「years」の時代背景
サカナクション5枚目のシングル「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」は2011年7月にリリース。
そのカップリング曲が「years」です。「years」とは時代のこと。
日常を歌った「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」と時代を描いた「years」は2曲で1曲。
それほど結びつきが強いそう。
東日本大震災から4ヶ月後
このシングルがリリースされた2011年7月といえば東日本大震災から4ヶ月後。
日本じゅう誰しも日常に不安を抱え、ロックを含めたエンタメ業界も自粛ムードにありました。
支援したいと思っても、音楽は救援物資にはならない。無力感を口にするミュージシャンもいました。
そのタイミングで耳に飛び込んできた「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」。
衝撃を受けた人も多かったでしょう。私も「山口一郎さんがやってくれた」と涙した1人です。
この涙は「years」の中にある「過ぎゆく時代に変わらないこと」にもつながります。
「山口一郎さんが何をやってくれたのか?」についても後ほどお楽しみに。
『DocumentaLy』にも収録
「years」は2011年9月にリリースされたサカナクション5枚目のアルバム『DocumentaLy』にも収録。
東日本大震災で「未来はどうなってしまうんだろう?」という不安を共有した私たち。
そのリアルな時代性が記録されたまさにドキュメンタリー作品です。
通常版は全12曲でラストの「ドキュメント」の前に「『バッハ~』」と「years」が並んで収められています。
サカナクションのオリジナルアルバムにシングルのカップリング曲が収録されたのは初めて。
それだけ「years」はサカナクションにとって重要であり、2曲が対になっていることがわかります。
『懐かしい月は新しい月』『魚図鑑』にも収録
2018年9月現在、サカナクションのオリジナルアルバムは6枚。
そのほかコンピレーションアルバムが2枚リリースされており、どちらにも「years」は収録されています。
1枚目はカップリング&リミックス集の『懐かしい月は新しい月』。
2015年8月リリースのカップリング集とリミックス集の2枚組コンピで、配信では1枚ずつ別になっています。
「years」が収録されているのはカップリング集『月の波形』のほう。
リミックス集『月の変容』には入っていませんのでお間違いなく。
さらに『懐かしい月は新しい月』初回限定版はBD/DVDの映像『月の景色』つき。
こちらには「years」のMVが収められています。
また2018年3月にリリースされたベストアルバム『魚図鑑』でも「years」を聴くことができます。
- 2011年7月20日:『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
- 2011年9月28日:DocumentaLy
- 2015年8月5日:懐かしい月は新しい月/月の波形、月の景色
- 2018年3月28日:魚図鑑
Honda「INSIGHT」CM
2018年にはHondaのハイブリッド車「INSIGHT」のCMソングにも起用されました。
山口一郎さんが初めてCMのナレーションに挑戦されています。
2015年の東京、都市の感情
時代について歌われた「years」という楽曲そのものの時代背景がわかってきたところで気になるのはMV。
実はシングルのカップリング曲としてリリースされた時にはまだMVがありませんでした。
その4年後のコンピ『懐かしい月は新しい月』リリースの際にようやく制作され公開されたのです。
MVで描かれているのは2015年の東京を駆け抜ける1人の少女。歌詞にも登場する「薄い布」をなびかせています。
映像作家・映画監督の山田智和氏によるテーマは「都市の感情」。
「時代の泥」によって染められたり「時代のハサミ」によって切り刻まれたりすることもある私たちや都市。
抽象的な歌詞で東日本大震災直後の不安な心情が表現され、映像により4年という時代の変化が浮き彫りに。