凍える朝の気分はどうですか
わからないから 答えは夜明け前に

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

不完全な人間が迎えた朝。既に太陽が顔を出していますが、空気は冷たいようです。

冬なのか、それとも何か理由があって「凍える朝」を迎えているのか。

おそらく後者なのだと感じました。

何もかもが新しくなるはずの朝、日差しも出ているのになぜか冷たい空気を感じてしまう。

その理由は自分の心の中にあるのでしょう。

しかし今抱いている感情が寂しさ、情けなさ、辛さ、あるいは全く違うものなのか判断できません。

空が明るくなる前(夜明け前)にヒントがあるようです。

普段感じることのない夜明け前の息遣い

飛べない鳥の合唱に吠えない犬の遠吠えに
怯えた夜の迷走が騒いだり泣いたりしてる

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

鳥は人間とは違い、空を飛ぶことができる生き物のはずです。

しかしなぜか飛べず、その場で嘆きの合唱をしています。

普段は吠えない犬が、なにか叫ぶように遠吠えしています。

飛べる鳥が飛べない。吠えない犬が吠える。

普段目にする光景がなぜか真逆に進んでいるような印象です。

「夜」は、いつもと違う雰囲気を感じてどうしていいか分からず落ち着きません。

何が起きているのか教えてくれと騒ぎ、救いの手の無さに涙します。

夜明け前に街を歩いたことはありますか?

人の気配がほとんどなく、鳥たちは電線に並んでお喋りに勤しんでいます。

近所では「あまり吠えない」と言われている静かな犬も、夜明け前には遠吠えをすることがあります。

夜が朝に変わる気配に、生きとし生けるものは特別な何かを感じるのではないでしょうか。

だからこそ、夜明け前には普段見せない行動を見せるのです。

穴の空いた空白に音が消えた一拍に
眠る前の数分前に僕はドアを開けて走り出したよ

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

夜と朝の間にあるのが「夜明け」です。

夜と夜明けの境界線は曖昧で、空が明るくなってきたかどうかの判断は、空を見る人に委ねられます。

夜明けの空は、夜と朝が混ざりあった状態と言えるでしょう。

しかし境界線が分かりにくいだけで、夜が終わる瞬間が必ずあります。

ここで歌われる「一拍」が、その瞬間です。

夜明け前の鳥の声や犬の遠吠えが、時間の穴の中に消え、夜は役目を終えて眠りにつきます。

夜が終わって夜明けが訪れるよりも少し前、つまり「夜明け前」の数分

僕はこの数分間に「答え」を探すため、走り出しました。

僕を塗りつぶす君の光

くだらない話 色の無い夢
届かない声 人は泣いたよ

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

何となく夜更かしをして誰かと話をしていても、得るもののない会話ばかりが続きます。

夜の暗い空の下にいると、何もかもがモノクロに見えることがあります。

そんな中で見る夢だって、モノクロのはずです。

夜明け前の鳥の声を知る人はあまりいません。つまり、届かないと言えるでしょう。

いつもと違う光景に泣いたのは「夜」だったはずですが、ここでは「人」と表現しています。

誰かを「夜」に例えているようです。

何も無いのは 君が居ないのは
僕の人間 そんなのヤダよ

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

夜に絶対にないものは「太陽」です。ここでは「君」を「太陽」に例えているのでしょう。

夜には君がいません。日差しがありません。

曲の冒頭で「人間は不完全なもの」と歌っていました。

「僕の人間」という分かりにくい表現は、自分の不完全さを表しているのではないでしょうか。

つまり、太陽である君がいなければ僕は不完全で、そんな状況は嫌だと言っているのです。

気づかないまま わからないまま
嫌われるのは 好きじゃないんだよ

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

夜が明けた印は、空の明るさです。

しかし、夜は一瞬にして明けるわけではなく、気づいたら空が明るくなり、夜が明けています。

何も言わないまま、夜を塗りつぶしていく太陽。

おそらく「夜」は「僕」なのでしょう。

太陽はいつの間にか現れて、夜を否定して朝にしてしまいます。

何がきっかけで君が僕を嫌ったのか、分からないということです。

僕が知りたかったのは、君が僕を否定した理由ではないでしょうか。

一人二役の その主人公が
終わりを伝えず そこから消える

出典: 夜明け前に/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

夜明けは朝であり、夜でもあります。「一人二役」は夜明けを示しているのでしょう。

「ここまでが夜で、ここからは朝ですよ」

夜明けはそんなことを教えてくれません。

朝が夜を否定した瞬間を教えてくれず、夜明けは去っていきます。

君を探して夢の中を走る

夜の街で夜明けの瞬間を探していた僕。

いつの間にか夢の中を駆け出していました。