銀杏BOYZ『漂流教室』
収録アルバムは?
2005年1月にリリースされた銀杏BOYZのアルバム、『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』。
今回ご紹介する『漂流教室』はこのアルバムに収録されています。
タイトルからして不可思議な雰囲気をまとったこの楽曲は、一体何を伝えたかったのでしょうか。
歌詞を詳しく解説していきましょう。
楽曲の登場人物は誰?
この楽曲の登場人物は3人。
語り手でもある主人公の僕。そんな僕の友人であり、いまも僕の近くにいる君。
そして同じく僕と君の友人だけれど、いまは遠くにいるあいつ。
この3人を主軸に物語は展開されていきます。
タイトルに「教室」という単語が登場していることから、彼らの年齢は10代前半~半ばだと想像できるでしょう。
さて、歌詞を追いながらそんな仲良し3人組に迫っていくのですが、物語は衝撃的な描写からスタートします。
冒頭から終わりを迎えるストーリー
誰が誰を失ったのか
告別式では泣かなかったんだ
外に出たらもう雨はあがってたんだ
あいつは虹の始まりと終わりをきっと一人で探しにいったのさ
出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
冒頭から悲しみに溢れたフレーズが展開されています。
主人公の僕は見知った誰かを亡くしたばかりのようです。
おそらくこの誰かが、先ほど紹介した登場人物の1人であるあいつでしょう。
告別式に参加したという事実だけでは、僕とあいつがどの程度の関係性を持っていたかまではわかりませんね。
ただ2行目を見ると、告別式の間は雨が降っていた様子。
雨はこの場面での悲しみ、つまり告別式に参加した人たちの涙を意味するもの…。
このように単純に捉えるならば、あいつは僕と親交が深かったに違いありません。
ただそんな表現に反して、僕は1行目にあるとおり涙を流しませんでした。
その理由は3行目で綴られています。
雨が止んだことで空に浮かび上がってきたのは、大きく美しい虹。
それを眺めながら僕は、亡くなったあいつに想いを馳せているのです。
このフレーズは、あいつが天国へ旅立ったことの比喩でしょう。
普通の人間には絶対にできないことを出しており、あいつがこの世にいないことを示しているのです。
今でも思い出す
二カ月後の夜 夢をみた
空いちめんトビウオが飛んでいた
あいつは笑ってギターを弾いて 君と僕は手を叩いたりして歌ったのさ
出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
親しかったあいつを亡くしてはや2か月。
亡くなった直後でさえケロッとしていた主人公。
さすがに2か月後はいつも通りの生活を送っていたのでしょう。
日々の忙しさの中で、あいつの死は過去の出来事として記憶の片隅に追いやられていたのかもしれません。
そんな中、不意に見た夢は全く意味不明なものでした。
2行目、空を羽ばたくはずの鳥のかわりに海で泳ぐ魚が空を舞っています。
僕はそんなシュールな様子を、死んだはずのあいつと一緒に眺めていました。
そしてここへきて、やっと最後の登場人物である君が登場します。
主人公である僕、死んでしまったあいつ、そして両者の友人であると想像できる君。
3人は時々集まって遊ぶような間柄だったのでしょう。
夢で見た関係性が現実を反映しているならば、あいつは周囲を楽しませる面白い奴だったに違いありません。
生じる違和感
このまま僕等は大人になれないまま
しがみついて忘れないんだ
君の涙をいつか笑顔に変えてくれ
光る星に約束してくれ
はやく はやく こっちにおいでよ
君と僕は一生の友達なのさ
出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
さて。ここへきて、これまでの解釈だと辻褄が合わなくなってくるのですが、気が付きましたか?
その理由を解き明かすために、歌詞5行目をご覧ください。
天国へ行ったはずのあいつを、僕と君が呼び寄せているのです。
なんとも不思議な状況が生まれていますね。
この違和感ですが、この物語をくるっと別の角度から眺めてみるだけですぐに解消します。