駅に着いた二人

券売機で一番端の
一番高い切符が行く町を 僕はよく知らない

その中でも一番安い
入場券を すぐに使うのに 大事にしまった

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

券売機の一番高い切符。これはきっと「君」が買ったものなのでしょう。

一番高い切符ということは、一番遠いところへ行くための切符ということです。そこが「君」の目的地なのでしょう。

一方で、主人公が買ったのは見送りのための入場券だけ

とても遠いところへ旅立つ「君」を駅へと送り届け、その旅立ちを見送るために主人公は自転車を進めていたのでした。

おととい買った 大きな鞄
改札に引っ掛けて通れずに 君は僕を見た

目は合わせないで頷いて
頑なに引っ掛かる 鞄の紐を 僕の手が外した

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

大きな鞄には旅立ちのための荷物が詰まっているのでしょう。

その大きさのために、改札に引っかかってしまいます。

それはまるで、遠く離れ離れになって別れたくないという二人の心理が表れているようなトラブルです。

それでも主人公は引っかかった鞄の紐を外します。「君」と目を合わせないのは、今「君」を見てしまったら旅立ちを止めたい気持ちを我慢できなくなるからでしょうか。

BUMP OF CHICKENのシングル「車輪の唄」藤原基央作詞の歌詞に迫る!(動画あり)の画像

長い別れへの一歩

響くベルが最後を告げる 君だけのドアが開く
何万歩より距離のある一歩 踏み出して君は言う

「約束だよ 必ず いつの日かまた会おう」
応えられず 俯いたまま 僕は手を振ったよ

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

歌詞のこの部分には、ソングライターとしての藤原基央のセンス・個性が特に強く発揮されていますね。

「君だけのドア」「何万歩より距離のある一歩」といった表現が、二人が遠く離れてしまうという悲しい事実をよりリアルに実感させますね。

開く電車のドアは「君」だけのもので、主人公はそのドアをくぐることはありません。

そして、その電車に乗り込む「君」の一歩は、主人公が何万歩追いかけても届かない場所へと行ってしまう一歩でもあります。

「いつの日かまた会おう」という言葉は「君」が発したものなのでしょう。しかしそれに主人公は応えることができませんでした。

俯いていたのは、涙をこらえていたためでしょうか。

君は遠くなっていく

線路沿いの下り坂を
風よりも早く飛ばしていく 君に追いつけと
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
精一杯電車と並ぶけれど
ゆっくり離されてく

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

駅は坂道の頂上にあるのでしょう。上り坂を必死に漕いできた行きと違い、帰り道では下り坂を勢いよく駆けていきます。

しかしその勢いをもってしても、電車で離れていく「君」に追いつくことはできません。

ゆっくり離れていく二人の距離が、避けようのない別れを描き出しています。

BUMP OF CHICKENのシングル「車輪の唄」藤原基央作詞の歌詞に迫る!(動画あり)の画像

いつの日かまた

泣いてただろう あの時 ドアの向こう側で
顔見なくてもわかってたよ 声が震えてたから

約束だよ 必ず いつの日かまた会おう
離れていく 君に見えるように 大きく手を振ったよ

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

「間違いじゃない あの時 君は…」という印象的な含みのある歌詞に続くのは、このサビだったのでしょう。

涙をこらえて「君」の顔を見ることができずに俯いた主人公と同じように、「君」も別れを前に泣いていたのでした。

駅での別れ際は顔を上げることもできなかった主人公ですが、最後は離れていく電車を前に、きっとこっちを見ている「君」に向かって大きく手を振ることができました。

帰り道は一人

町は賑わいだしたけれど
世界中に一人だけみたいだなぁ と小さくこぼした
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
残された僕を運んでいく
微かな温もり

出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

誰もいない町を二人で幸せに進んだ明け方と違い、一日の始まった賑やかな町の中で主人公は逆に一人になってしまいました。

主人公の背中に残る微かな温もりは、今はもう旅立ってしまった「君」の記憶でしょう。

そんな温かさを感じて一人自転車に乗る主人公の姿を描いて物語は終わります。

まとめ