間奏~2番Aメロ
華やかな景観に 当てられ世人(よひと)は列(つら)なる
愛しみは幾匁(もんめ)
花は一匁
出典: 朧月/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
間奏でメロディーを奏でるのは琴です。
竹を割ったような澄んだ音色は、日本的なこの曲にピッタリの楽器ですね!!
2番Aメロの歌詞です。
「世人」とは「一般大衆・世間の人」という意味です。
ここでも古語が使われています。
「当てられ」という表現は、文脈から察すると文字とおりの意味ではなく、「惑わされて」といった意味になります。
「匁」という、昔の数量単位が出てきます。
「匁」という言葉には、重さを表す場合と、金額を表す場合があります。
この曲の場合だと、後者の方を表す意味でしょう。
また、昔からこどもが遊ぶ「はないちもんめ」と掛けている、とも推察されます。
2番サビ
知らぬ吐息を浴び 軋む帷(とばり)
今は不香(ふきょう)の花でありたい
顔の無い人影に絆(ほだ)されて
手折(たお)られてしまうのなら
出典: 朧月/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
「帳」とは、「室内にたれさげる布」のことです。また、「光を遮るものの例え」、という意味もあります。
「不香の花」とは植物の花のことではなく、「雪」を表します。
「絆されて」とは、「情にひかれる」または「情に流される」という意味です。
「手折る」とは、「花を手で折る」という意味と「女性をわがものにする」という意味があります。
このように、サビを構成する語句に、2重の意味を含むものが多く、解釈はいちようではありません。
「雪のような月」なのか「想ってもいない男性と結婚してしまう女性」なのか解釈は分かれますが、ここでは「女性」を歌っているように思います。
現代的なメロディーが流れる
Cメロ
袖口の手毬(けまり)は転ぶ 暗がりの方へ
ねえ お願い ひとりにしないで
雲間に消える
出典: 朧月/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
「毛毬」とは、昔の遊戯のひとつです。
毬が地面に落ちないように、数人で蹴りあいます。
昔の日本人は和装(着物)でした。着物は袖口が広いです。その袖口に毬を入れていたのでしょう。
もしこの曲の主人公が「薄幸な女性」だとしたら、「雲間に消える」のはその女性の想いだと思います。
「女性」=「朧月」と解釈すれば、客体である「朧月」が「雲間に消える」と読み取っても良いかもしれません。
Cメロは、今までの日本的なメロディーとは少し違うメロディーラインになっています。
曲のすべてに渡って同じパターンのメロディーラインを入れるのではなく、このようなメロディーラインを入れることによって、現代的な楽曲に仕上がっています。
3番サビ
愛しい 愛しいよ と木霊(こだま)した
日々は想うほどに遥か
冷めぬ心に霏霏(ひひ)と 六(む・むっ)つの花
芽吹(めぶ)きと共に
あの人のもとへ 帰ろう
出典: 朧月/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
Cメロの歌詞です。
「木霊」とは、「やまびこ」のことです。
また、「音が反響するさま」を言い表します。
「霏霏」とは、「雪や雨などのふりしきるさま」、「続いて絶えないさま」という意味です。
「芽吹き」は、「植物の芽が生えてくる」ことをいいます。
この曲の歌詞は、「擬人法」を上手く使っています。
「木霊」も「霏霏」も「芽吹き」も、恐らくは主人公の心情を描いていると思うのですが、それを「月」や「雪」に例えて、美しく、情感のこもった歌になっています。
Cメロの前半は、ボーカルにエフェクト処理がかかっています。
大サビ
遊里(ゆうり)に咲く雪月花(せつげつか)
霞(かす)む 私は朧月
手繰り寄せる 朱殷の糸口よ
貴方に続けと願う
千切れぬ明日に 契りなどない
薄月の色
出典: 朧月/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
大サビです。
「遊里」とは「色街(風俗街)」のことです。
ちなみに、「色街」を舞台とした映画作品で名高いのが、名取裕子さん主演の『吉原炎上』です。
「千切れぬ」と「契り」という同じ響きを持つ2つの語句を並べて、一種の言葉遊びをしています。
「千切る」は「指先で細かく切る」という意味、そして「契り」は「約束する」・「夫婦の交わり」という意味です。
非常に文学性の高い歌詞です。
「薄月の色」のところで、いったんメジャーコードになっています。
そして歌が終わり、間奏に入るのですが、再びマイナーコード(元のルートコード)に戻っています。
こういったところも良いアクセントになっています。
また、曲と歌詞の余韻を残すように、終わりはフェードアウト(じょじょに音が小さくなって終わる)になっています。
MV解説!!
『朧月』のMVは、イラストになっています。
そのイラストの中に歌詞が表示されています。
イラストの作者は、「まふまふ」さんとのコラボレーションが多い「茶々ごま」さんが手がけています。
「赤」をモチーフとしたMVは、京都の寺や吉野の里を思い起こさせる、日本的なつくりになっています。
主人公の女性が身に付けている着物の色も赤です。また、紅葉したイチョウの木々を彩るのも赤です。
男性が少しだけ登場しますが、男性の着物は青です。
情熱的な赤、冷静な青という対比なのかもしれません。
キャラクター造詣は現代的ですが、背景の舞台装置は古風です。
現代性と時代性が見事にマッチしています。
そういう意味では、このMVは新しいジャンルに類します。