この世界の片隅で
すべてが彩あせて
見えるのはなぜ

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami

広い世界の中で自分はちっぽけな存在だと思っている女性。

世界の真ん中ではなく端っこにいるのが自分、という前提があるようです。

そんな小さな存在である彼女にとって、目の前に広がっている世界は眩しいはずです。

起伏のない単調な日常を過ごす自分と比較すれば、その他の人は皆輝いて見えてもおかしくありません。

でもなぜか、彼女の目の前に広がっている世界は、どこかくすんだような色をしています。

ということは、彼女はこれまでに色鮮やかな世界を見た経験があるのだと考えられます。

その色よりもくすんでいる、彩あせていると歌っているのです。

ここでは「色あせる」ではなく「彩あせる」という言葉が使われていますね。

「色」「彩」どちらも英訳すると「color」という意味を持っていますが、もう一つ、「彩」には「paint」という意味もあります。

「paint」からは、どこか人為的な感じを受けます。

季節とともに木々が色を失っていくのとは異なり、誰かが・何かが原因で色を失っていくのが「彩あせる」なのではないでしょうか。

愛だとか恋だとか
言われても着いていけない
自分に気づく

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami

彼女には、世界が彩り豊かに見えていた時代がありました。

その頃と比較して、今の彼女はどこが変わったのでしょうか。

彼女自身、その答えにたどり着きました。今の自分は「愛」や「恋」とは無関係な場所にいることに気づいたのです。

独身の友人が新しい恋に落ちたとか、愛人になったとか、そうした色恋沙汰に興味が持てないのでしょう。

もしくは、アドバイスを求められても何も言えないのかもしれません。

愛や恋に興味があった頃は、友人の話であっても自分のことのように考えて、相談に乗ってあげられたのです。

しかし今は、「恋ってどんな感じ?愛って何?」といった状態に陥っています。

なぜなら、彼女は「恋」も「愛」も終えてしまったからです。

もう二度と誰かに恋をすることはないのです。

「愛」は家族愛。ドラマの中で真璃子は、娘が唯一の生きがいだといいます。

愛は娘に向けるもの。他人に「愛」を向けることはもうないのです。

背中を押す手を待っている

ねぇ 聞かせてよ
恋に気づけば
世界は彩づくの?

ねぇ 教えてよ
恋を知ったら
世界は彩られるの?

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami

誰だって彩あせた世界よりも彩り豊かな世界を望んでいます。どうしたら「あの彩り」を取り戻せるのでしょうか。

実はドラマの中で瀧沢真璃子は、娘の婚約者に惹かれてしまうのです。

その頃はちょうど、夫の浮気疑惑が浮上しているタイミングでした。

真璃子は、若い男性に惹かれてしまった自分に呆れ、思いから目を背けようとしています。

しかしこの思いを「恋」と認めたら、あの頃の彩り豊かな世界が取り戻せるのではないかと思ったのです。

この思いが恋なのだと気づいたら、世界が一瞬にして彩づくのではないか。

誰かと恋に落ちれば、相手の存在が世界を彩ってくれるのではないか。

恋や愛から離れて久しい彼女は、こうした考えに自信が持てませんが、どこかで確信しているように思います。

「聞かせて」「教えて」と言って、背中を押してくれる誰かを待っているのでしょう。

あるいは、手を取ってくれる誰かを待っているのかもしれません。

何も残っていなかった

世間的には幸せすぎる家族像。

しかしその実は、家族にしか分からない思いがぶつかり合っているのかもしれません。

気づけば一人になっていた

傷つこうとも知らないの

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami

恋を自覚して、相手が自分の思いに気づいたとき、受け入れてくれるかどうかは分かりません。

ドラマでは、相手は娘の婚約者。義理の母になる女性と恋愛関係に発展する可能性は、ほぼゼロといえるでしょう。

それでも彼女は、恋を求めて傷ついたって構わないと思っています。

それほどまでに「世界の彩り」が恋しいのだと考えられます。

特に、夫が浮気をしているドラマ内では尚更でしょう。

夫は彩られた世界にいて、自分はなぜ彩あせた世界にいなければいけないのか。

かつて世界を彩ってくれた夫は、もういないのです。

何にも手に入れた
ことなどないから
失うこともないけれど
このままでいいのかなと
思うのはなぜ

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami

彼女は何も手に入れたことがないと言いますが、果たしてそうでしょうか。

ドラマでは恋愛の末に結ばれた二人。可愛い娘も生まれ、幸せを手に入れたと言えます。

しかし「手に入れたことがない」と歌う彼女。

優しい夫は浮気、そのせいで温かかった家庭は崩壊寸前。娘は嫁に行ってしまう。彼女は一人になってしまうかもしれません。

手に入れたと思っていたものが、実は手をすり抜けていたことに気づいてしまったのです。

だから何も持っていないし、それゆえに失うものもない。

リスクを恐れずに、貪欲に恋を求めても良い状況だといえます。

でも彼女は、あえて一歩を踏み出す必要はないのかな、とも思っているようです。

彼女の心の中で、様々な感情がせめぎ合っています。

あなたに背中を押してほしい

ねぇ 答えてよ
恋に気づけば
世界は彩づくの?

ねぇ 見させてよ
恋を知ったら
世界は彩られるの?

出典: 彩恋〜SAI_REN〜/作詞:中野久美子 作曲:Kiyoshi Ikegami