切ない問いかけ
君ならどうすんの、駄作と解っても
消え去りたくない、壊されたくない
ほら面倒臭いね 帳消しにしちゃいたいね
出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ
一連の歌詞の中でもとりわけファンの皆さんの心を打ったのは上記の部分ではないでしょうか。
今はいない仲間への呼びかけを受けて、シノダがwowakaへ問いかける姿を想像した方は少なくないはずです。
その後の「駄作」から続く心情の吐露からはバンド存続にまつわる煩悶が読み取れます。
面倒臭いと感じるのも帳消しにしたいと思うのも無理のないことといえるかもしれません。
ちっぽけな自分自身
誰もいない水槽
夢見るプランクトンの揺り籠
ハナから人間性塗りかえようなんて
出来ゃしないの
出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ
曲はAメロに戻り主人公の孤独が繰り返されます。誰も居ない水槽の閉塞感は想像すると寒気がするほどです。
やや自虐的な傾向のある主人公は、今度は自らを「プランクトン」と極限まで矮小化して語ります。
「揺り籠」で幼児性を匂わせて、いっそう己を貶めていることも無視するべきではないでしょう。
落ちる所まで落ちた後はその反動のような上昇がやって来ます。
その上昇の契機となるのがそもそも人間性を塗り替えることなどできないという当然の開き直りです。
俺はwowakaにはなれない。俺は俺で行く。そんな思いが強調された歌詞の副音声として聞こえないでしょうか。
未来への希望と過去への思慕
どうしても静か過ぎるこの夜に
文字を並べて銃を持たすんだ
誰か撃ち抜くわけじゃあるまいし
開く夢などあるわけじゃないし
出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ
すでに確かな上昇に転じている主人公がどん底を振り返ることはもうありません。
冒頭でモンスターとして這いずったのと同じ静かな夜の中で、彼は文字を連ねて自分だけの歌詞を紡ぎ出します。
求められずとも何かを表現せずにはいられない、アーティストとしての業さえ感じさせる凄みがあります。
再出発への意欲
ただ頭ん中で 何億回も繰り返して
想像でしかない舞台へ ゴミみたいなバンズ履いて
期待しないは承知の上
常識なんて範囲外で
超ピーキーなハイが鳴いて
三桁W、コーン揺らして
出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ
この部分の韻を踏んでテンポ良く上昇していく感じは非常に作為的ですが小気味良いものです。
途中に差し挟まれるボロボロになった靴の一見ダーティな表現は初心を忘れない決意の表れではないでしょうか。
ここで示されているのは再出発への意欲です。そして歌詞はあのあまりにも特徴的な繰り返しへと到達します。
高難度のギターフレーズ
なあ
またプリング・ハンマリング繰り返して
またプリング・ハンマリング繰り返して
またプリング・ハンマリング繰り返して
またプリング・ハンマリング繰り返して
出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ
ヒトリエの曲の持ち味の1つに「高難度のギターフレーズ」があります。
そこで多用されるのがプリングとハンマリングという、弦をピッキングせずに指で音を出す奏法です。
そんな難しいフレーズを指して「面倒臭い」と誰はばかることなく表現できたのはシノダだからこそでしょう。
4回も続くこの部分の歌詞からはwowakaがいた頃を懐かしむような印象も受けます。