コムアイは『ミツコ』が『恋の罪』にインスパイアされた作品であることを公言しています。
『ミツコ』というタイトルも『恋の罪』の登場人物の1人である「尾沢美津子」を指すのだと思います。
「尾沢美津子」は昼間は大学教授という社会的地位のある仕事をしながらも、夜は売春を行うという謎めいた女性です。
この曲の持つ色気や狂気的な雰囲気は、この映画をイメージしたものでしょう。
『恋の罪』は『東電OL殺人事件』が元ネタ
『恋の罪』は1997年5月に起きた『東電OL殺人事件』が元ネタとなっています。
東京電力の幹部社員の女性が渋谷区円山町のアパートで殺害された事件です。現在でも未解決の事件となっています。
この事件が注目される理由となったのは、犯人が見つからないことだけではありません。
被害者が東京電力という一流企業の幹部でありながら、夜は売春をしていたというショッキングな要素がマスコミに取り上げられたことがその理由です。
『恋の罪』は女性が持つさまざまな顔をクローズアップした作品で、それぞれが心の闇にグルグルと落ちていくような内容です。
『ミツコ』に興味を持った方は、この曲の元ネタとも言える『恋の罪』もぜひ観てみてください。
気になる歌詞の意味を解釈
さまざまな含みを感じさせる『ミツコ』の気になる歌詞の意味を解釈していきます。
夜の動物園
東京渋谷区終電間際の攻防せめぎあい 坂道登って向かうは円山
駅から徒歩10分 カルチャー・ヴィレッジ ほんとは色欲ムラムラ文化村
ぬけたら遊郭・花街 ようこそ夜の動物園
出典: ミツコ/作詞:ケンモチヒデフミ 作曲:ケンモチヒデフミ
「終電間際の攻防」とは、男女の恋愛における駆け引きという意味でしょう。
向かうのは円山町です。円山町はラブホテル街としても知られています。それを大人の営みが行われる「夜の動物園」と称しているのです。
トゲがありながらもしっかりと韻を踏むキャッチーさが、独特な雰囲気を醸し出しています。
魔女っ子クラブ
ハイ魔女っこクラブです こちらは魔女っこクラブです
ハイ魔女っこクラブです 学生割引3000ポッキリでーす
VIP 3千ポッキリでーす
出典: ミツコ/作詞:ケンモチヒデフミ 作曲:ケンモチヒデフミ
「魔女っ子クラブ」とは風俗店の名前でしょう。映画に登場する女性はそれぞれ二面性のある闇を抱えていました。
それを「魔女」とあらわしているのかもしれません。
「VIP」でも学割でも3千円ポッキリと言い切り、良心的な店であることをアピールしています。
急転直下のファイナルファンタジー
飛び散る蛍光塗料はきらきらピンクの水風船 切っても裂いても首が絞まっても笑ってごまかして
あぶってころころ楊枝でぷすぷす世界を丸かじり
そろそろおいでファンタジー 急転直下のファイナルファンタジー
出典: ミツコ/作詞:ケンモチヒデフミ 作曲:ケンモチヒデフミ
「蛍光塗料」「ピンクの水風船」「丸かじり」といった表現は性行為のメタファーだと思います。
そこにはまりこんでいくと、「急転直下のファイナルファンタジー」が待ちうけているのです。
私のとこまで落ちて来い
お前はきちっと落ちて来い 私のとこまで落ちて来い
お前はきちっと落ちて来い お城の周りをぐるぐる回ってこーい
出典: ミツコ/作詞:ケンモチヒデフミ 作曲:ケンモチヒデフミ
この叫びのようなサビの歌詞はインパクトがあります。
「私のとこまで落ちて来い」からは、女の執念や恐さを感じますよね。罠をはって待ち受けているような狡猾さがあります。
また、獣のように快楽に対して純粋になれと言っているようにも受け止められないでしょうか。お城の周り」とはラブホテルのことでしょう。
『ミツコ』の歌詞はグルグルと周りながら、確実に穴に落ちていくような恐ろしさを感じます。