サカナクションのライブ定番曲「М」
2013年3月に発売されたサカナクション6枚目のアルバム「sakanaction」。
「夜の踊り子」や「ミュージック」といった大ヒットシングルを4曲も含む、バンドの代名詞的なアルバムです。
今回は収録曲「М」をピックアップ。
パンパンッというハンドクラップで盛り上がる、ライブ定番曲の1つです。
- 「SAKANAQUARIUM 2013」
- 「SAKANAQUARIUM2017」
ライブ映像集にも収録されていて、ダイジェスト映像で演奏シーンをちらっと見ることができます。
ただ歌物語は、主人公が泣きながら「淡い夢の終わり」について思いを馳せるという内容。
アップテンポなダンスナンバーでありながら、少々湿っぽい歌詞です。
山口一郎さんはこの曲にどのようなメッセージを込めたのでしょうか。
歌詞の意味を考察します。
1番の歌詞を見よう!
夕暮れのひとり遊び
夕焼けが急いだ
砂浜で風に揺れてる黒髪
あの子は一人っ子
いつもひとりで遊んだ
出典: М/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
バンド名からもわかるとおり、山口一郎さんは釣りが大変お好きな方です。
主人公のいる場所はビーチなので、海釣りをしている状況が想像できます。
時刻は夕暮れ。
ずっとひとり遊びをしている子どもが近くにいるのではないでしょうか。
しかもよく見かける子ども。
兄弟姉妹でもいれば一緒に楽しめるはずなのに、と思ったイメージです。
主人公もまた孤独に釣りをしていて、自分の姿と重ねたのかもしれません。
鳥も孤独
夕焼けが急いだ
砂浜で休む はぐれたカモメ
この子も一人っ子
いつもひとりで飛んでいた
出典: М/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
■カモメ
集団繁殖地(コロニー)を形成する。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/カモメ
日没が迫っている状況です。
主人公は、集団で生活する習性のある鳥が、群れから外れる様子に目を留めています。
鳥は、先ほどの子どもと同じく孤独。
青い海、オレンジの空、黒い髪の子ども、白い鳥と色彩豊かな風景です。
そのなかで群れから離れた存在ばかりが強調されることで、主人公の孤独感が浮かび上がります。
1番の続きを見よう!
太陽と鳥が会話?
夕焼けは止まった
砂浜で赤い一人と一羽は
何かを言ったんだ
同じ言葉を思った
出典: М/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
これまでは主人公の目に留まった風景が淡々と描写されていました。
ところがここで現実的にはあり得ないはずの出来事が起こります。
それは時間の停止。
刻一刻と水平線に沈みかけていた太陽の動きが停止したように感じられた、という意味でしょう。
不思議な話ですが、さらに謎めいているのが歌詞2行目の登場人物です。
これまでと同じように孤独な存在であることはわかりますが、いったい誰?
主人公が着ている服の色が赤という可能性も考えられます。
ただ、SFっぽい物語が展開され始めた点を踏まえると、太陽の擬人化ではないでしょうか。
空がオレンジ色に染まるなか、中心で赤く燃え盛る太陽が、海に沈む前に動きを止めて鳥と話した。
そう主人公は感じたのかもしれませんが、常識的には太陽も鳥も会話をしないはずです。
それでも46億年も孤独に光を放っている太陽と、群れから外れた鳥なら通じ合うものがあるのでは?
想像力が豊かな主人公のようです。
あるいは、夕日に照らされて赤く染まった主人公自身が鳥と会話したかのように感じるほど通じ合った。
そういう意味かもしれません。
それを見ていた太陽が驚きのあまり一瞬たじろいたとも考えられます。
いずれにしても、まさに時間が停止したように感じるほど劇的な瞬間だったのでしょう。