神様がいたならきっと嫌われていたでしょう。
窓のそとを見遣ると、豊かな麦畑の黄金がそれはそれは美しい中、
運転手が言ったのです。

出典: 地獄タクシー/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子

夫人は重大な罪を犯しています。

その非人道的な行為は、神や仏などといった絶対的な存在にも許されないほど。

しかし、もう手を染めてしまった彼女は開き直るしかないのでしょう。

そうしてふと見えた「麦畑」の景色。

これは単に「のどかな農道を車が移動している」という意味ではなさそうです。

「麦畑」の「麦」は聖書において「人間の命」として例えられています。

つまり、「たくさんの魂がひしめきあう空間」にいつの間にか入り込んだという意味。

もうそこは現実世界ではないのです。

そのタイミングで、例のタクシー運転手が口を開きました。

「地獄タクシー」とは

運転手に告げられた事実

「お客さま」
「はい」
「貴女」
「はい」
「貴女、もう地獄に落ちてますよ」
「え」

出典: 地獄タクシー/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子

低くかすれた声で、突如告げられた事実。

「え」という声がとてもリアルですね。

「まさか」「どういうこと」と、思いがけない心情がにじみ出ています。

神様はやはり彼女の犯した罪を許していなかったのです。

乗り込んだのは「地獄行きのタクシー」だった

地獄タクシー タクシー 魂をたくし
地獄タクシー タクシー 釜の底をゆこう

出典: 地獄タクシー/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子

彼女が乗ったのは「地獄行き」のタクシー。

空港へなんて向かっていなかったのが、この時点で判明しました。

MVでもタクシーの上部分に「HELL=地獄」と表示されていますね。

中からは見えないので、夫人もこれじゃ気づきません。

サビでは「タクシー」に似た語呂が繰り返されて、言葉遊びが楽しい♪

現在このタクシーに乗っているのは夫人の「魂」。

既にこの世の人ではなくなってしまったようです。

そして、タクシーは罪人を煮るといわれている「地獄の釜」へと向かっています。

解き明かされる罪の真相

2人目の登場人物

月曜日のニュースは、失踪した女の事件でもちきり。
なんでも女は亭主の首を持って逃げたのだと。
物騒な世の中なもんだ。俺にはまるで無縁の話だが。
踵を返してタクシーに乗りこんだ。

出典: 地獄タクシー/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子

2人目の人物が現れました。

その男性が語っている「女の事件」とは夫人の犯した事件のこと。

夫人はなんと亭主の首をバッグにつめて国外へ逃げようとしていたのです。

だから重たいバッグを持っていたのですね…。

そして、噂話でもするかのように回想しながら、なんと彼もタクシーへ乗り込みました。

男性の正体

そういえば今朝の記憶がない
どうやってここに来たんだっけ

バックミラーに映らない俺に運転手が言ったのです。

「貴方、もう地獄に落ちてますよ」

出典: 地獄タクシー/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子

夫人がタクシーに乗ったのは「昼下がり」でしたね。

そして、この男性は「朝の記憶」が喪失しているといっています。

夫人が罪を犯した時間帯と一致しているではありませんか…。

そう、この男性は夫人の亭主なのです。

バックに詰められた生首の魂も、「地獄タクシー」に乗って地獄に運ばれました。

これはいったいどんな意味なのでしょうか?

推測してみましょう。

まず1つ目は、夫人によって運ばれていた生首に魂が宿っていたという考え方です。

夫人とともに地獄へ入り込んでしまったということ。

でもそれだと「無実の亭主が巻き添えを食らった」という印象が否めないですね。

2つ目は、亭主も重大な罪を犯したという考え方です。

「自殺すると地獄に落ちる」なんて言葉を聞いたことはありませんか?

夫人が亭主を殺めたかどうかがこの歌詞では明記されていません。

夫人はあくまで亭主が亡くなっている姿を見つけ、ずっと側にいたいから首を切り持ち出した…。

筆者としてはこの2つ目の考え方ではないかと思います。

「地獄タクシー」はいつ迷い込むか分からない

もう逃れられない