「あなただけを」は当時の月9ドラマ『いつかまた逢える』の主題歌として作られました。
サザンのボーカルで作詞もしている桑田さん自身、ドラマのストーリーを汲んでこの曲を作ったと言っており、歌詞の意味を紐解くのにドラマの存在は外せません。
このドラマ、サザンと同じ事務所の福山雅治さんが初めて主演を務めたもの。
Wikipediaより抜粋したあらすじがコチラ。
紺野伸一(福山雅治)は、荒木(椎名桔平)の代理として見合いを断りに行くことに。
そこに現れた派手な女は、紺野がかつて密かに想いを寄せていた城崎つゆ美(桜井幸子)。
見合いは逆に断られ、満足に話もできないまま別れてしまう。
その後、つゆ美と再会するが、つゆ美が荒木を目で追っていることに気がつく。
つゆ美の荒木への想いを知ってしまった紺野は、つゆ美の恋を応援することを決意するのだった。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/いつかまた逢える
……とはいえ、荒木に振り回されるつゆ美を見ていられず、結局アタックしちゃうんですよね、紺野サン。
その想いは、歌詞の冒頭から溢れているようです。
泣かないで 溢れ出す涙を拭いて
去かないで あの夏は夢
現在は想い出に残るひととき
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
荒木のせいで泣くつゆ美に対する、紺野の訴えとも言えそうです。
頭サビから始まった歌詞は、こんな風に続きます。
涙色した貝殻に 熱いため息が出る
恋の行方も知らないで
アイドルみたいにシビレてた
Ah,それはせつないだけのLong Vacation
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
ここは高校時代に恋をしていた紺野の回想のようですね。
東京ラブストーリーに似ていた?青春群像劇
このドラマ、メインの登場人物には他にも2人います。
今田耕司さん演じる中田と、 大塚寧々さん演じる純子です。
5人の関係を端的に表現すると、
紺野はつゆ美が好き。
つゆ美は荒木が好き。
荒木はつゆ美の心を弄んでいる。
中田は純子が好き。
純子は紺野が好き。
……と、なんともまあフクザツなカンケイ。
ストーリーはドラマ『東京ラブストーリー』に似ているという評価もあり、『いつかまた逢える』には群像劇的な要素もありました。
優しさも裏切りも身体ごと受け止めて
波音に揺れながら Ah,愛されてた
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
<愛されてた>のはつゆ美のことですね。
自分の主張だけでなく、ここで群像劇の要素が少し垣間見えるのはおもしろいです。
泣かないで…何もかも心せつなく
去かないで…太陽の下
口づけを交わす夏のまぼろし
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
好きな女が別の男を想って泣く。
その涙は、男性にはどんな風に見えるのでしょうか。
口では「泣かないで…」と言うしかないですよね。
「そいつの所に行くな!」と言えたら一番いいんでしょう。
でも人の心は強引には動かせない。
結局は心の中に<太陽の下 口づけを交わす><まぼろし>を見続けるしかないんでしょうか……。
「あなただけを」で雨が降らないワケ
君と遊んだ海岸で 夜毎面影を見る
波が脱がせたハイヒール
生命の限りに口説いてた
Ah,きっと忘れるためのLong Vacation
日に灼けた頬寄せて悪戯に搦み合い
抱き寄せた胸元は Ah,恋に濡れた
抱きしめて…もう一度だけ俺を見つめて欲しい
黄昏て渚のステージに
月明かりだけがついて来たのさ
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
「あなただけを」は<太陽の下>とか<日に灼けた>とか、天気がとっても良いイメージですよね。
雨上がりというわけでもないですし。
それは、夏の終わりとともに、この恋を綺麗サッパリ忘れようという意志があるから。なのかもしれません。
ちなみに<月明かりだけがついて来たのさ>という歌詞が生まれたのは、仕事帰りのドライブ中。
桑田さんはどんなに走ってもついてくるお月様を見てこの歌詞を思いついたそうですよ。
Mm…
あなただけを
誰かが落とした 麦藁帽子が
波にさらわれて 夏が終わる
泣かないで…太陽の下
遠いまぼろしの恋をしたのさ
あなただけを
愛し続けて…
出典: あなただけを 〜Summer Heartbreak〜/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
こうして歌詞を見ると「雨」のようなしっとりとした失恋のイメージがない。
歌詞が意味する所の他に、ドラマに即して歌詞を作ったことも一因と考えられます。
ちなみに、ドラマのラストは主人公の紺野が失恋します。
まさかの曲名でオチをばらしていくスタイル……さすが桑田さん、やってくれます。