歌詞の魅力を徹底解釈
ここからは、歌詞の内容とその魅力を、細かく徹底的に解釈していきますね。
自ら告げた別れが胸を苛む
もうだめだと言ったとき 泣いた君をただ見つめてた
僕は君にふさわしくない そんな気がしたんだ
でも逢いたい 逢いたくてしかたない
抑えきれない 気持ちがある
いま逢いたい 逢いたくてしかたない
あの涙をぬぐいたい
出典: 逢いたくてしかたない/作詞:松井五郎 作曲:都志見隆
別れを告げたのは男性側だということが、最初の部分でいきなり判明します。
相手を傷つけないように振る時の常套句「僕は君にふさわしくない」というセリフ。
でもそのすぐ後に「でも逢いたい~」とは、一体どういうことでしょう?
単に彼女と別れたくて、常套句を口にしたわけではないようです…。
しかし今「あの涙をぬぐいたい」と言われても、ちょっとピンときませんね。
今も彼女の姿を求め、視線は街をさまよう
とても好きな長い髪 街のどこかふりむいてばかり
忘れたくて別の誰かを 僕は選んだだけ
でも逢いたい 逢いたくてしかたない
こんな迷いは責めればいい
出典: 逢いたくてしかたない/作詞:松井五郎 作曲:都志見隆
男性には新しい相手がいるようです。
前の彼女を忘れたくて、新しい人と付き合うというのは、正直ちょっとどうかと(苦笑)
しかしその狡さは、十分自覚しているみたい。
「責めればいい」と糾弾している「迷い」は、まさにその狡さを指しているからです。
では一体誰に責められるの? 前の彼女? 今の相手?
いいえ。
彼自身を含めた、世界中の誰もから責められるべきだと考えているのではないでしょうか。
皆さんも思い当たることはありませんか?
自分の不甲斐なさで大きな間違いを犯した時、世の中すべてから責められるような心境を。
いまも君が消えたあのまちかどに
ずっとひとりいるようさ
出典: 逢いたくてしかたない/作詞:松井五郎 作曲:都志見隆
ここで「ずっとひとりいる」のは、彼自身です。
彼女と別れた後新しい相手を選んでいるというのに、心はずっとひとり。
あの日彼女が去っていった街角から、自分は一歩も動けていないんだという気持ちなのでしょう。
「やっぱり今カノに対してひどいよ!」
「どんだけ失礼なんだ!」
こんな風に思う方はたくさんいるかと思います…。
でも少し待ってくださいね。
この後の歌詞を読み込んでから、もう一度考えてみませんか?
互いの「幸せ」が交わらない…
さよならにふれずにいた唇は
夢に見てた幸せな日々 抱きしめて暮らしているかい
でも逢いたい 逢いたくてしかたない
君の香りが残ったまま
出典: 逢いたくてしかたない/作詞:松井五郎 作曲:都志見隆
彼女が元々願っていた幸せというものがあったのですね。
冒頭の歌詞で「僕は君にふさわしくない」というのは、ここにかかってくるのです。
彼女の望む幸せな日々を、共に過ごすことができない彼。
どんなに愛していても、どんなに力を尽くしても、どうしようもないことがあります。
それは人生を賭けた仕事であったり、結婚であったり、子どものことであったり…。
そこまで具体的なものではないけれど「人生に対する価値観」も見過ごせません。
互いに言葉や誠意を尽くして話し合い、譲歩しあっても、どうしても埋められないもの。
それが、この二人にはあったのでしょう。
「愛があれば、自分を投げうってでも相手に合わせる」という考え方にも一理あります。
でもそれは「相手に合わせる」=「自分の根本的な幸せ」にできる人ではないと、難しいこと。
そして多くの場合、どこかで破綻がきてしまうことでもあるのです。
もう一度逢えたとしても…?
つよく抱いて もう一度抱きしめて
そっと名前呼べるなら
君に逢いたくてしかたない
もう一度だけできるなら
あの涙をぬぐうから
出典: 逢いたくてしかたない/作詞:松井五郎 作曲:都志見隆
冒頭の歌詞を読み返すと、彼は泣く彼女をただ見つめていただけなのですよね。
それを思い出しながら、最後のこの部分を読んでみてください。
あの時なぜ、自分の手で彼女の涙を拭ってあげなかったのだろう。
なぜ、もう一度抱きしめて名前を呼ばなかったのだろう。
なぜ、自分の手で、彼女の本当の幸せに向かって、背中を押してあげなかったのだろう。
今の自分がその場にいたら、涙をぬぐい、抱きしめてから送り出せるのに…。
別れた時の彼は、自分自身が本当に信じられない、余裕のない状態だったのでしょう。
冒頭の「その涙をぬぐいたい」ではピンとこなかったものが、今ならはっきりわかります。
もう一度逢えたとしても、あの日の涙が甦ることはなく、拭うことはできません。
そう、彼自身もう二度と逢えないとわかっているからこそ叫ぶのです。
「でも逢いたい 逢いたくてしかたない」と。