BUMP OF CHICKEN通算5枚目のアルバム「orbital period」収録
「ひとりごと」は2007年に発売された通算5枚目のアルバム「orbital period」に収録されています。
「orbital period」とは、公転周期、軌道周期を意味する言葉です。
このアルバムには、CDとは別に小さな絵本のようなブックレットがセットになっています。
このアルバムを初めて手に取る時、その重厚感に驚きます。
CDとブックレット共にBUMP OF CHICKENの世界観を贅沢に味わうことができます。
CDを聴く際は是非ブックレットと併せて「orbital period」の世界に酔いしれてみてください。
「ひとりごと」は本当の優しさとは何か自問自答する主人公の内面が描かれています。
藤原基央がその独特の視点で迫る「優しさ」を紐解いていきましょう。
それでは「ひとりごと」の歌詞をご紹介していきます。
優しさとは何かという普遍的な問い
渡すことのできない「優しさ」
ねぇ 優しさってなんだと思う 僕少し解ってきたよ
きっとさ 君に渡そうとしたら粉々になるよ
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
優しさってなんだと思う?というストレートな問いかけから始まる「ひとりごと」。
優しさって何?と聞かれて、即座に理路整然と説明できる人は少ないのではないでしょうか?
「優しさ」とはとても身近な言葉ですが、でもいざ言葉で説明するには難しいという不思議さがあります。
そんな難しいテーマを扱っていながら、「優しさ」とはと問いかける声はとても柔らかい口調です。
あくまでラフに、カジュアルに、普遍的テーマに迫ります。
その「優しさ」が「僕には少し解ってきた」ようです。
「僕」が理解し始めた「優しさ」とは「君に渡そうとしたら粉々になる」ものです。
誰かに渡そうとした瞬間粉々になってしまう儚さ。
「僕」は「優しさ」に儚さを見出したのです。
渡そうとした瞬間粉々になってしまったら、「優しさ」が「君」に届くことはありません。
「僕」理解し始めた「優しさ」には渡そうとしても相手に届くことはない切なさがありました。
結局は自分のためになってしまう悔しさ
ねぇ 君のために生きたって 僕のためになっちゃうんだ
本当さ 僕が笑いたくて 君を笑わせてるだけなんだ ごめんね
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
優しさは相手に届くことのないまま粉々になってしまうのだと理解した「僕」。
優しさだけでなく「君のために生きたって ぼくのためになっちゃう」のだと悟ります。
誰かのためにしたことだって、結局突き詰めれば自分のための行動。
本当に誰かのために何かをすることはできないのだという切なさや悔しさが滲みます。
たとえば「君」が悲しい顔をしているとき、「僕」は君を笑わせようとする。
それは、「君」に笑ってほしかったからじゃない。
笑った「君」を見て「僕」が笑いたかっただけなんだ。
「僕」のなかにやるせなさが広がってゆきます。
自分の気持ちに関係なく、純粋に「君」を笑わせることはできないのか。
「君」のためと思っていることは全て自己満足ではないのか。
「僕」は自問自答を続けます。
優しくなりたくてもなれない葛藤
本当に人のためを思うこととは
人に良く思われたいだけ 僕は僕を押し付けるだけ
優しくなんかない そうなりたい なりかたが解らない
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
誰かに優しくするのも、誰かを笑わせようとするのも結局「人に良く思われたいだけ」。
“人のため”という大義名分のもと、実際はひとりよがりな自分を押し付けている。
「僕」はそんな自分を自嘲気味に分析します。
「僕」は本当は「やさしくなんかない」。
自己満足の優しさを押し付けているだけなんだ。
自己満足なんかじゃなく、「僕」は本当に優しくなりたい。
でも「なりかたが解らない」のです。
本当に優しくなるには本当の意味の「優しさ」を知る必要があります。
「僕」の本当の「優しさ」への探求が始まります。
「君」に渡したいもの
ねぇ 心の中に無いよ 僕のためのものしかないよ
そうじゃないものを 渡したいけど 渡したい僕がいる
出典: ひとりごと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央