから「私の生きる意味」になる。
そんな二人だから出会うべくして出会ったのだろうと振り返っているのですね。
AXIAとは、ギリシャ語で価値のあるものという意味です。
微熱のまま戦場に繰り出すように、ヴァール化して全力で戦えないにもかかわらず戦い、置いていかれるカナメの気持ちも知らないまま死んでしまったメッサー。
私の胸の中に残る「せつなさ」でさえ、メッサーの生きた証で、決してその死を無価値にしないという想いが「AXIA」という言葉に込められているのでしょう。
一人で生きていけるわけがないのに、どうして今まで彼の思いに寄り添おうとしなかった?
ひとりで産まれて誰もがひとりで死んでいく
それでも私達は独りきりじゃ生きられない
慕い合う周波数
疼く傷口へと愛しさが滲みる
言えないままの一言が瞳溢れた
涙さえ明日照らすAXIA
儚い粒子で繋げてゆく鼓動
陽炎に浮かぶ夢のように
永遠のフリをした薄情な情熱
出典: AXIA~ダイスキでダイキライ~/作詞:六ツ見代 作曲:松本良喜
人間とは孤独の中生まれ、死んでいくものでも、「独りきりじゃ生きられない」ため、「慕い合う」もの。
メッサーは孤独を貫いているように見えていたものの、同じ人間なのだから、何も思っていないはずがなかった。
どうして今までその想いを知ろうとしなかったのだろうというカナメの後悔が表れている歌詞ですね。
メッサーを失った悲しみに暮れ、彼との記憶を振り返ると、こみ上げてくるのは「愛しさ」ばかり。
「言えないままの一言」とは、つまり、愛の言葉だったのです。
メッサーに支えられていたこと、守られていたこと、そして、愛していたということ。
全ては伝えられないままです。
しかし、そんな悲しみや後悔の涙も、これからは生きる意味に変えていく。
メッサーが守ってくれた命で歌い続けることが、カナメの生きる道となったということですね。
あんなに近くにいたのに今となっては「陽炎に浮かぶ夢」。
想いをあまりにも上手に隠すから、一緒にいてくれるのが「永遠」であるかのように当たり前になってしまっていた。
カナメを守るというあまりにも大きな「情熱」を、「薄情」と周りから思われるまでに隠し通したメッサーの生き様を愛おしく思い返す歌詞ですね。
君の生きる意味だった私、今度は君が私の生きる意味になる
時の船に乗って眠る日が来ても
たったひとり想う光芒ずっと絶やさない
もう君を思い出したりしない
だって一度も忘れることないから
せつなさはこの胸のAXIA
片道だけの微熱で翔ける空
私から愛を盗む君が
絶望するくらい報われなくても
遥か遠くても
ダイスキでダイキライ
出典: AXIA~ダイスキでダイキライ~/作詞:六ツ見代 作曲:松本良喜
いつか自分が死を迎えたとしても、「たったひとり」メッサーのことを「想う」気持ちは失わない。
カナメのこの想いは、自分を最期まで想って散っていったメッサーの想いとリンクしているのでしょう。
「もう君を思い出したりしない」と突き放したような歌詞ですが、「だって一度も忘れることないから」と決心の強さが伺えますね。
カナメは仕事に対してストイックな反面、自分の感情に疎い部分もあったのでしょう。
もしかしたら、アラド隊長のことを好きなのかもしれないと思っていたかもしれません。
しかし、もう二度と伝えられないけど、心の奥底では、ずっとメッサーを想っていたことに今更気づいたのです。
もうきっと、一生の中で愛した人はメッサーだけ。
そんな相手を「私から愛を盗む君」と表現しているのです。
カナメの想いを知らずに散っていったメッサーも「絶望するくらい報われなくても」自分も遥か遠くへと散った相手に一生報われない片想いをしていくことになる。
一生をかける価値のある一方通行の愛を「ダイスキでダイキライ」という言葉に凝縮したような歌詞でした。
おわりに
人生をかけた永遠に叶わない片想いをすることになったカナメとメッサー。
その出会いは運命だったのでしょう。
カナメの、自分から永遠の愛を奪って散っていったメッサーへのとてつもなく憎らしく、そしてとてつもなく愛おしい想いがカタカナの「ダイスキ」と「ダイキライ」に込められています。
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