渡り鳥は、自分にとって過ごしやすい環境を求めて旅をします。

つまり、渡り鳥が捨てた場所は過ごしにくい場所だったということになりますね。

正しすぎる言葉が刃物になる

青い空真っ白な鶴が舞う
それはただ眩しくて心を刺す
置いてきぼりひたすら解らなくて
気が付くのがいつも遅いんだ

出典: 飛行機/作詞:aiko 作曲:aiko

鶴は群れをなして飛翔しますが、彼=鶴はその群れの中に彼女の姿がないと知りながら飛び立ってしまったのです。

「自分らしく生きるんだよ」というセリフとともに飛び立った彼。

とても「彼女想い」で格好良いセリフではありますが、彼女にとっては単なる別れの口実です。

平和な日々の中で順調に愛を育んでいると思っていたのは彼女だけ。

実はその裏で、彼は着々と旅立ちの準備を進めていたというわけです。

でもなぜ自分は一緒に連れて行ってもらえなかったのか。やはり彼女は理解しきれていません。

「自分らしく生きる」ことはできていたはずなのに、彼は「自分らしく生きろ」と言う。

納得できませんね。

私らしさを返して!

あたしがここにいる証はあなたにあったのに
行かないで

出典: 飛行機/作詞:aiko 作曲:aiko

今まで彼女は自分らしく生きていたという自信があります。

彼女にとっての「自分らしさ」とは、彼とともに過ごす時間の中にあるのです。

ですから、彼がいなくなってしまったら自分らしさを見失ってしまいます。

「鶴=飛行機」と考えられますね。

彼はどこか遠く異国の地に旅立ったのかもしれません。

恋に慢心は厳禁

彼のことを一方的に責められる立場だったらどんなにラクだったでしょうか。

彼女は、彼に責任をなすりつけることができませんでした。

傷口は悪化するばかり

新しく刺さったトゲは抜けなくて
赤くって痛くって怖かった

出典: 飛行機/作詞:aiko 作曲:aiko

眩しすぎる彼の旅立ちの景色は、彼女の胸に鋭く刺さりました。

彼女と別れることへの寂しさや後悔を微塵も感じさせない、晴れ晴れとした姿だったのでしょう。

だからこそ深く、強く刺さったのだと推測できます。

傷口が熱を持ち始めたのかもしれませんね。炎症が起きている証拠です。

彼女自身が「自分は何も悪くない」と思っていたら、こんなことにはならなかったかもしれません。

どこかに罪悪感があって、トゲが刺さって当然だという気持ちがあるのではないでしょうか。

初めは「何が悪かったの?」と状況を理解できなかった彼女。

次第に飲み込めてきた途端、自分の非を責め始めたのです。

あれが原因かもしれない。これが悪かったのかもしれない。いつになったら腫れが引くのか分かりませんね。

罪悪感に気づかないふりなんてできませんから、いつ痛みから開放されるのか不安で仕方がありません。

「出来ない」でかたずけた毎日と
交換に大切な物失くしてった

出典: 飛行機/作詞:aiko 作曲:aiko

二人の関係は本当にうまくいっていたのかもしれませんね。

うまくいっていたからこそ、彼はこの先の人生を二人で歩まないかと彼女に提案していたのではないでしょうか。

つまり「結婚」です。

歌詞全体から考えると、結婚と同時に彼の仕事の関係でどこか遠い場所に移住する計画だったのかもしれません。

結婚しないか?一緒に来てくれないか?彼女にとって非常に幸せな申し出ですね。

だから彼女は「うまくいっている」と思い込んでしまったのでしょう。

彼は自分のことだけを見てくれていて、プロポーズをしてくれている。

しかし彼女は今の仕事を続けたい、環境を変えたくないなど何かしらの理由で断っていたと推測できます。

彼の視点で考えることも必要

あたしの歩いた道には花が宿ってたのに
声も愛も注がず枯らしたのはあたし

出典: 飛行機/作詞:aiko 作曲:aiko

大好きな彼が人生の伴侶として自分を求めてくれている。

もしかするとただ単に「会いたい」という彼の申し出に対して「出来ない」と言っていた可能性もあります。

いずれにせよ、彼女は彼に愛されていたことは間違いないでしょう。

愛されている、ということに胡座(あぐら)をかいていた

彼が蒔いた種は美しい花に成長することが分かっていたのに、そのうち芽が出ると思って世話をしなかったのです。

周囲から見れば彼女は幸せに満ちていたことでしょう。しかし彼はどうでしょうか。

結婚も、たった5分の電話も断られてしまうとしたら……。

彼女にとって自分は1番大切な存在ではないのかもしれない。そう思っても不思議ではありません。

彼から見て彼女は、仕事や友人、家族を1番大切にする人に見えたのかもしれませんね。

つまり、こういった人々を1番に考えるのが「彼女らしさ」だと思ったのでしょう。

彼の言葉を信じていた彼女