涙なくして聴けない「リヴ・フォーエヴァー」

オーケストラを初導入

クイーン【リヴ・フォーエヴァー】歌詞を和訳&解説!「永遠」とは何のこと?不死の主人公が願うことは…の画像

1986年6月2日発表、クイーンの通算12作目のアルバムカインド・オブ・マジック」収録曲。

1986年9月15日にアルバムからシングル・カットされた「リヴ・フォーエヴァー」。

ギタリストのブライアン・メイによる作詞作曲です。

クイーンの曲では珍しくオーケストラが参加。

ブライアン・メイはオーケストラ編曲も行っています。

元々は映画ハイランダー 悪魔の戦士」のために創られました。

クイーンのレパートリーの中でも非常に重要な楽曲です。

ローリング・ストーン誌の「クイーンの偉大な10曲」では第5位に挙げられています。

誰が永遠に生き続けることを望むのか

歌詞からフレディ・マーキュリーの病気との関連を気にする方もいらっしゃるはずです。

果たして真相はどうなのでしょうか。

この曲の歌詞和訳して解説いたします。

「不死の者」と限りある生命

生命そのものへの問い

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There's no time for us
There's no place for us
What is this thing that builds our dreams
Yet slips away from us?

出典: リヴ・フォーエヴァー/作詞:Brian May 作曲:Brian May

オーケストラの響きが美しいイントロに酔ってしまいそうになります。

1986年の作品ですからすでにシンセサイザーでも再現可能でした。

しかしブライアン・メイはクイーンのメンバーの中でシンセサイザーの導入には消極的。

自身のギター・サウンドでオーケストレーションできるギタリストです。

先にも書きましたがオーケストラの編曲までも自身で行っています。

歌詞和訳しましょう。

「私たちには残された時間がない

私たちには落ち着く場所もない

私たちの夢を構築しながら

やがて私たちの手から滑り落ちる

これは一体何だ」

悲痛な叫びが描かれています。

残された時間がない」という歌い出しにフレディ・マーキュリーの病気を想起しがちです。

しかし、この曲「リヴ・フォーエヴァー」を書いた時点ではブライアンはフレディの病気を知りません。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のライブ・エイドの前のフレディの告白のくだりは演出・創作です。

ブライアン・メイは映画「ハイランダー 悪魔の戦士」のフィルムを観て歌詞を書きました。

映画「ハイランダー 悪魔の戦士」は首をはねられない限りは不死である者を描きます。

ファンタジー的な要素を持つ娯楽アクション映画です。

ネタバレはできませんので興味のある方は映画をご覧ください。

いずれにせよ「不死の者」に対峙する「生命の限られた存在」である私たちのことを歌います。

人生というのはその人それぞれで寿命・天寿など生きられる時間に違いがあるものです。

しかし誰にとってもいずれは死が訪れるということに違いはありません。

歌詞にある「やがて私たちの手から滑り落ちる」ものはおそらく生命そのもののことでしょう。

フレディ・マーキュリーの病気についてブライアン・メイはまだ知らない状態です

しかしフレディ・マーキュリー自身は自分の体調の変化に薄々気がついていた頃かもしれません。

ブライアンから与えられたこの歌詞を美しく切なく歌いきったフレディの心境が知りたくなります。

生命の果敢無さを書いた歌詞と自分の運命と重ねながらの絶唱

これは何たる運命の過酷さでしょうか。

リスナーは胸が詰まる想いを抱えます。

「誰が永遠に生きることを望む?」

人間と不老不死

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Who wants to live forever?
Who wants to live forever?

出典: リヴ・フォーエヴァー/作詞:Brian May 作曲:Brian May

早くも原題のタイトルが歌われます。

短いですが和訳を添えましょう。

「永遠に生き続けることを望むものは誰?

誰が永遠に生き続けることを望むのだろう?」

人間は古代より不老不死であることを求めていました。

現代でも自分が老いてゆくことに不安を覚えている人々が多いです。

美容産業が「若返る」ことに焦点を当てた製品を造り続けていること。

その背景には人間が抱える「老いへの恐怖」があります。

永遠に生き続けることを望むものは誰

それは大多数の人々を指すものかもしれません。

ブライアン・メイは音楽家になる前に天文物理学を研究していました。

死生観のスケールが他の人よりも大きいのかもしれません。

宇宙的規模での生命についての感慨深い知見を常に抱いている人です。

ブライアンのような人が書く歌詞は、他の音楽家とはセンスが違うのだろうと推察されます。

「不死の者」の悲劇

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一方で「不死の者」に自分がなってしまったら、いったいどのような視線で世界を見つめるでしょう。

これは想像や思考実験でしかありません。

想像すると「不死の者」には固有の苦悩があるかもしれないと想いませんか。

この世界にありながら「死ねない」でいることが恐怖に変わること。

ブライアン・メイはおそらくそうした想像力を働かせたのです。

他の者が息絶えてゆくのを眺めながら、自分ひとりが孤独で生き続けることは悲劇でしょう。

「リヴ・フォーエヴァー」でブライアン・メイが描いたものは、こうした極限の悲劇なのです。

永遠とは「不死の者」にとっては監獄のような時間に変わります。

反対に私たちは限りある生命だからこそ、生きていることに喜びを見出すことができるのです。

ブライアン・メイが投げかけた問いは、人類にとってとても稀少な価値あるものになります。

「リヴ・フォーエヴァー」は歌手のオーディション番組などでの課題曲の定番になりました。

それもこれも歌手が持つ表現力の深さを計るために相応しい楽曲であることの証です。

「リヴ・フォーエヴァー」の歌詞が抱える深い洞察をいかに表現できるか。

そこには歌手としての力量だけではなく、人間性そのものへの問いも含まれるのです。

悲壮な生命の有り様

暗い世界に棲む人を描く

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