GOING STEADY時代から歌い継ぐ代表曲
「銀河鉄道の夜」は、峯田和伸がGOING STEADY時代にリリースした一曲です。
その後、ソロ名義でスタートした銀杏BOYZでも再びリリースしています。
メロディは同じながらGOING STEADYでリリースした時とはアレンジが異なっており、歌も再録。
どこか透明感のあるGOING STEADY版に対し、バンドサウンドが強く出た雰囲気となっています。
悩み苦しみながら生きる青春をより感じさせるサウンドです。
まさに峯田和伸の代表曲の一つと言っても過言ではないでしょう。
映画「バースデーカード」挿入歌
亡き母から娘に届く手紙
「銀河鉄道の夜」は、「BABY BABY」と共に映画「バースデーカード」の挿入歌として使われています。
監督がGOING STEADYと銀杏BOYZの楽曲のファンだったことから採用されました。
「バースデーカード」は亡き母から娘に誕生日になるたびに届く手紙の物語。
主人公の紀子を橋本愛が。
紀子が幼い頃に亡くなった母、芳恵を宮崎あおいが演じました。
みずみずしく切ない物語の世界を、「銀河鉄道の夜」を始めとする楽曲が美しく彩ります。
少女から大人に成長していく姿を描く、感動的なヒューマンドラマです。
紀子と真帆の友情と青春
銀杏BOYZは映画「バースデーカード」の中でも印象的に描かれています。
17歳の誕生日、芳恵の故郷である小豆島を訪れてほしいという手紙を受け取った紀子。
紀子はそこで引きこもりのロック好きな少女、真帆と出会います。
真帆は銀杏BOYZのファンで、紀子は銀杏BOYZの楽曲をきっかけに真帆と親交を深めていきました。
このシーン、撮影時も銀杏BOYZのグッズやポスターを集めて撮影されています。
ポスターやグッズなどはスタッフがこのために集めたとのこと。
ROCK IN JAPAN 2005のTシャツも銀杏BOYZが出演したときのもの。
銀杏BOYZのファン心もくすぐる印象的な演出となっています。
宮沢賢治と「銀河鉄道の夜」
銀杏BOYZの「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」を随所でモチーフにしています。
ジョバンニという少年が、同級生の少年カムパネルラと銀河を走る鉄道で旅をする物語です。
ジョバンニは旅を通して様々な人々や景色と出会います。
そして、銀河鉄道は死んでしまった人々を天国へ運ぶものだと知るのです。
物語の終わりにジョバンニは生きていた世界に戻り、カムパネルラの死を知ります。
とても美しく印象的な物語です。
「バースデーカード」と同様、ここでも死がひとつのモチーフとなっています。
「銀河鉄道の夜」は、生きて残されたものと死んでしまったものを繋ぐモチーフなのです。
こういった要素も踏まえて、歌詞を解釈していきます。
赤レンガ煙突の夜
夜に見える景色とは
日々ひび割れ柿の実 夕焼けて夜は来た
空水色 オーロラ 蜂蜜に濡れた月
出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
美しい色彩的なイメージが続く歌い出しです。
柿の実のようなオレンジの夕焼け。
そして夜が訪れます。
「ひび」の音を続けたフレーズ。
テンポ良く描き出されるのは、ひび割れた日常です。
毎日を幸せで充実したものとは感じられないのでしょう。
そんな日々とは裏腹に、夜の風景は美しく映えます。
夜の闇に沈む直前の僅かに水色がかった空、蜂蜜色の溶けて濡れたような月。
オーロラは東京の街からは見えなくても、空想の空には美しく輝くのでしょう。
現実の空と空想の混ざりあった、美しい夜が描かれます。
赤レンガ煙突の上 ガイコツが踊ってる
ハロー 今 君に 素晴らしい世界が見えますか
出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
続いて描かれるのは赤のイメージ。
赤レンガ煙突という言葉からは、宮沢賢治の世界のようなレトロな雰囲気が思い起こされます。
踊るガイコツは死を思い起こさせるもの。
鹿児島や新潟、そして後ほどお話する岩手には「踊る骸骨」という民話が伝わっています。
これは、仲間や兄弟に殺された骸骨が踊ったり歌ったりして見世物となるお話。
人気を得て話題となった骸骨は役人や殿様の前に出る機会を得ます。
そこで過去に仲間に殺されたことを暴露し、恨みを晴らすのです。
死者の思いと生者の世界が交錯する一瞬。
「僕」は「君」へと歌いかけます。
この時点で、美しい世界と死のイメージが同時に伝えられています。