くるり
京都で結成されたくるり。
フォーキーな楽曲があると思えばエレクトリックなサウンドもお手の物。
さらにクラッシックだって扱えますし、民謡だって取り入れます。
そうしてアルバムごとに様々なバンドサウンドを展開してきました。
ボーカルの岸田繁は知性的。京都清華大学の客員教授に就任しています。
20周年を機に発表された「琥珀色の街、上海蟹の朝」。
この曲は2016年に発売された、同名のEPに収録されている1曲ともなっていますね。
この曲は、岸田が封印してきたシティポップ/ブラックミュージックの影響を解き放ち大胆にラップも取り入れながら。
それでもくるりらしさを失わない曲に仕上がっています。
岸田が封印してきたシティポップ、ブラックミュージックぽさとは?
この曲に込めたメッセージとは
田舎/都会という文脈で、都会的で洗練された言葉の意味が抽象化されたおしゃれな音楽。
そういったものがシティポップとして、90年代ぐらいまでは広まっていました。
そのような音楽はまだ見ぬ都会的な生活に憧れさせる、一種の魔力を持っていたと思います。
メディアが喧伝するイメージとあわせて、地方に住む人々にとっては都会的な生活が夢のように響いていたのでしょう。
そういった音楽は、いわゆるブラックミュージックの影響を大きく受けていたものが多かったです。
くるり自体はこれまで、反フォークソング的な音楽ではなく。
サウンドの中に土着的なフォーキーさを残しつつ、新しいサウンドを構築してきたとも言えると思います。
しかし20周年を機に岸田は封印してきたシティポップ/ブラックミュージック的なサウンドを解禁します。
音楽的素養も深い彼のことですから、これまで20年間禁じていたものを今回解放したことについて。
きっと様々な熟慮の上で、今ここでの解禁を決意したのではないかと思います。
単純に20年という節目の年だった、という理由も、もしかしたらあるかもしれません。
あるいはこの2010年代という時代は、目まぐるしく音楽業界の常識が変わっていった年でもあります。
YouTubeが発達し、音楽のサブスクリプションサービスが当たり前となり。
そのような時代背景を踏まえた上で、これまで禁じ手としてきたものを解禁した可能性も高そうです。
そういったところに関しても、何かしらの機会でぜひ彼には語って頂きたい部分でもありますね。
「琥珀色の街、上海蟹の朝」をcheck!
さて、そのような形で楽曲が作られた背景にしばし思いを馳せた後は!
せっかくですのでまず一度、楽曲を聴いて頂ければと思います。
こちらは「琥珀色の街、上海蟹の朝」のMV映像となっています。
アニメーションによって描かれたMVはポップ感満載。どこかファンタジックで不思議な印象を与えますね。
こちらのMVのアニメーションを手掛けたのは、タイ人の漫画家であるウィスット・ポンニミット。
一時期くるりのアーティスト写真も担当しており、彼らと交友が深かった様子もうかがえますね。
MV映像に登場するのは、そんな彼の漫画ではお馴染みのキャラクター、タムくん。
どうやらくるりのメンバーらしき人物も、この映像では描かれています。
宇宙を思わせるような、どこか近未来的な舞台が印象的な映像ともなっていますね。
インタビューで岸田は、もう東京という街に人々が抱く幻想は弱くなっているという意味のことを話しています。
80年代の栄華を遠くはなれ、シティポップという文脈はタウン的なものになりつつあるのではないかというのです。
では、この曲に岸田はどんなメッセージをこめているのでしょうか?
ここからそんな楽曲の、歌詞を紐解きます。
「琥珀色の街、上海蟹の朝」の歌詞を紐解く
さようなら、美しい街
beautiful city さよならさ マンダリンの楼上
isn’t it a pity beautiful city
出典: https://www.mangalyrics.com/くるり-琥珀色の街、上海蟹の朝-歌詞.html
まず冒頭で美しい街に別れを告げている岸田がいます。
どんな人とも、どんな場所とも、確かにいつか別れなければいけない日は訪れます。
普通であれば美しい街並みや住み慣れた場所に別れを告げることは、寂しく悲しいことのはず。
身が引き裂かれるような切ない別れを経験したことのある方も、きっと多いのではないでしょうか。
けれど岸田は、それは残念なことじゃないと言っています。
それは一体、どうしてなのでしょう。
目を閉じれば そこかしこに広がる
無音の世界 不穏な未来
耳鳴り 時計の秒針止めて
出典: https://www.mangalyrics.com/くるり-琥珀色の街、上海蟹の朝-歌詞.html
瞼を閉じれば私たちの目の前に広がるのは真っ暗な世界。
視界からの情報をシャットアウトすることで、内なる自分の声が良く聴こえるようになる。
そんな経験を、皆さんはしたことがないでしょうか。
いわゆる瞑想と呼ばれる行為などは、そういった心の声を聴くものとして有名ですね。
心の中には無音の世界が広がっていて、その音のなさは未来の不穏さと繋がっています。
これから私たちが歩み始める未来。
それはどうやら単純に明るく、素晴らしいものではない様子です。
そして音ではなく、耳鳴りのようなノイズが聴こえています。
これまで私たちが過ごしてきた穏やかな世界は、もしかしたら終わりを迎えるのでしょうか。
かつて輝いてきた未来に対して、崩壊が世界を覆っているのでしょうか?
だから時計の針をとめてと歌われているように思います。
強い人ばかりじゃない
吸うも吐くも自由 それだけで有り難い
実を言うと この街の奴らは義理堅い
ただガタイの良さには 騙されるんじゃない
お前と一緒で皆弱っている
出典: https://www.mangalyrics.com/くるり-琥珀色の街、上海蟹の朝-歌詞.html