戦争中の有名なプロパガンダ「贅沢は敵だ!」を皮肉った歌い出しが超爽快!
人間の欲は抑えてどうにかなるものではありませんよね。それは時代が変わっても、国がどう変化しても変わらない感性です。「清く貧しく美しく」ではなく「清く贅沢に美しく」を目指すのは人間として自然なことでありましょう。
戦時中のプロパガンダの正反対の意味のことを歌うことによって、戦時中と現在の価値観を対比させているのです。
戦時中は、贅沢をするということは国に許されるようなことではありませんでした。
しかしながら、今の世の中では一個人として豊かさを求めることに対して否定したり批判したりするようなことはありません。
妬みや嫉みといったものの対象になることはあっても、贅沢をするということは罰せられることではないのです。
価値観を縛られることなく、自由に居られる世の中だからこそそう思えるのでしょう。
4行目の「貧しさ」というのは、単純に貧困のことを指しているとは思えません。
それでは一体何を意味しているのでしょうか。
その真意は次の歌詞パートを見ることで分かっていきます。
人生における豊かさとは
本当に豊かなこと
贅沢するにはきっと
財布だけじゃ足りないね
だって麗しいのはザラにないの
洗脳(わな)にご注意
出典: https://twitter.com/rxt_bot/status/921550230931177472
一般的には贅沢というとお金をたくさん使うことを示しますが、お金以上のものが本物の贅沢には必要なのです。「金が全て」なんて世間の大多数の意見に流されてはいけない、というアラートにも聞こえるフレーズですね。
本当に豊かなものや美しいものは、お金の関与しないところにあるのかもしれません。
外側ばかりをどれだけ取り繕っても、それは本当の意味での贅沢だとはいえないと主人公は伝えたいのでしょう。
本当の美しさや豊かさは、精神や知性といったものに宿るのかもしれません。
お金があるだけでは本当の意味での贅沢はできない。
前述のパートにおける「貧しさ」というのは、内面の「貧しさ」を意味していたのではないでしょうか。
人生において本当の意味で貧しいというのは、表面的なことに気を取られて内面を磨かないこと。
主人公は、感性を磨くことで人生を豊かにできるのだといいたいのではないでしょうか。
そんなメッセージをこの4行の歌詞からは感じます。
偶然は必然
ご覧、ほらねわざと逢えたんだ
季節を使い捨て生きていこう
夜も秋も盗めないよ
貴方は私の一生もの
出典: https://twitter.com/_fvl816/status/921295949690892288
最後の歌詞部分で出てくるのですが、「探し出してくれ」たから「わざと逢えた」といっているのでしょう。偶然は偶然ではなく、どこかで因果のある必然なのだと言っているようですね。
そして、移ろいゆく季節や時間の流れはどんどん「使い捨て」てしまおう。でも「貴方」だけは使い捨てできなくて、自分にとっては「一生もの」なのだと。そう解釈できます。
消耗品である「季節」に対して、「貴方」という存在を一生モノであると対比させているのでしょう。
貴方と一緒にいる時間さえどんどんと過ぎ去ってしまう。
しかしそれでも、貴方が隣にいるという事実は変わらずに継続している。
1行目の「わざと」という言葉には、2人のそんな関係性が運命であるということを意味しているのでしょう。
主人公の貴方に対しての想いの深さが伝わってきます。
主人公にとっての「贅沢」というのは、貴方という掛け替えのない存在と一緒にいられるような日々のことを指しているのではないでしょうか。
無駄こそ美しい
「今日は一度切り」無駄がなけりゃ意味がない
絶対美しいのは計れないの
溢れ出すから
出典: https://twitter.com/lyric_sheena/status/920474594200379392
一日もムダにするな、今日死ぬつもりで生きろと言われるものの、それを忠実に守って生きるのはちょっと息苦しいですよね。
美学や芸術のカテゴリでよく言われることですが、「無駄」や余白は美しさに不可欠のものなのです。激安ショップ・ドンキホーテの所せましと貼られた広告にはたして美を感じるでしょうか?
そして美というものは一定の枠におさまりきるものや、数字として分析できるものではありません。ロジックではないのです。
一度しかない今日であっても、無駄なことをやって毎日を楽しむこと。
それがその人の美しさを引き出していくといいたいのではないでしょうか。
一度きりであるからと根をつめる必要はないのです。
息苦しく予定で毎日を埋めていくような生活では余裕がなく、美というものが生まれてこない。
心の豊かさというものも、窮屈な日常の中からは生まれてきません。
日本という国で忙しく暮らす私たちにこそ、無駄というものが必要なのかもしれませんね。
主人公は、生活の余白から立ち上ってくるような美が、私たちの人生には必要だといいたいのでしょう。
締めに愛の言葉を
ご覧、険しい日本(ここ)で逢えたんだ
探し出してくれて有り難う
空も恋も騙せないよ
私は貴方の一生もの
出典: https://twitter.com/nc___FL/status/919482796808081408
常識や多数派の意見をめった斬りにして、最後の最後に甘美なる愛にあふれたフレーズをポンと出しています。このわずかな量でさりげないのに、圧倒的なメッセージ性をもつ表現方法には脱帽でございます。チラ見せのほうが効果が絶大なことと同じですね。
林檎さんの書く歌詞は、文字数が少なく端的に言葉を選んでいることが特徴です。話言葉と同様に、ダラダラ長い文章やフレーズを垂れ流しても、言いたいことのメッセージ性はどんどん薄まっていきます。この端的なフレーズを咀嚼していくのがわたしたちリスナーのミッションであることを、林檎さんは当然のものとしているのでしょう。
しかもその前に「探し出してくれてありがとう」なるフレーズが使われているのです。自分が相手を探し出したのではなく、相手が自分を見つけてくれたことに感謝しているのです。寛大なる林檎さんの底知れない愛を感じますね。
東京事変からリスナーへのメッセージ
前述の愛を感じる一連のフレーズは、リスナーと東京事変の関係性を指していると考えることもできるのではないでしょうか。
つまり「探し出す」というのはリスナーが東京事変の音楽に出会ったことを指しています。
そのことに対して、林檎さんは礼を述べているのでしょう。
「東京事変の音楽をいつも応援してくれてありがとう」というメッセージを、この楽曲の中に隠したと考えられないでしょうか。
そしてそんな自分たちの音楽が、貴方(リスナー)にとっての一生物でありますように。
そんな想いが、この楽曲最後の1行から伝わってきます。
「キラーチューン」という楽曲は、東京事変がリスナーに対しての愛を伝えている楽曲でもあるのです。